現場力を鍛えるBI活用に立ちはだかる壁現場力を鍛えるこれからのBI:(3/3 ページ)

» 2006年04月07日 07時00分 公開
[村上 敬,アイティセレクト編集部,ITmedia]
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日本版SOX法がBIへの関心を高める

また、話題になっている日本版SOX法への対応もいろいろな形で影響を及ぼしている。経営の可視化については、情報活用に対して鈍い企業でも無視できない動きだ。日本オラクル、システム事業推進本部の桑内崇志氏は次のように語る。

「SOX法を控えて、やはり経営の可視化をしたいというニーズは高まっているように感じます。たとえば3月30日まで達成しそうになかった販売実績が、なぜか3月31日には期末に間に合うように達成されていた。これはおかしいですよね。なんらかの不正が行われたという可能性が非常に高い。こういった異常を可視化できるというのが、BIの内部統制への活用の一つになります」

透明性を図るには、データの正確さをより高める必要があり、BIを含めた情報基盤を統合していく動きも見られる。しかし大手企業の中でも現在活発に動いている企業はそう多くない。矢野経済研究所においてツール市場の市場分析レポート「BI市場の実態と将来展望2006」を手がけた矢野経済研究所、上級研究員の赤城知子氏は次のように語る。

 「もしもBIの導入がコンプライアンス対応にかかるコストを圧縮する事につながるとすれば、間違いなく需要は伸びると考えます。内部統制などへの着手で当然ながらERPやCRM、SCMと連携することで、ビジネスプロセスとデータの統合を目指す案件に、BIが絡んでくるのは不思議ではないと思う。しかし、そういったビックディールは当然ながらまだまだ数は少ないのではないか」

 内部統制や日本版SOX法の流れが、BIに対する無関心を吹き飛ばすきっかけにはなることは間違いないだろう。ガートナーの堀内氏の指摘を借りれば、だからといって、中堅以下の企業が情報活用に不熱心だというわけでもない。システムとしてのBIに対しては無関心であっても、日々の業務では、顧客情報や財務情報をもとに戦略を練るのは当たり前、ということかもしれない。もはや、企業の大小にかかわらず、BIは必要不可欠なものなのだ。

バリバリの使い手になる必要はあるのか

 情報活用が進み、BIを全社的に取り組む時、ユーザーのレベルが問題になる。日常的にエクセルやアクセスで情報分析を行っている人と、普段は整理したデータをリポートとして読み、仕事に生かしているだけ、という人とでは、全社一斉にBIツールを導入して「さぁ、活用しよう」といわれた時の反応が全く違ってくる。

 IT部門ではない、マネジャークラスの人がBIを仕事に生かすにはどれくらいのレベルが必要なのか。また、どこまで教育していく必要があるのだろうか。マネジャーともなれば、いわゆる企業内アナリスト的なレベルに引き上げる必要があるのだろうか。ガートナーの堀内氏は次のように答える。

 「どの程度のスキルがいわゆる『アナリスト』的スキルというかにもよります。ある程度固定的な切り口で、OLAP分析をするレベル程度には能力を引き上げる必要はありますが、データマイニングや統計解析レベルの非常に高いレベルが必要かというとであれば必ずしも誰もが必要とはいえないでしょう」

参照 ユーザーのタイプとBI機能のマッチング

 会社がBI活用に取り組み、トップダウンでツールの活用をうながすようなことがあると、どうしても、とにかくツールを使いこなすことばかり考えがちになってしまうのだが、大切なのは、会社として、組織の一員として、自分がデータをどう仕事に生かしていくのかということをはっきりさせる必要があるということだ。

 毎日、全く違う切り口でデータを分析しなくてはならない人は、専門家でなければ、おそらくそう多くはいないはずだ。切り口を考え、ある期間は固定的にデータを入れ替えながら分析を繰り返すのならば、そう難しい話ではないはずだ。

 しかし、「BIは難しい」という人にはツールに対して、使いこなせないというイメージを持つケースが多い。SAPジャパン、ソリューションマーケティング本部の谷口裕志氏はBIツールに対する不信感に対して次のように話す。

 「おそらくツールを入れたはいいものの、使った効果の実感がないのでしょうね。BIは使わなければ使わないで、日々の業務が止まるということはない。だから使わない人はずっと使わないし、効果も感じられない。ただ、使っていけばやはり効果を感じられると思います。利用度を上げるためには、ユーザーの業務に即した形で、もしくは目的に即した形で入れないとダメです。会社の体制的なことも含めてです。どんないいツールでも、それなしに導入しても効果は上げられないですよ」

 ツールが会社に入ると、本来の目的を見失ってしまうケースは多い。しかし、自分がツールの使い手としてどこまで優秀になれるかどうかを考えるより、データ活用をいかにして深めていくかを考えることが優先される。バリバリの使い手になれば、注目はされるかもしれないが、最終的には業績をどう上げていくかがゴールであることには変わりない。

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