ITサービスは、そのほかのサービスよりもコスト増大が早い。ビジネスに依存しているからには、それを超えるIT投資はない。管理できているだろうか?(攻めのシステム運用管理)
「ビジネスを超える投資はない」――誰もが理解している、至極当然の事実である。しかしITサービスは利便性の向上、ダウンタイムの極小化、新技術への対応などの要因により、しばしほかのサービスよりコストを早く増大させている。すべてのITサービスは営利、非営利を含めたビジネスのために存在していることを考えると、これは見過ごせない問題である。
ITILでは、財務の視点でITサービスのパフォーマンスや有効性について適切な尺度で効率化することを重要な要素として要求しており、「ITサービス財務管理」はこれをどのように定量化して、管理していくかのプロセスについて記している。余談になるが、昨今著名なマネジメントシステムであるバランススコアカード(BSC)では、設定した戦略目標に到達するために必要な4つの視点の1つとなる「財務の視点」において、「どのような」指標によって目標を定量化し評価していくかを表している。
これに対し、ITILでは「どのように」ITサービスにおける財務指標を管理していくかを定義している点が興味深い点である。
ITサービス財務管理は、「予算管理」「IT会計」「課金」の主に3つプロセスから構成されている。
予算管理
予算管理は、周期的な予算策定のサイクルと日々の執行の監視から構成されるITサービスの支出を予測し、コントロールするプロセスである。このプロセスを導入することにより、IT部門はITサービスマネジメントの運営に必要な資金を予測し、予算と実績の対比を確実にできる。
顧客/ユーザー部門に課金している場合は、予測された支出をまかなうための収入を確実に得る(もしくは確実に得ようとする)という効果ももたらす。予算を半期または四半期毎に策定し、実績の計上/翌月以降の予測値の修正を毎月繰り返すことにより、予算と実績のかい離を月次のサイクルで補正処理を実行することが可能となる。
IT会計
IT会計は、IT部門やベンダーがそのコストの使い方について、「すべてを説明する」ことを可能にするプロセスである。すべてを説明するというのは、具体的には、顧客/サービス/活動を横軸にとり、科目/内容を縦軸にコストを把握するということを要求している(表)。
このプロセスを導入することにより、外部または内部の顧客ごとに、提供するITサービスのコストを的確に把握し、費用対効果や投資収益率の分析が可能となる。
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顧客ごとにコストを示すモデルでは、直接費と間接費を識別する必要がある。直接費とはその顧客特有のコストであり、例えば生産部門のみが使用するSCM(Supply Chain Management)ソフトなどが挙げられる。ユーザー部門に対して直接利用するソフトを根拠に課金するというのは容易に説明が可能である。
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