セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏――「歴史に学べ!」先駆者が語る“IT産業の未来”(2/3 ページ)

» 2006年11月08日 09時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト編集部]

アナリストも指摘する「直感的に使える強さ」

アイティセレクト セールスフォース・ドットコムが先陣を切って進めているSaaSビジネスは、大手のソフトベンダー各社も参入を表明していますが、本当に定着するのでしょうか。また今後もこの分野でリードし続けるための決め手は何だと思われますか。

宇陀 オンデマンドサービスやSaaSについて疑問視する向きもあるようですが、私はこれらをIT産業の枠の中だけでとらえて憂慮するのは、あまりにも視野が狭いと思います。むしろ、こうした新たな取り組みによって産業全体の裾野をどう広げていくかを考えるべきです。その際にはぜひとも歴史のある他の産業をよく研究してみてはどうでしょう。例えば建築業界をみると、モノをつくることは同じにしても、そのサービス領域には賃貸やホテルなどさまざまな形態があります。自動車産業から派生したビジネスなども大いに研究の価値があります。そう考えると、IT産業はまだまだ遅れている。発展途上の産業だと私は思います。

 とはいえ、目前では競合他社と戦っていかなくてはなりません。この点については、SaaSビジネスの先駆者として、これまでの実績をもとにさらにスピードと柔軟性を磨き上げ、当社ならではのROIの高さを提供し続けたいと考えています。

 さらにもう1つ、当社の強みとして今後もっと磨き上げていきたいと考えているのは、システムとして直感的あるいは本能的にわかるものにするということです。英語で「Intuitive」と言うのですが、最近、大手金融機関のアナリストの分析に、グーグルやヤフーとともに当社もIntuitiveシステムで業績を伸ばしているというリポートがありました。この言葉の意図するところは、これからのシステムは簡単に理解できて使えるものでなくてはならないということでしょう。私はこの言葉が、今後のIT分野の最も重要なトレンドを表すキーワードになるのではないかとみています。

SaaSビジネスの起爆剤になりたい

 セールスフォース・ドットコムが日本市場でのビジネス展開において今最も力を入れているのは、ビジネスパートナーとのさらなる連携強化だ。とりわけ最近では大手システムインテグレーターや特定の業種に強みを持つインテグレーターとの提携が相次いでいる。しかもこれらのインテグレーターの多くはまずSalesforceを自社内で利用してノウハウを蓄積し、Salesforceの単なる販売代理店にとどまるのではなく、自らのシステムに組み入れて、自らもSaaSビジネスに打って出ようという姿勢が目立つ。まさしくSalesforceを起爆剤に新しいビジネスが生み出されつつある。

アイティセレクト このところ有力インテグレーターとの提携が相次いでいますね。

宇陀 ビジネスパートナーとの連携の広がりは、当社のグローバル展開の中でも日本が最も進んでおり、ユニークなビジネスモデルを形成しつつあります。とくに最近では大手のインテグレーターさんがSaaSビジネスに強い関心を持たれ始めており、Salesforceを自らのシステムに組み入れて新しいサービスを展開しようという動きが目立ってきています。これが各業種に広がっていけば、企業規模の大小や業種を問わず、SaaSによるオンデマンドサービスが幅広く浸透していくでしょう。私はこのビジネスモデルを日本発信のグローバルスタンダードに発展させていきたいと考えています。

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