EMC、RSA買収で獲得した暗号化技術を活用へ(1/2 ページ)

RSA Securityを21億ドルで買収する取引が完了すれば、EMCは当面、同社のすべての事業を保有するとしている。一方で、業界観測筋は、データストレージ製品との関連性が低い一部の事業を売却するのではないかとの憶測も流れている。

» 2006年07月06日 17時44分 公開
[Matt Hines,eWEEK]
eWEEK

 ストレージの大手ベンダーEMCは、RSA Securityを21億ドルで買収する取引が完了すれば当面はRSAのすべての事業を保有する計画だとしている。

 この買収提案は6月29日に最初に発表されたが、業界観測筋の間では、EMCは買収完了後にRSAの事業を選別し、EMCのデータストレージ製品との関連性が低い一部の事業を売却するのではないかとの憶測が流れている。しかし、RSAによると、現時点では新たな買収に分ける予定はないとしている。

 アナリストや専門家の間では、EMCの最大の狙いはRSAの新しい暗号化ソフトウェアポートフォリオを手に入れることであるという見方がもっぱらだ。ストレージ市場をリードするEMCが、RSAの認証/デジタル証明ビジネスならびに有名なセキュリティ業界カンファレンスを維持するかどうかについては疑問視されている。

 アナリストらによると、EMCがRSAの主力製品ラインである「SecureID」認証ソフトウェアを維持するつもりがあるかどうかは疑問だという。SecureIDは、基本的にコンシューマーをターゲットとした製品である。しかしEMCでは現在のところ、この事業を売却する予定はないとしている。

 ワシントンにあるCurrent Analysisのアナリスト、アンドリュー・ブラウンバーグ氏は「RSAの最近の事業の中心はコンシューマー認証分野にシフトしており、これはEMCの従来の事業分野とは明らかに異なる。コンシューマー認証ビジネスがEMCの総合的な戦略にフィットするかどうかは疑問だ」と話している。

 「RSAはコンシューマー認証ビジネスに多額の資金を投入し、Cyotaを(1億4500万ドルで)買収した。こういったビジネスが、企業顧客およびEMCの事業全体にどのように適合するのかはっきりしない」(ブラウンバーグ氏)

 EMCはすでに、買収を通じて認証技術に投資している。同社は今年3月、企業向けDRM(デジタル著作権管理)を専門とする株式未公開企業のAuthenticaを買収した。Authenticaは、RSAと比べるとはるかに小規模な企業である。買収金額は公表されていない。

 EMCでは、RSAの全事業は当社にとって戦略的な価値があるとしながらも、同社幹部は合併のメリットの説明に際して、RSAの暗号化技術の資産を特に強調していた。EMCによると、データのストレージ/アクセス/管理のあらゆる側面の自動化を支援することを目指したILM(情報ライフサイクル管理)構想を拡大する戦略において、認証と暗号化は不可欠な要素だという。

 EMCのセキュリティ部門のマーケティングディレクター、ロブ・シャドウスキー氏は、「RSAのすべての事業がEMCの事業の強化と改善につながる。RSAの認証、アイデンティティ管理、暗号化製品を当社の製品ライン全体で利用できるだろう」と話す。

 「具体的には、RSAの暗号鍵管理システムおよび暗号化ライブラリは、当社にとって非常に価値がある。このような高品質の暗号化技術がエントリーレベルの顧客に提供されていなかったことが、エンタープライズセキュリティ市場の発展にとって大きな妨げになっていた」(シャドウスキー氏)

 同氏によると、ILMの導入を検討している顧客が、EMCに対して強化を求めている分野の1つが暗号化技術だという。連邦政府のデータ関連法規制や著名企業による情報漏えい問題などを背景として、データのセキュリティが決定的に重要な問題となってきたからだ。

 「RSAの専門知識を活用することにより、われわれはすべての製品を通じて共通の暗号鍵インフラを提供することが可能になる。以前からセキュリティの強化を求めてきた当社の顧客にとって、これは価値あることだ」とシャドウスキー氏は話す。

 「RSAが長年にわたって築き上げてきた信用は、当社の顧客がインフラとセキュリティソリューションのアップグレードを検討する際に大きな魅力となるだろう」(同氏)

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