IT投資の成果、「期待通り」はわずか3割――アビーム調査

アビーム コンサルティングの調査によると、IT投資の成果が「期待以上」だとした国内企業はゼロ。「期待通り」との回答も30%にとどまっている。

» 2006年06月06日 16時04分 公開
[ITmedia]

 IT投資は果たしてそれに見合った効果を上げているか――アビーム コンサルティングは6月6日、国内上場企業のCIOを対象とした意識調査の結果を発表した。これによると、IT投資の成果が「期待以上」だとした企業はゼロ。「期待通り」との回答も30%にとどまっているという。

 この調査は、アビームが国内大手企業約2000社のCIOやIT部門長に対し、2006年2月から3月にかけてアンケート形式で実施したもの。有効回答数は141社だったという。

 過去3年間におけるIT投資の成果について質問したところ、全体として「期待以上」という回答は0%。「期待通り」は、2003年10月〜12月に実施した前回調査同様、30%にとどまった。逆に「やや不十分」は56%、「不十分」は10%となった。

 ただし、投資の目的別に見ると若干傾向が異なるという。「情報セキュリティの強化、コンプライアンスの確保」については47%が「期待通り」と回答。「業務コストの削減、業務プロセスの自動化、効率化」についても39%が「期待通り」だとした。一方、「売上の増加、製品・サービスの向上、ビジネスモデルの実現」となると、「期待通り」と「期待以上」を合わせても2割以下にとどまり、逆に「やや不十分」「不十分」が66%に上る結果となった。

アビームの調査結果 目的別に見たIT投資の成果(出典:アビーム コンサルティング)

 アビームでは、IT投資の効果を「期待通り」と回答した企業を成功企業、「やや不十分」「不十分」と回答した企業を不成功企業として、IT投資の企画、推進に対する経営トップの関与度合いなども比較した。この結果、「経営トップの関与」「利用部門の関与」「IT部門のケイパビリティ(提供能力)」いずれもが、成功企業が不成功企業を上回っていたという。

 つまり、成功企業の場合は、経営トップがIT投資を重要視し、IT投資の実態を理解するとともに経営戦略との整合性を取っている。一方利用部門側も業務へのIT活用を重要視しており、企画に積極的に参画している。さらにIT部門は、利用部門に積極的に提案したり、対等に議論を行うことができるほか、ベンダー選定基準を持ち、自らRFPを作成する比率も高い。一方、不成功企業にはこの逆の傾向が見られる。

 実際に3つの部門の関与度をスコア化してIT投資の成功率を算出したところ、3部門とも高スコアの場合には成功率が68%と最も高くなった。逆に、1つでも低スコアの部門があると成功率は大きく低下するという。

 アビームは一連の調査結果を踏まえ、IT投資効果を上げるためには、「課題解決をIT部門任せにしない」ことが不可欠と指摘。経営トップと利用部門、IT部門がともにIT活用を推進する「協働型IT経営」の確立が欠かせないと述べている。

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