インターネットを走るトラックでビジネスを迅速に――イーパーセル

電子配送サービス「e・パーセル」を活用することで、データのやり取りが迅速になり、企業のリアルタイム化が可能になるという。

» 2006年08月17日 17時14分 公開
[ITmedia]

 「文書を電子化しただけでは何の価値もない。ファイアウォールの外に出して初めて価値が生まれる」――インターネット上で安全なデータのやり取りを可能にする電子配送サービス「e・パーセル」を提供するイーパーセルの代表取締役社長、北野譲治氏はこのように述べた。

 IT化の進展にともない、企業が取引先とやり取りするデータの量は増加する一方だ。ブロードバンド化したインフラを活用し、FTPなどで送受信すれば、迅速にやり取りを行えるが、誤送信やデータの破損などのリスクがつきまとう。かといってCD-ROMなどの媒体に焼いてデータを送る方法では、数日単位の時間がかかるうえにコストがかかる。

 e・パーセルは、これら2つの方法の長所を組み合わせたサービスだ。HTTPを拡張した独自のプロトコルに基づいて、プッシュ形式でファイルを配信する。CAD/CAEや設計データなどの大容量データを配信する「LARGE便」と、発注書や伝票といったより小容量のデータを複数の取引先と自動的にやり取りするための「AUTO便」という2種類のメニューが提供されている。

 個人情報保護法の全面施行を受け、顧客情報を保存したCD-ROMの搬送を安全に行うサービスを提供している運送業者もあるが、そのインターネット版という位置付けだ。「インターネットという経路の上で配送業を行っている」(北野氏)

「電子メールが乗用車ならばe・パーセルはトラック」と述べた北野氏

 配送サーバはイーパーセル側に置かれ、顧客側にハードウェアの追加やファイアウォールの設定変更などは必要ない。専用ソフトウェアを導入することで、メールの送信と同じ感覚で利用できるという。

 特徴は、なりすましを防ぐための認証と盗聴を防ぐ暗号化、データが改ざんされていないことを示す完全性の保証といったセキュリティ機能を備えていること。また、データがいつ配信されたか、正常に受信されたかといった情報をログとして残す仕組みだ。さらに、通信が途中で途切れても、残る部分からデータの再送を行うレジューム機能や指定の時間に自動的に配送を行う機能なども備えている。

 「こうした機能は、従来のSMTPやFTP、HTTPでは実現できない」(同氏)。また、データセンターに共有ストレージを置いて情報をやり取りする他のオンラインストレージサービスが「コインロッカー」ならば、e・パーセルは、受け取り確認までを行う送り手主導型のサービスであるとした。

 北野氏はe・パーセルによって「ビジネスのスピードが上がり、リアルタイム化が可能になる」という。

 例えば、拠点がどちらも東京都内にあれば、最悪の場合でも人手でメディアを運ぶといった形でデータをやり取りすることも可能だが、海外に複数の拠点を持っている企業の場合は困難だ。中でも、回線事情が悪い国との間で大容量のデータをやり取りする場合のメリットは大きく、「データの輸送に数日かかっていたものが数時間単位に短縮できる。これが企業の競争力向上につながる」と同氏は述べた。

 すでに、CADデータをやり取りする自動車メーカーや部品メーカーのほか、入稿作業を行う出版/広告関連企業、センシティブな情報を扱う金融機関など、約4000社で導入されているという。

 また、手元のPCにソフトウェアをインストールすればデータ配送を行えることから、既存の通信インフラのバックアップとしての役割を果たすことが可能という。2001年に発生した米国同時多発テロの際にも、証券会社でのポートフォリオデータの配送に活用された例があるという。

 イーパーセルは今後、既存の企業向けサービスに加え、コンシューマー向けのサービスを展開するほか、対応プラットフォームの拡張に努め、MacやLinuxなどをサポートしていく計画だ。また、年内には送信できるデータ容量の制限をなくし、数十、あるいは数百GBといった大容量のデータをやり取りできるようにする方針という。

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