Office 2007の無償UIライセンス、コードは提供せず

Office 2007と同様のルック&フィールを備えたアプリケーションを作成したい開発者は、Microsoftから無償でライセンスを取得できる。だが、このライセンスではコードは提供されず、特許権や著作権といったMicrosoftの各種知的財産を使用する権利のみが与えられる。

» 2007年01月26日 08時00分 公開
[Greg DeMichillie,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Office 2007と同様のルック&フィールを備えたアプリケーションを作成したい開発者は、自分の製品にOfficeの新しいユーザーインタフェース(UI)を実装するための永続的なライセンスをMicrosoftから無償で取得できる。だが、このライセンスでは、コードは一切提供されない。つまり、このライセンスは、特許などMicrosoftの各種知的財産に対する使用許可にすぎない。なお、Officeと競合する製品の開発者はライセンス供与の対象外となる。

方針の転換

 このプログラムにより、開発者には、Office 2007の新しいUIに関連したMicrosoftの知的財産を使用するライセンスが与えられる。Microsoftはこのライセンスによってカバーされる具体的な知的財産のリストは提供していないが、同社によると、対象となる知的財産には、「機能革新」に関する係属中の特許、同UIの「オリジナルのデザインエレメント」に関する係属中の意匠特許、「画面上のクリエイティブな表現」に対する著作権、同UIの全体的な外観に対するトレードドレスなどが含まれる。トレードドレスとは、ある製品の固有のスタイルのこと。つまり、この場合は、Microsoftが提供しているUIであるとユーザーが認識できるかどうかがポイントとなる。

 このようにUIの知的財産権をあからさまに主張するというMicrosoftの姿勢は、同社が1988年の対Apple訴訟で取った立場からはかけ離れている。Microsoftはこの訴訟において、「AppleはMac OSの全体的なルック&フィールに対する著作権を主張できない」と論じ、勝訴を勝ち取った。だが、この訴訟以降、業界では特許に対する意識が高まり(特許では、著作権よりも強力な権利が付与される)、それとともにMicrosoftの見解も変化したようだ。

 Officeのこれまでのリリースでは、「Officeライクなサードパーティ製のアプリケーションが増えれば、それだけ、Officeパッケージの魅力も高まるだろう」との考えから、Microsoftは開発者に無償でOfficeの外観を模倣させてきた。だが今後は、自分のアプリケーションにOffice 2007と同様のルック&フィールを採用したい開発者は、無償ライセンスを取得しなければならない。また、Microsoftは同UIを実装したコードは一切提供しないため、開発者は自分で実装を作成しなければならない。このライセンスは単に、開発者に「Microsoftの特許を使用する権利」を提供するだけのものだ(Microsoftはそのようには明言していないが、おそらく、同社の知的財産を侵害することなくOffice UIを実装するのは不可能だと考えているのだろう)。

 なお、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Accessのいずれかのアプリケーションと同等の主機能を備えるソフトウェア製品、コンポーネント、Webベース/ホスト型サービスの開発者には、このライセンスは供与されない。あるいは、これらのアプリケーションのいずれか、あるいはすべてを代替する製品として開発または販売されている製品の開発者に対しても同様だ。つまり、Sun MicrosystemsのStarOfficeやオープンソースのOpenOfficeスイートのほか、Googleの電子メールやスプレッドシート、ワープロといった各種オンラインサービスも、ライセンス供与の対象外となる。Officeの新しいUIの開発に何年もの歳月を費やしてきたMicrosoftは、こうして、ライバル各社には複製を禁じ、一方、相補的関係にあるサードパーティやパートナー各社にはその使用を認めることで、これまでの投資を保護したい考えだ。

 Officeの拡張機能を使って、Office上で直接動作するソリューションを構築している開発者には、ライセンスは不要だ。

規約と制限事項

 ライセンスを取得するには、開発者は「2007 Microsoft Office System User Interface Design Guidelines」と呼ばれる120ページ強の文書に記された一連の規約と制限事項に同意しなければならない。この文書自体は、ライセンス契約を完了した開発者にのみ提供されるが、要件の一部を抜粋したサンプルは誰でも入手できる。

 このガイドライン文書には、従うべき必須要件と推奨要件のほか、強制ではないものの、「Microsoftの経験によると、アプリケーションの全体的な使い勝手の改善につながるであろうと思われるベストプラクティス」のリストが含まれる。

 例えば、開発者が「リボン」(Office 2007がメニューバーの代わりに採用しているエレメント)を実装する場合、その実装では、アプリケーションウインドウのサイズの変更に合わせて、リボン上のコントロールのレイアウトをリアルタイムで変更しなければならない。つまり、マウスボタンが離されるまで、コントロールの配置の調整を待つわけにはいかない。強制ではないベストプラクティスの一例としては、アプリケーションウインドウが300×250ピクセル以下の場合は、リボンを完全に消したほうがよい、といった推奨事項が挙げられる。

 多くの開発者にとって、特に社内アプリケーションの開発を行っている開発者にとっては、こうした要件をすべて実装する作業は実際的ではないだろう。幸い、DevComponentsやInfragistics、Telerikといった独立系ソフトウェアベンダー(ISV)各社が、Microsoftのガイドラインに準じたプレビルトの実装を開発者に提供するという目的で既に同UIのライセンスを受けている。ただし、サードパーティー製のコンポーネントを用いる場合でも、開発者は同UIのライセンスをMicrosoftから取得する必要がある。

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