レビュー:堅実な作りだが斬新(edgy)とは言い難いUbuntu EdgySuper Review(1/2 ページ)

コードネームEdgy Eftと名付けられたUbuntu 6.10がリリースされた。今回のリリースは、Dapperからの堅実かつ実用的なアップグレードであるが、それほどの新機軸が取り込まれている訳でもない。

» 2006年10月30日 12時58分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 スケジュール通りに行けば、Ubuntuチームは本日、コードネームEdgy Eftと名付けられたUbuntu 6.10をリリースする予定である。既にわたしは過去数週間に渡ってβバージョンおよびリリース候補を試用してきており、今回のリリースがDapperからの堅実かつ実用的なアップグレードであることを確認しているが、同時に承知させられているのは、それほどの新機軸が取り込まれている訳でもないことだ。

 今回のリリースでのlive CDデスクトップインストーラは、x86、AMD64、PowerPC用のものが用意されており、サーバインストールCDに関しては、x86、PowerPC、AMD64、UltraSPARCシステムのものが利用可能だ。また、OEMシステムやRAMが192Mバイト以下のシステムおよびそのほかの特殊なケース用として、x86、PowerPC、AMD64用の代替インストールCDも作成されている。

 Ubuntuのインストール作業は非常に簡単だ。わたしの場合、UbuntuおよびKubuntu用のlive CDインストーラを片手に複数のマシンへのインストールをしたが、UbuntuサーバについてはVMware Serverを介してのインストールを行ってみた。こうしたインストールの作業自体はどれも単純であり、すべて問題なく終了している。インストールに要する時間はマシンの処理速度によっても変わるが、おおよそ20分から1時間程度はかかっており、その大半はバックグラウンドにおけるファイルのコピー作業で費やされた分であった。

Edgyにおける変更点

 Ubuntu Edgyに施された最大の変更カ所だが、これについては一般のユーザーが気づかなくても不思議はないだろう。それは、UNIX System Vのinitをベースとした従来型のinitデーモンがUpstartで置き換えられたのである。

 置き換えられた理由の1つは、ブートプロセスにおける依存性問題に対処するためであり、これは例えば、USBないしネットワークドライブをマウントする必要があるのにUSBやネットワークのサブシステムが準備できていない、といった状況が相当する。これは些細な不具合ではあるが、わたしにとっても Ubuntu Dapperを使っていた間に常に煩わされていた問題の1つであった。わたしも環境ではUSBドライブを/etc/fstabに設定してブート時にマウントするようにしてあるのだが、たいていの場合USBサブシステムの用意ができていない段階でディスクをマウントしようとするので、リブートをする際にファイルシステムがない旨を告げるエラーが発生するのである。

Ubuntu Edgy GNOME desktop Ubuntu EdgyのGNOMEデスクトップ

こうしたUpstartへの移行は透過的な変更であり、おおかたのユーザーは気づきもしないだろう。システムが“正常に動作”している限り、Ubuntuユーザーの大部分は、何か内部的な変更があったかを知ろうとはしないものだ。

 実際、今回のEdgyにおける変更の多くは、ユーザーにとって非常に気づきにくい部分に施されている。アップデートの内容は、Kubuntuユーザー用のKDE 3.5.5やGNOME 2.16を筆頭に、Evolution 2.8.1、Firefox 2.0、OpenOffice.org 2.0.4、Gaim 2.0beta3など非常に多岐にわたっているのだが、その大半は微妙な変更ばかりなのだ。

 Edgyでは、幾つかのアプリケーションが追加採用された。例えばEdgyには、GNOME 2.16の中にあるメモ帳アプリケーションのTomboyも組み込まれている。また今回のリリースから“パーソナルフォトマネジャー”のF-Spotが利用できるようになったのは、写真愛好家たちにとっての朗報だろう。

 意外だったのはGnucashがデフォルトでEdgyにインストールされていなかったことで、この2.0リリースは7月には公開されており、現状でリポジトリから入手できるのである。またUbuntuにデフォルトで用意されているアプリケーション群の中に、ファイナンス関係のものがないのも見劣りする点の1つだ。

 視覚に障害のあるユーザーにとっての朗報は、GNOME 2.16の一部としてEdgyでOrcaスクリーンリーダが利用できるようになったことだろう。わたし個人としてはスクリーンリーダを使う必要はないのだが、その使用感を確かめる目的でOrcaを起動してみた。結論を言うと、コンセプト的には優れているのだが、そのまま実用に供せるというレベルでもない。

 例えばOrcaは、Rhythmboxが動作していると何も読み上げることができない。もちろんRhythmboxを停止させれば、メニューやタイトルの読み上げはもとより、一部のアプリケーション内テキストの読み上げもできるのだが、この場合の対応具合はどのアプリケーションをOrcaの読み取り対象とするかで大きく異なってくる。より具体的に説明すると、OrcaはGNOMEデスクトップのメニューやテキストおよびEvolutionはサポートしているものの、GNOME上で動かしているKDEアプリケーションのテキストを読み上げることはできず、GNOMEアプリケーションについてはいずれも未対応だ。そのほか、Orcaの合成音声を聞き取るには若干の慣れが必要だと思うが、これはすべての合成音声に共通する問題だろう。

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