JBoss、SeamのアップグレードでAJAXとWeb 2.0に対応

JBossは12月13日、Webアプリケーションフレームワーク「JBoss Seam」のアップデートを発表した。AJAX技術を用いて、Web 2.0アプリケーションの開発を容易にする新機能が追加されている。

» 2006年12月14日 16時29分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 Red Hatの一事業部であるJBossは、Webアプリケーションフレームワーク「JBoss Seam」のアップデートを発表した。

 ベルギーのアントワープで開催された「JavaPolis」カンファレンスにおいて、JBossは12月13日に「Seam 1.1」を発表。同社によると、新バージョンでは、AJAX(Asynchronous JavaScript and XML)技術を用いてWeb 2.0アプリケーションの開発を容易にする新機能が追加されたという。

 JBoss Seamフレームワークは、AJAX、JSF(JavaServer Faces)、EJB3(Enterprise JavaBeans 3.0)、Javaポートレット、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)、ワークフローといった各種のSOA(サービス指向アーキテクチャ)技術を統合した環境。JBoss Seam 1.1では、サポート対象のアプリケーションサーバの種類が増えたほか、AJAXベースのアプリケーションとの連携機能が改善された。

 JBoss Seam 1.1の新機能の1つが新しいPOJO(Plain Old Java Objects)コンポーネントモデルである。POJOはEJB3に代わる選択肢を提供するもので、JBoss SeamをHibernateやApache Tomcatなどのコンテナと一緒に使用したり、EJB3を現在サポートしていないJ2EE(Java 2 Enterprise Edition)アプリケーションサーバと一緒に使用したりすることを可能にする。

 Javaコンテナというのは、特定機能用のJavaコンポーネントにサービスを提供するランタイムエンティティである。JBossの担当者によると、開発者はJBoss Seam 1.1を使って、標準に準拠したJPA(Java Persistence API)ベースのアプリケーションを作成することもできるという。

 そのほかの新機能としては、データ駆動型アプリケーション用の新ツール、ICEfacesおよびAjax4jsf(いずれもリッチクライアントアプリケーションを作成するためのオープンソースのJSFベースのAJAXソリューション)との連携、アトミックカンバセーションのサポート、AJAX向けにデザインされた新しい同時性モデルなどがある。

 JBossによると、JBoss SeamはアーキテクチャおよびAPIレベルでの簡素化を実現し、開発者は注釈付きのPOJO、コンポーネント化されたUIウィジェット、XMLなどを使ってWebアプリケーションを組み立てることができるという。

 JBossで製品管理ディレクターを務めるラム・ベンカタラマン氏は、「JBoss Seamに対する今回のアップデートでは、簡素性、スピード、使い勝手が求められる開発環境向けの統一的プログラミングモデルとして強化を図った」と発表文で述べている。

 「ユーザーは、JBoss Seamは約束したものを提供すると言っている。今回のアップデートでは、多くのユーザーが貴重なフィードバックを提供してくれた。われわれは今後も、JBoss Seamをすべての開発者にとって汎用性の高いプログラミングモデルにする作業を続けるつもりだ」(同氏)

 Red HatのJBoss部門の上級副社長兼ゼネラルマネジャー、マーク・フルーリ氏は、JBoss Seamに関する米eWEEKの取材の中で、Seamは「JBossの現在の製品群の中で最もホットな技術の1つ」だと語っている。

 「Seamは、非常にシンプルなアイデア、非常に直感的なプログラマティックインタフェースをベースとした、非常に強力なフレームワークだ。ガビン(JBossのコア開発者であるガビン・キング氏)と彼のチームの仕事を非常に誇りに思っている。彼らは、Hibernateで達成した成功を再現しようとしているのだ。これは大変な偉業だ。1回目は運かもしれないが、2回目はすべて実力によるものだ」とフルーリ氏は話す。

 「SeamはまさにJBossが取り組むべきプロジェクトだ。これは、企業向けの本格的アプリケーションの開発を想定した未開拓分野の研究である。しかもわれわれは、これを標準的な方法でやろうとしているのだ。これは、有能な人材を集めて彼らに必要なリソースを与えれば、どんな成果を達成できるかを示す好例だと思う」(同氏)

 フルーリ氏によると、SeamはJBossコミュニティーで「圧倒的な」支持を得ているという。「登場して9カ月にもならないSeamは現在、1カ月当たり5000件のダウンロードがある。これは一流の証明にほかならない。Seam 1.1はWebSphereおよびWebLogicにも対応する。ユーザーがそれを求めたからだ」。

 またJBossでは、Seamの広範な普及を目指し、標準化組織のお墨付きを得ようとしている。この取り組みは、Web Beans JSR(Java Specification Request)――JSR 299とも呼ばれる――としてスタートしている。

 この規格に対し、既にOracle、Sun、Googleなどの企業が支持を表明している。「これらの企業はいずれも、現代的なアプリケーションやリッチなアプリケーションを開発する手法、ならびにそれを支えるコンポーネントモデルに関心を持っている」とフルーリ氏は話す。

 「1000種類もの小さなAJAXフレームワークが出回るなど、Webフレームワーク分野はにぎやかな状況だが、Seamは標準的な方式を推進しようとしている。この取り組みを業界が支持しているというのは、心強い限りだ」(同氏)

 フルーリ氏によると、JBoss Seamチームは既に、SunによるJavaのオープンソース化で生まれるチャンスに目を向けている。Seamの開発では、既存の各種技術の中でも特にRuby on Railsとその簡素性を取り入れたという。

 「ガビンはRuby on Railsの簡素性をタグ方式によってSeamに組み込もうとした。また、GPLに基づくJava Virtual Machineが提供される可能性が出てきたため、Seamチームの一部のメンバーは、クラスローダを修正することが可能なスクリプティング機能を作成できないだろうかと考えている。そうすれば、コードの一部を変更して、それを直ちにWebページに反映させることができる」(フルーリ氏)

 JBoss Seam 1.1は現在β版の段階であり、製品版のリリースは今年12月15日の予定となっている。現時点では、「JBoss Application Server 5.0」のβ版の一部として提供されている。GNU LGPL(Lesser General Public License)の下でラインセンスされているJBoss Seam 1.1は無料で使用することができ、JBossのWebサイトからダウンロードできる。

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