今なぜ、マネジメントの時代なのかマネジメントイニシアチブ時代に向けて――7つの提言(2/2 ページ)

» 2006年06月05日 07時00分 公開
[増田克善+アイティセレクト編集部,ITmedia]
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マネジメントの視点が欠かせない

 では、「マネジメント」とはいったい何か。英語の「Management」という言葉は、辞書では「経営、管理、操縦、取り扱い」などと訳されているが、日本では「マネジメント」と片仮名で表記されることが多いように適訳が難しい言葉でもある。通常は「管理」と訳されるが、管理の英訳は「コントロール」である。日本では、マネジメントとコントロールという言葉の意味が曖昧なまま使われているが、欧米では当然ながら両者ははっきりと区別されて使われる。

 マネジメント(会社を経営すること)とは、会社を取り巻く利害関係者の利益・価値の最大化をめざして、経営ビジョンや方針に基づいて事業戦略・計画を策定し、具体的な活動のコントロール・オペレーションまで行うことをいう。一方、コントロールは、策定された事業戦略・計画に沿って具体的な業務活動のコントロール・オペレーションのみを行うことである。後者は事業戦略や計画に対して業務活動がその通り行われているかを管理(コントロール)することで、「事を正しくする」(Do Thing Right)と捉えられ、前者は「正しい事をする」(Do Right Thing)と解釈されている。

 わかりやすく言えば、マネジメントは経営サイドに立って創造性を働かせ、よりよい形で運営して企業を成長させる活動であり、コントロールはある基準によってプロセスが正常か異常かを判断して企業が失敗しないための活動ともいえる。こう考えると、コントロールはITを活用することによって効果を上げることができるが、マネジメントは仕組みの運営という人間系の部分が重みを持っている。つまり、企業が持続的に成長していくためには、マネジメントとコントロールの両方が必要であり、組織としてマネジメントの視点でITを活用し、融合させることがより重要になってきていると理解できるだろう。

業務効率化へのIT投資の時代から戦略的投資への転換

 もう1つ重要な点は、経営戦略の中でITをどう位置づけるか、戦略投資の再検討を行うことである。この十数年余りの間で、どの企業にもパソコンやネットワークといったITが導入されてきた。4、5年前までは企業におけるITの果たす役割は、主に業務の効率化とその効果の向上だった。現在は、グループ経営を踏まえた情報プロセスの統合に重点が置かれている。しかし、今後のIT活用のテーマとして経営者が重視しているのは、経営機能の強化や組織の競争力強化といった分野にIT投資を行い、活用していくことにシフトしてきている。ところが、実際はほとんどの日本企業において、古い組織のあり方や組織の意思決定プロセスが足を引っ張り、またIT技術がコモディティ化、ブラックボックス化したことにより、経営戦略の中での位置づけをきちんと持つことができないケースが多い。

 比較的ROI(費用対効果)が表れやすいIT投資から、競争力強化という不確実性の高い投資に移る中で、経営戦略とIT投資の整合性を再考する時期に来ているだろう。「20世紀はマネジメントの時代」と言われたが、IT社会へと大きく変貌していく21世紀は、組織の中でも社会の中でもマネジメントとコントロールの両方が求められる時代になっていくことは明らかである。

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