MSNの轍は踏まない、Windows Liveはオンライン事業を救えるか？（3/3 ページ）

[Matt Rosoff，Directions on Microsoft]

　またLiveの各種サービスが、ソフトウェア製品、特にWindows Vistaやその後継製品（コード名：Vienna）と統合される可能性もある。例えば、Windows Live SearchをVista で導入されるWindowsの検索インタフェースに統合したり、いずれWindows Live Mail DesktopでOutlook Express（VistaではWindows Mail）を置き換えることが考えられる。

　しかし、オンラインサービスとソフトウェア製品の統合は、ある種のリスクを伴う。具体的には、MicrosoftはデスクトップOS市場における独占的な立場を利用して、新興市場を席巻しようとしていると、オンライン市場における競合企業が規制機関に訴える可能性がある。実際2006年春に、Googleは欧州および米国の規制当局に、IE 7の既定のWeb検索機能にMSNサーチが使われていることは不当であるとの見解を伝えている。MicrosoftがSearchやその他のWindows Liveサービスを直接Windowsデスクトップ製品に統合しようとした場合は、同様の訴えが起こされるのはほぼ間違いないだろう。

　このような規制上のリスクが存在し、Windowsとの統合をもってしてもMSNユーザーベースを維持できなかった過去があるなかで、長いことおざなりにしてきたオンラインサービスの強化を図ることになる。また、サービス間の統合を進めることで、Windows Liveは競合が太刀打ちできないような競争力を確立できる可能性もある。

MSNの轍を踏む可能性は？

　コンシューマー向けオンラインサービスのトラフィック増加に向けたMicrosoftの最近の取り組みは、初期のMSN戦略を彷彿させる。1990年代に、同社はさまざまなMSNサービスを開発し、これらのサービスをポータルに集約して提供していた。また、編集者のMichael Kinsley氏を迎え入れてSlateというオンラインマガジンを創刊したり、NBCと提携してケーブルTVネットワークや関連Webサイト（MSNBC）を創設したり、MSNサイト上でさまざまな双方向プログラムをリリースするなど、エディトリアルコンテンツの提供にかなり力を入れていた。この狙いは、魅力あるコンテンツを利用してユーザーを引き付けて、サブスクリプションの増収や広告オーディエンスの拡大につなげることだった。

　MSNの財務実績は、この戦略が最終的には報われなかったことを示している。しかし、今回はいくつかの点で状況が明らかに違うとMicrosoftは考えている。まずブロードバンドの普及で、高帯域幅を必要とするサービスやコンテンツが受け入れられる土壌が整っている。また、AJAXなどのテクノロジーの普及でインタラクティブなオンラインアプリケーションの開発が容易になっていることも挙げられる。そのほか、（Googleをはじめとするオンライン企業のおかげで）ユーザーがオンラインで多様な操作をこなす技量を習得していること、コンテンツの多くはエンドユーザーが提供するため制作費がほとんどかからないこと、MSNはインターネットアクセスやサブスクリプションサービスではなくオンライン広告に注力する方針を固めていることも有利な材料だ。

　それでも、MSNの新しい首脳陣は、オンラインサービス市場で現在の覇者に対抗しながらも成長できることを実証して、長年“並”以下の業績が続く状況を打破しなければならない。