リンクは不審なメールに関する調査結果を公表した。不審メールへの警戒が高まる中で正規の企業電子メールまでもが疑われ、読まれずに失われる事例が広がっているという。
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リンクは2025年12月17日、全国の10〜60代男女1200人を対象にした不審なメールに関する調査結果を公表した。
同調査はフィッシング詐欺への警戒が常態化する社会環境において、企業から送信された正規の電子メールが受信者から疑念を持たれる事象が広がっている実態を明らかにし、企業と利用者双方にとっての課題を整理することを目的としている。
同調査において、回答者の約8割が「直近1年間に不審だと感じる電子メールを受信した経験を持つ」と答えた。不審メールは特定の層に限定された問題ではなく、日常的な通信環境に深く入りこんでいる状況が示された。特に高年齢層では受信経験の割合が顕著に高く、電子メールが主要な連絡手段であり続けている現実が浮き彫りになった。
受信した不審メールの内容としては、配送通知や通信販売、金融関連を装うものが多くを占めた。いずれも生活に密接した分野であり、利用者が日常的に接触しているサービスを模倣する傾向が確認された。この結果から、不審メールは特異な内容ではなく、日常連絡の文脈に紛れ込む形で送信されている実態が読み取れる。
不審と判断する際の判断材料として重視されたのは、差出人のメールアドレスや表示名であった。文面の内容や日本語表現よりも、送信元情報の違和感が警戒の決め手になっている点が特徴だ。文章表現の自然さが向上する中で、外形的な送信元情報が重要な手掛かりとなっている構図が明確になった。
不審メールを受信した際の行動を見ると、多くの利用者は内容を深く確認せず削除や無視を選択している。真偽を調べる行動は限定的であり、最初の印象が否定的であれば、その後に正当性が検証される機会は極めて少ない。この傾向は、企業が送信する情報が読まれないまま失われる危険性を示している。
調査において、疑念を抱いた電子メールが後に正規の連絡であったと判明した経験を持つ人も一定数存在した。若年層ではその割合が高く、情報確認の経路が分散している実態が分かった。受信時点で信頼性を判断できない場合、正規の通知であっても利用者に届かない事例が発生していることが示された。
信頼性に疑問を持たれる電子メールを送信する企業に、利用者は情報管理や安全対策に不安を抱きやすい傾向がある。こうした印象は企業評価の低下や利用意向の減退に直結しやすく、電子メールという接点が企業活動全体に影響を与える重要な要素になっていることが確認された。
利用者が企業に求める改善策として、送信元の明確化や視覚的に正当性を示す工夫が上位に挙げられた。電子メールを開封する前の段階で安心感を持てるかどうかが重視されており、技術的対策と表示上の工夫の両面が期待されている状況が示された。
こうした背景を踏まえ、調査では送信ドメイン認証や公式ロゴ表示の仕組みが有効な手段として示された。送信者の正当性を技術的に確保し、その結果を利用者が即座に認識できる形で提示することが、誤認の抑制につながると整理されている。
同調査は不審メール対策が単なる防御策ではなく、正規連絡を確実に届けるための基盤整備になっていることを示している。企業には、通信の安全性を高める取り組みを通じて、利用者との信頼関係を維持し、情報伝達の確実性を確保する姿勢が求められている。
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