ESB活用でレガシーマイグレーションの主流はやはりSOAになる?

企業のレガシーマイグレーションは数年前から始まっている。現在、移行手段として最も注目されているのがSOAである。そしてSOAにおいてトランザクションやセキュリティに関する管理を担うのがESBである。ESBを提供するIONAに話を聞く。

» 2006年04月24日 21時11分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 団塊の世代が一斉に定年退職を迎えることで重要な技術が途絶えてしまうというのが2007年問題だが、実際には企業のレガシーマイグレーションは数年前から始まっている。現在、移行手段として最も注目されているのがSOA(サービス指向アーキテクチャ)である。

 特に、既存システムの機能を再利用し、Webサービスとして新たなアプリケーションを構築できる点がSOAの評価を高めており、日本よりも欧米での導入が進んでいる状況といえる。だが、実際にSOAの仕組みを用いて、Webサービスを組み合わせて新たなアプリケーションを構築する場合、トランザクションやセキュリティ、性能監視など、技術面でさまざまなハードルが存在するのも事実だ。

 そうしたニーズに対応するための製品としてESB(エンタープライズサービスバス)が注目されている。IBMやBEAシステムズなどが製品を提供している中で、アイルランドに本拠を置くIONA TechnologiesはArtixシリーズを提供しており、Deutsche PostやCredit Suisseなど、世界のさまざまな企業に導入されている。

 4月3日に最新となる「Artix 4.0」をリリースした同社の製品マネジャー、シアラン・ダインズ氏に話を聞いた。同製品の新機能などを通して、SOAでシステム構築をする際の注意点などを考えてみる。

欧州でレガシーマイグレーションの手段としてSOAの実用化がかなり進んでいることについて「この18カ月でユーザーの意識やテクノロジーまでSOAの周辺状況が進んだ」と話すダインズ氏

 Artixの特徴はサーバ集中方式をではなく、分散環境型のアプローチでESBの機能を提供している点にある。WebSphereや.NET、CORBA、Tibcoなど、さまざまな分散環境にそれぞれArtixのエンドポイントを配置することにより、SOAPなどの標準プロトコルを介してネットワーク上でそれらのシステムの機能をWebサービスとして統合することができる。サーバ集中方式ではないため、大きな初期投資をすることなく、段階的にSOA化できる点が特徴となっている。

 リリースされた4.0では、複数のサービスを組み合わせて1つのサービスを構築する「サービス・オーケストレーション」機能が盛り込まれた。ここでは、さまざまなWebサービス間を結びつけるための技術としてBPEL(Business Process Execution Language for Web Services)が採用されており、メインフレームやデータベース、メッセージングシステムなど、さまざまな機能を統合することが可能という。

 また、メッセージングでは、新たなオプションとして「WS-ReliableMessaging」が追加された。これにより、SOAPベースのプロプライエタリなメッセージングシステムで掛かるコストを削減できるという。さらに、データベースへのアクセス機能をWebサービス化した「データサービス」も提供されている。データサービスとは、最も価値のあるデータ資産にユーザーがよりアクセスしやすい環境を構築することを目指したもの。さらに、Webサービスの監視機能も強化しているという。

 同社は3月にマイクロソフトのWindows Communication FoundationでのArtixの互換性接続デモを行ったり、BEAのValidation Programを完了させたりなど、標準仕様への準拠にも力を入れており、今後も着実に製品を充実させていくとしている。

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