フリーJavaコミュニティーで慎重な楽観論を持って受け止められたJavaのニュースTrend Insight(2/2 ページ)

» 2006年11月17日 15時06分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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開発者たちの反応

 多くの開発者たちも、同じように熱心な反応を示している。「これは実際に、Kaffeプロジェクトにとって大きなカンフル剤となります」Kaffeのメインテナであるジム・ピック氏は言う。「SunのJDKからコードをそのまま合法的にコピーし、Kaffeで使えるようになりました。すぐにもその作業に取りかかるつもりです。開発者全員がとても興奮しています」

 同氏によると、公開の最も重要なメリットの1つは、Kaffeが「Sunからの訴訟を恐れることなく、自分たちの実装と公式な実装を比較およびテスト」できるようになったことだという。

 大多数の開発者の反応にも、明らかに同様の興奮がうかがえる。しかし同時に、フリーソフトウェアの開発者たちはコミュニティーのリーダーたちよりも慎重な姿勢を見せている。

 公開当日に早くも警告の言葉を発したのは、Debianの開発者のMJ Rayである。「はしゃぎすぎるのは良くない」と、RayはDebian Planetで釘を差した。彼は、SunのFAQによると、「オープンソース化されたコードをほぼ完全にベースにした、きちんとビルド可能なJDKが 2007年前半にリリースされる」予定であることに目を向け、「2007年にほぼでは、惜しいところだが及第点ではない」という表現で、自らが異議を唱える部分を強調した。

 GCJの初期の作業を行ったCygnus Javaプロジェクトの技術リーダーをかつて務め、現在はKawaやJEmacsなどのさまざまなフリーJavaプロジェクトのコントリビュータとなっているパース・ボスナー氏も同様の反応を示した。公開当初、ボスナー氏は「たくさんの人々がGNU Classpath、GCJ、および関連プロジェクトに懸命に取り組んできており、もしJavaがもっと早くGPL互換ライセンスの下で公開されていたら、おそらくその一部の活動をもっと効率的に活用できただろう」と指摘こそしたものの、公開は「とても良いニュースだ」と語っていた。しかし、その日の終わりになると、ボスナー氏は多くの開発者と同様、ニュースがコミュニティーに与える影響をより子細に検討するにつれ、目に見えて慎重になっていった。

ショーは続く

 FSF Europeとのインタビューの中で、ストールマン氏はフリーJavaとSunのコードの統合の可能性を予想した。その統合の可能性はまだ残されているが、フリーJavaコミュニティーは必ずしもそれを期待していない。実際、コミュニティーの大半のメンバーは、多くのフリーJavaプロジェクトが継続すると予想している。

 フリーJavaプロジェクトが継続するかどうかという点について、ボスナー氏はGCCメーリングリストで、「どちらとも言えない」と発言している。ボスナー氏は、ティム・バレイ氏とのインタビューのコメントを見ると、一部のJavaライブラリは含まれない可能性があるため、同等のフリーソフトウェアが必要になるだろうと指摘する。

 「おそらく、Sunが公開するコードの大部分は統合されるでしょうが、全部ではないでしょう」とボスナー氏は続けている。彼は、フリーJavaの実装やアプリケーションの中には、Sunの同等品より望ましいと判明するものがある一方で、互換性がないものもあるのかどうかという疑問を提起している。こうした問題は、「技術的な問題でもあり、ライセンス/政治的な問題でもあり、プラグマティックスの問題でもあります」とボスナー氏は書いている。

 GNU Classpathのメンテナで、GCJおよびEclipseの主要なコントリビュータでもあるマーク・ウェイラード氏もほぼ同じことを言う。「たくさんの問題を検討する必要があります」彼はNewsForgeに語った。「もっと優れたフリープラットフォームを早急に実現するような方法で、GNU Classpath、GCJ、Kaffe、Cacao、JamVM、IKVMなどを、フリー化されたSunのコードとすぐに結合できるのか。Hotspotとほかの[ランタイム環境]とでプラットフォームの対応範囲はどのように違うのか。持ち越すことができるのはどういった種類の改良で、分離する必要があるのはどれか。すべてを何らかの新しいコードベースに移動することなく、研究分野全体とGNU Classpathコミュニティーのプロジェクト(現在20以上)を前進させるにはどうすればよいのか」

 その答えの多くは、次のコードの公開を準備するにあたり、「今後半年で[Sunが]コアライブラリのどの部分を公開できるか、できないか」にかかっているとWielaardは指摘する。しかし、答えがどうであれ、短期的にも長期的にも、フリーJavaプロジェクトが消滅することはないとウィラード氏は明らかに予想している。

 Apache Harmonyプロジェクトのイエル・マグヌスン氏は自身のブログで、GPL化されたJavaの影響について述べている。

 「Apache Harmonyにどのような影響があるのかとよく訊かれます。私は、プロジェクトの日々の活動にそれほど大きな変化があるとは思いません。われわれは同じ目標を持ち、同じ問題に取り組み、同じ成果を上げようとしています。以前にどこかで述べたように、ApacheとSunではコミュニティーも、ライセンスも、貢献の条件も、管理モデルも異なっています。Apacheプロジェクトはピアの集合で、おのおのが独自の参加理由を持っています。私は、Sunがもたらしたこの良いニュースによって、われわれの活動が変わることはないと考えています。単にオープンソースのJavaが増え、ユーザーやコントリビュータにとっての選択肢が増えるだけのことです」

 結局のところ、Sunが最終的にどれだけの量のコードを公開しようと、SunはJavaのコントリビュータの1つにすぎず、すぐさま最も重要な位置を占めるわけではないというのが全般的な受け止め方である。GCJコントリビュータのジョエル・ダイス氏は言う。「貢献と同じように重要なのは、既存の多くのフリーJavaプロジェクトが関与し続けることです。彼らの活動は、単に適合するJavaの実装を提供することだけにとどまらないからです。GCJが良い例です。Java、C++、およびCのコードを同じプログラムで混在させる場合、GCJはどのコンパイラよりも優れた働きをします。Sunがこうした実験的なコードを「真の」Javaの一部として受け入れるか拒否するかは分かりませんが、それだけを成功の判断基準にする必要はありません」

 多くのフリーJava開発者にとって、このニュースの要点は可能性の意識の高まりであるように見受けられる。「宴が終わったら、きっとわれわれ全員から素晴らしいことが聞けるでしょう」Wielaardは言う。「そしてわれわれは、思いのままに改良する自由を行使するのです」

Bruce Byfieldは、コースデザイナー兼インストラクター。またコンピュータジャーナリストとしても活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿している。


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