11月28日、「かっぱえびせん」などのヒット商品で知られる菓子メーカーのカルビーは、先に述べた沖縄の特徴を生かし、いち早くバックアップセンターを稼働させた。重要度の高いERPシステムのほか、EDI、メールサーバなどを手始めに、川崎にあるメインのデータセンターからオンラインでデータを複製したバックアップセンターの運用を開始している。
ITを本業としない菓子メーカーがバックアップサイトを構築する例はまだ珍しいが、同社はコストを上手に抑えることに成功しており、コスト的にも十分に見合う「普及型」の災害対策のモデルケースとなる可能性を秘めている。
カルビーは、川崎と沖縄のセンター間に、沖縄県が無償で提供している100Mbpsの光ファイバネットワーク「沖縄県情報産業ハイウェイ」を活用。データセンター同士を結ぶネットワークコストを大幅に抑えた。同社がコスト負担しているのは、接続ポイントまでのアクセス回線のみ。また、バックアップセンターの構築には、こなれ始めてきたストレージの仮想化機能を用いることで、既存資産を無駄にすることなく、再利用することを可能にした。
これらにより、通常のバックアップサイトの新規構築に比べると、3分の1という低コストで、復旧までに掛かる時間RTO4時間を達成している。
バックアップセンターのカットオーバーに合わせて沖縄入りしたカルビーの中田康雄社長は、沖縄県庁を表敬訪問し「これで枕を高くして寝られる」と経営のトップの気持ちを表現。CEOとCIOを兼ねる中田社長の言葉と考えると「(普通の経営者の言葉以上に)一層、重い言葉として受け取れる」と、システム構築を担当した日本HPの営業担当者は感想を話した。
カルビーは日本全国に地域カンパニーを抱える。ERPパッケージを導入したことをきっかけに、データセンターを川崎の1カ所に集約した。「データセンター内では、バックアップや二重化などを行ってきたものの、データセンターが被災すれば、全国の業務が一斉に停まれかねない」(カルビー、フィールドサポートセンター情報システム運用チームの西村良彦氏)というリスクを抱えてきた。沖縄のバックアップサイトが稼働したことで、災害による事業停止のリスクを大幅に下げられるようになったわけだ。
このプロジェクトを担当した日本HPのITコンサルティング本部コアソリューション部グループ長の鬼山浩樹氏は「同社のケースは、コスト的に手が出せなかった企業にとって模範となる」と話す。ITベンダーサイドにもこのような実現性の高い「普及型」のノウハウが蓄積されてきている。
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