レビュー:堅実な作りだが斬新(edgy)とは言い難いUbuntu EdgySuper Review(2/2 ページ)

» 2006年10月30日 12時58分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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 Ubuntu 6.10を試用していて感じた不満の1つは、どのアプリケーションもクラッシュしなかったことだ。というのは冗談だが、実のところは、バグリポートの作成をサポートしてくれるApportを試す機会がないかと適当なチャンスをうかがっていたのである。大部分のユーザーにとってバグリポートの報告というのは馴染みのない作業だろうが、このApportは、アプリケーションのクラッシュ時におけるバグリポート作成を一部自動化してくれるソフトなのだ。

 結局、今回の試用時にクラッシュしたのはデイリービルド版のFirefox 3.0だけであり、このアプリケーションを起動させると直後にsegfaultが発生したのだが、それに伴って.crashファイルが /var/crashに作成されていた。そして肝心のApportはこのクラッシュを検知できず、手作業での起動も試みたが、結果は同じであった。

Kubuntu Edgy KDE desktop Kubuntu EdgyのKDEデスクトップ

 Rhythmboxについては、クラッシュはしなかったものの、安定性の面に問題があるように感じた。というのも、かなりの頻度でフリーズが発生し、ウインドウのサイズを変更しようとしただけでフリーズしたケースにも何回か遭遇したのである。

 従来のリリースと同様、Edgyにおけるハードウェアの対応レベルには非常に感服させられるものがある。手元で試した限り、それがワークステーションでもラップトップでも特に問題はなく、ワイヤレスカードやサウンドカード関連のトラブルも生じなかった。またKubuntu上でプリンタ(Brother 1270N)をセットアップしてみたが、これも正常に動作してくれた。Epson製のUSBスキャナもスムースに認識され、Kooka経由で問題なく使用できている。

 総括すると、UbuntuおよびKubuntuは堅実に構成されたデスクトップシステムと言ってよいだろう。わたし個人としてはUbuntuのネットワーク設定ツールの方がKubuntuのものより好みだが、おおかたにおいてどちらも使いやすいことに変わりはない。今回わたしは、メインで使っているワークステーションにKubuntuをインストールしてから、apt-get経由でUbuntuデスクトップパッケージを追加してみた。どちらのインストールでもトラブルは発生せず、テスト用に両者のデスクトップ環境を併用しつづけたが、快適に操作できている。

 Edgyのサーバリリースに関しては、Dapperでも利用できたLAMPサーバインストールおよびDNSサーバインストールという2種類のインストールオプションが利用できる。ただしサーバアプリケーション用の設定ツールは用意されていない。Ubuntuがデスクトップ環境に普及した理由の1つは、デスクトップユーザーの多くが必要とする各種のツール群を提供していたからだ。ところがサーバ環境となると、Ubuntuに用意されているのは単純なインストール機能だけであり、管理者が必要とするであろうツールについては基本的な機能しか装備されていない。こうした状況を受け、Ubuntu開発者メーリングリストでは現在、Apache、BIND、Postfixの付属ツール以外にも独自のサーバ設定ツールを提供する必要性についての議論が続けられている。

 これはパッケージのインストール作業をしているときに気づいたのだが、Edgyでは新しいギミックとしてapt-get用のautoremove機能が追加されている。このコマンドはapt-get remove packageという構文で使用でき、これを実行すると指定パッケージの削除後に不用となる依存関係が存在した場合に、apt-getが該当するものを自動的に削除するかをユーザーに問い合わせてくれるので、無用化した付属パッケージ群をいちいち手作業で削除する手間から解放されるのだ。

Edgyはその名に恥じぬ構成か?

 マーク・シャトルワース氏によってUbuntu 6.10のリリースが予告されたのは4月のことであり、その内容は「最先端ないしは斬新的」なリリースとなる予感を抱かせるものであった。そして現在、予告されたリリースが公開される時機が到来したのだが、果たしてこれは最先端という表現に値するのだろうか?

 一部に関してはイエスである。特定のディストリビューションにおけるinitシステムの置き換えという作業を、基本的に1回の(短い)リリースサイクルでやってのけたのは、称賛に値する大胆な行為といっていいだろう。今回開発者たちは、GaimやFirefox(2.0版のファイナルリリース前)など一部のβパッケージを採用することで、旧式化したバージョンをUbuntu Edgyが抱え込む状況を回避したが、これはISOの確定とほぼ時期を同一とする決断であった。またXenもEdgyのパッケージリポジトリに含まれているが、これはデフォルトでのセットアップは行われない。

 その一方で、Edgyの大部分は非常に保守的な構成でまとめられている、といわざるを得ない。いわゆる“うねるウインドウ”(Compiz/Beryl)はデフォルトではインストールされないし、Network ManagerもEdgyのデフォルトパッケージには組み込まれておらず、それはSMARTパッケージマネジャーについても同様で、AMD64システム上で32ビットアプリケーションを利用したい場合にx86パッケージを提供するmultiarchも同じ扱いだ。Beagleに関しても、ほかのディストリビューションでは既に採用例があるのに、デフォルトではインストールされない。

 Edgyはアップグレードに値するだけのリリースではあるが、それは、自分のお気に入りのプログラムの最新版を取りそろえたデスクトップ環境さえ使えればDapperまで得られていた長期サポートは不用だというユーザーにとっての話であって、事前に期待されていたような斬新的な構成のリリースだとはいえない。

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