MSNの轍は踏まない、Windows Liveはオンライン事業を救えるか?(2/3 ページ)

» 2006年05月26日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

失った広告オーディエンスの呼び戻し

 どれほど技術的に向上したとしても、オーディエンスがいなければ広告プラットフォームは無用の長物である。長年Microsoftは、MSNサービスへのユーザーの誘導には、ソフトウェア製品を利用するという手法一本やりで通してきた。例えば、Internet Explorer(IE)の標準のホームページには長年MSN.comが使われている。しかし、この手法の効力は瞬く間に薄れ、ユーザーのMSN利用時間は縮小し、GoogleやYahoo!を始めとするより新しいオンラインサービスに流れていってしまった。Microsoftは、失われたユーザーを奪回し、Microsoftサイトの利用を推進するため、さまざまな手段を講じている。

既存のサービスのアップデート
 Microsoftはオーディエンスの拡大(少なくとも維持)を図り、長年放置していたものも含めて、コンシューマー向けオンラインサービスのほぼすべてでアップデートを実施している。Windows Liveの各サービスに共通する強化点は、次のとおりだ。

  • ユーザーインタフェースの改良 十分な余白の確保やグラフィックボタンに替えたテキストのリンクの採用など、比較的すっきりした印象のインタフェースになった。また、ドラッグアンドドロップの実現など、操作面も強化されている。このインタフェース機能の多くは、GoogleのGmailやGoogleマップなどのサービスでの採用をきっかけに普及が進んでいるAJAX(Asynchronous JavaScript and XML)をベースとしている。
  • カスタマイズ機能の強化 例えば、Microsoftが用意しているコンテンツソースを利用するだけでなく、RSSフィードを使ってほかのWebサイトを追加して、Live.comのホームページをカスタマイズできる(RSSはReal Simple Syndicationの略で、ある特定のWebページが更新された場合に、これを自動的に登録ユーザーに通知する機能)。
  • マルチプラットフォームに対応 Microsoftは、モバイルデバイスも含めてさまざまなプラットフォームからのアクセスを可能にするとしている(現時点では、Windows Liveサービスのほとんどのβ版では、この機能は実現されていない)。
  • APIの開発 サードパーティが、Windows Liveサービスをプラットフォームとして、独自のサービスを開発できるようにする。

新サービスの提供
 Microsoftは既存のMSNサービスを改良するだけでなく、新しいサービスの導入も進めている。特に、Googleの各サービスに匹敵するサービスの開発に取り組んでいるようだ。また、他社が既に提供しているサービスのうち、比較的参入が容易ながらも高いトラフィック量を期待できるサービスにも触手を伸ばしており、例えばWindows Live Expo(Craigslistと同様のオンライン案内広告サービス)や、Windows Live Shopping(オンラインショップ商品の価格比較サイト)を開発している。

 また、全社的な取り組みである信頼できるコンピューティングの一環として、PCのセキュリティを促進するWindows Liveサービス(Family Safety Settings、OneCare、Safety Center)もリリースしている。そのほかのWindows Liveサービスとは異なり、この種のサービスの一部は広告によりサポートされていない。将来的には、ほかの全社規模の取り組みにもWindows Liveを活用できるだろう。例えば、音声や画像などのデジタルメディア用のオンラインストレージサービスは、同社のホームエンターテイメント戦略の一環として利用できる可能性がある。

サービスの統合
 MicrosoftはWindows Liveの各サービスを統合することで、人気のあるサービス(各市場をリードする立場にあるMailやMessengerなど)のトラフィックの流れを、比較的利用率の低いほかのサービス(Searchなど)につなげようとしている。また全般的には、サービスを統合することで利便性を向上できる。例えば、オンラインメールサービスとインスタントメッセージサービスで、それぞれ同じ連絡先情報を個別に登録する必要がなくなる。

 このようなサービス間の統合は、既にWindows Liveのβで実現されつつある。具体的には、Live.comのホームページからLive Mailの受信ボックスを参照したり、Messengerのメンバーリストを基にExpo上の広告やSpacesのブログへのアクセスを信頼できるユーザーに制限できるようになっている。また、どのサービスにもSearchの検索ウィンドウが組み込まれてきている。Windows Liveの進化に合わせて、その他のサービスの統合も実現されてくるだろう。例えば、連絡先情報を公開し、メンバーに自動的に更新情報を“プッシュ”するWindows Live Contactsは、Mailのアドレス帳やMessengerのメンバーリストと統合される予定だ。

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