ITmedia コールセンターはナビゲーションの第一歩ということですが、さらなる展開があるのでしょうか。
森山 実はコールセンターの真の役割は、市民の声を全庁あげて聞くことです。どのような役所にも住民の声を聞くための部署がありますが、実際のところは、期待通りに機能していないか、あるいは不十分なのではないか、と考えています。各部署にコールセンターからの問い合わせ責任者を置くことで、そのような公聴機能を全庁として持つことになります。そこから市民のニーズを吸い上げる方法を確立して、市役所によるマーケティングを行いたいのです。
ITmedia 窓口に直接来られる方が多いということは、窓口での対応も改革しなければいけませんね。
森山 窓口での質疑応答についても、問い合わせデータベースに登録したいのです。そのためにはコールセンターのような機能を持った窓口を設けなくてはいけません。そこにホテルでさまざまな案内をするコンシェルジュのような役割を果たす人を配置したい、と思っています。データベースを基にした対応マニュアルが必要になりますが、最初から「市役所コンシェルジュのための対応マニュアルを作ろう」と提案しても「基本は賛成だが実際には協力できない」と言われるだけです。コールセンターから始めれば、それを発展させて実現できるはずです。
ITmedia “市役所コンシェルジュ”は、市役所すべてのことに答えなければならないとすると、それは大変なことです。実際にできるのですか。
森山 それには電子入札システムを導入したときと同じ作業をする必要があります。例えば、「複数の部署をまたぐ申請が幾つあるのか?」と1個1個チェックしていくことでシステム化できるでしょう。同時に、統合窓口を設けてコンシェルジュに仕事をしてもらいながら修正していく方法もあります。それができれば、「べんり市役所推進計画」の4つ目にあった「市民ニーズに応じた市役所サービスの実現」が可能になります。
ITmedia 携帯電話で予約した住民票を「役所屋」という出張所で受け取れるサービスを始めたそうですね。
森山 役所屋は3店舗あります。年末年始の6日間は休みですが、残りの359日営業しています。携帯電話で住民票を予約して、役所屋で予約番号と本人確認の書類を見せれば、すぐに住民票を受け取れます。
ITmedia 携帯電話による住民票予約を始められた理由は何でしょうか。
森山 役所に関する統計データを見てみると住民票の写しに関する業務が最も多い。だから、政府も住民票交付の電子化を推進しています。ですが、一人が一生に住民票の交付申請をするのは平均10回程度です。インターネットで住民票の交付申請をするためには、住基カードと公的個人認証関連で1000円掛かり、パソコンに接続するICカードリーダーが2000円ぐらいで約3000円必要になります。10回程度のために3000円を投資する人は少ないのではないでしょうか。「住民票の交付申請」としてとらえてしまうと、どうしても本人確認のための公的個人認証を使うといった、重厚長大な仕組みが必要となってしまいます。発想を転換して、お手軽な仕組みとするにはどうしたらよいのかを考えて、携帯電話による住民票予約を始めたのです。「役所はIT化するが市民にIT化を押しつけない」というのがわたしたちの考え方だからです。
ITmedia 携帯電話による住民票予約には、どれくらいのコストが掛かっていますか。
森山 携帯電話による住民票予約の利用件数は、半年間で127件でした。プログラム費用が170万円で年間メンテナンス費用が70万円です。まだまだ、割高感がありますが、インターネットによる住民票交付申請よりは相当安いはずです。今後もサービスを続けて、1年を通してどれくらい使われるかをチェックして、費用対効果を考えていきます。
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