VLCCの発足時からの会員であるNECは、可視光通信の優位性にいち早く注目。ユビキタス基盤開発本部のシニアエキスパートである鈴木修司氏を中心に同技術の研究開発を進めてきた。
「可視光通信は、LED先進国である日本発の通信技術。実用化への第一歩として、LEDを28.8kHzで点滅させることで4.8kbpsの通信速度を確保し、簡単なIDのみの通信を行うデモ機を開発した」(鈴木氏)
その後、ロジスティクス・ソリューション分野でNECと業務提携関係にある村田機械とのコラボレーションにより、可視光通信を用いた「次世代ロジスティクス・ソリューション」の開発・実証実験に着手。これは、広い倉庫や配送センターなどで、注文や出荷指示に応じて必要な商品を選定するピッキング作業をサポートするソリューションである。
具体的には、ピッキングカートなどにID情報を発信する可視光タグを装着し、天井のカメラがこれを受信することで、ピッキングカート(作業者)の現在位置を誤差数センチメートルのレベルで検出する。またこの位置情報は、倉庫内の情報を一元管理するWMS(Warehouse Management System)が提供する商品の保管場所とマッチングすることで、最も効率的なピッキングルートと作業手順を作業者にナビゲートすることが可能となる。
「多品種小口分類のピッキング作業は人手に頼る部分が多く、作業の効率化や誤出荷防止が大きな課題。今回の実証実験では、従来の作業と比較して30〜35%程度の効率化が達成できると見込んでいる。また、最適化されたナビゲーションにより、倉庫内でカート同士のすれ違いや方向転換を防止することで保管棚間隔を狭く配置することも可能なので、倉庫のキャパシティの向上や省スペース化にも貢献できる」と鈴木氏は実験の成果を語る。
また、NECの可視光通信を活用した新事業推進の任にある上坂直弘氏は、可視光通信は大きなビジネスチャンスであると強調する。
「今回、村田機械と共同開発した次世代ロジスティクス・ソリューションは、『国際物流展2006』に出展して大きな反響を得た。これ以外にも、すでに道路上のLED信号機を利用して信号待ち車両に対し位置情報や待ち時間、渋滞情報などを送信するITSへの応用も検討されている。また、屋内のLED照明を活用し、高速インターネットアクセスを5年以内に実用化する国家プロジェクトも始動している。これらはマーケットのスケールも大きく、ビジネスとしても期待している」
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