「最初のSOAは失敗したが今後は必ず成功する」とウェブメソッド

ウェブメソッドは4月7日、SOA(サービス指向アーキテクチャ)によるシステム構築において基盤となる製品「Fabric6.5」について説明する記者向けのブリーフィングを行った。

» 2006年04月07日 17時02分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 ウェブメソッドは4月7日、SOA(サービス指向アーキテクチャ)によるシステム構築において基盤となる製品「Fabric6.5」(関連記事)について紹介する記者向けのブリーフィングを開催した。同製品には、SOAによるシステム構築におけるこれまでの課題を解決する多くの機能が盛り込まれており、構築手法に現実感を与えるプラットフォームとなっている。

 ブリーフィングでは冒頭、「米国において“最初のSOAは失敗した”という議論が起きつつある」ことが紹介された。

 SOAは、既存システムから、あるいは新規のシステムとして、「住宅ローンサービス」「物件確認処理」「預金残高確認処理」といったプログラムを切り出してWebサービス化し、細かな単位になった各サービスを組み合わせることで、新たなアプリケーションを構築する手法だ。

 一般に、システムを構築する側も含めて、Webサービスの物理的な存在場所を知らなくてもいいことがメリットとして挙げられる。結果として、テクノロジー周りの作業負担が少なくなることで、ビジネスの状況に即応できる「俊敏な」システムを構築できるというわけだ。

SOAのつまづき

 しかし、実際にその手法でシステムを構築しようとすると、Webサービスの「裏側」が問題になってくる。「どこにあるか知らなくていい」ということは、「それが何かよく分からない」こととイコールになってしまうことがある。結果として、あるWebサービスに変更を加えたりした場合の影響範囲を把握できなくなるといったデメリットにつながってしまう。同様に、企業としてそのWebサービスをどうガバナンスすればいいかも分からなくなる。

 さらに、SOAで構築したシステムが大規模になればなるほど、SLA(サービスレベルアグリーメント)を守れる保証ができなくなってくる可能性がある。これまでサービスレベルを監視する方法があまり確立していなかったからだ。

 こうした懸念点があるからといって、SOAを小規模な領域で利用するのではコストメリットを出すことが難しい。このような経緯からも、「最初のSOA」はさまざまな矛盾をはらむことになっていった。

 ウェブメソッドはこうした点をSOAの課題としてとらえ、製品開発に取り組んでいるという。1996年時点から業界のXML標準化の取り組みに参加し、1997年にはW3Cに対してWIDL(現在のWSDLの原型)を提案、その後、2003年にはWS-Iの理事会メンバーにも選出されるなど、SOAの核となるWebサービスの仕様標準化には以前から積極的だ。

 同社はSOAを実現するためのコアテクノロジーとして7つの階層を想定している。

 最下層から、既存あるいは新たに構築する「サービスそのもの」、サービス同士を結合させる「メッセージング」、Webサービスを登録してカタログ化する「レジストリ」(UDDI)、サービスの統制と管理を行う「サービスマネジメント」、サービスを組み立ててプロセスを形成する「オーケストレーション」、ビジネスプロセスおよびサービスのパフォーマンス分析を行う「アナリシス」、そして最上位にユーザーインタフェースにあたる「ポータル」がくる。

 Fabric6.5の特徴となる機能の1つが「ServiceNet」と呼ばれるモジュール。上記の階層では、下から2番目のレジストリ、および3番目のサービスの統制と管理を担当する。具体的な機能としては、Webサービスの動的な登録、セキュリティの確保、パフォーマンス監視、実行時におけるアラート通知などが行えるようになっている。

 これにより、不ぞろいで多数のWebサービスで構成されたシステム上に統一的なバスをかぶせる格好になる。結果として、システムが可視化され、管理性が向上することにより、「最初のSOA」がぶち当たったような、システムの裏側の不透明さや、SLAの確保の難しさといった問題を解決してくれるという。

 なお、最新バージョン6.5で新たに追加された機能としては、ロードバランス機能や、すべての機能を管理できるよう統合化されたポータルなどが挙げられている。

 ブリーフィングで同社はSOAの今後について、「これだけ多くのベンダーがほぼ同じ仕様を用いて、1つのシステム構築手法を採用したことは実はこれまでほとんどなかった。その結果、Webサービスを筆頭に、システム構築において最も重要になる相互接続性が全体的に高まっている。この状況を見ても、SOAという構築手法は今後必ず成功する」というメッセージを伝えた。

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