急速に膨れ上がるストレージだけを取って見ても、企業のIT管理者やCIOらが複雑さや柔軟性の欠如という「混沌」に直面しているのは明らかだ。HPは2月上旬、成長著しいベトナム最大の商都、ホーチミンシティーで「HP Asia Pacific StorageWorks.07」を開催し、混沌を乗り越え、変化をチャンスに変える同社のイノベーションを売り込んだ。
「カオスが変化をもたらす」── 2月上旬、「HP Asia Pacific StorageWorks.07」が成長著しいベトナム最大の商都、ホーチミンシティーで開幕し、オープニングの挨拶に登場したアジア太平洋および日本地域のStorageWorks事業を統括するアンソニー・チャン副社長はそう話した。
「付け焼き刃の対策では行き詰まるばかり。0と1の膨大なデータ資産をいかに情報に変え、いかに知識として活用していくのか。膨れ上がるデータに手を焼く顧客にHPは答えを提供したい」(チャン氏)
アジア太平洋地域におけるStorageWorksカンファレンスの開催はこれで3回を数える。目覚ましい経済成長を続けるインドや中国を域内に抱えるほか、ほかの新興国においても活気に溢れるSMB(中堅および中小企業)が多いのが市場の特徴だ。会場となったホーチミンシティーの中心街も、まるでアジア中から集めたかと思われるほどのおびただしいオートバイで溢れ、ほとばしる活気に圧倒された旅行者は道を渡ることさえ難しい。
2006年、世界の外部ストレージの総出荷容量は200万テラバイトに達した。これは2004年の2倍、2003年の3倍だ。今後も年率56%で増加し、2010年には1200万テラバイトを出荷すると予測されているが、グローバルのStorageWorks事業を統括するボブ・シュルツGM兼上級副社長は、「インドや中国では、グローバル平均を上回る60%以上の成長が見込まれている」と指摘した。
急速に膨れ上がるストレージだけを取って見ても、企業のIT管理者やCIOらが複雑さや柔軟性の欠如という混沌に直面しているのは明らかだ。
「どのように管理すればいいのか? どのように変化に対応すればいいのか? どのようにすればIT資産の価値を高められるのか?」── シュルツ氏はStorageWorksカンファレンスに参加する顧客らに問い掛け、HP自身の取り組みを事例として紹介した。
HPは5年前にCompaqを買収しているが、互いに規模が大きかったため、合併後のITは複雑さを極めたという。
「HPのデータは500ペタバイトに膨れ上がっている。データマートは762に上り、情報はばらばらだ。これを現在、1つのデータウェアハウスに集約しようとしている。29カ国85カ所に分散していたデータセンターの数を3カ所に減らすとともに、2万1700台あったサーバの数も統合と仮想化によって1万4000台まで減らした」とシュルツ氏。
規模はHPほどではないものの、同じような課題に直面するアジア太平洋地域の顧客は少なくない。同社はカンファレンス開幕に先立ち、「HP StorageWorks Enterprise Virtual Array(EVA)」の機能強化や新製品を発表した。いずれもストレージ環境の統合と仮想化を加速し、さらに情報の安全性を高めるものだ。
一連の製品発表後、インタビューに応じたシュルツ氏は、「ストレージの容量は爆発的に増えており、管理の負荷が重くのし掛かっているだけでなく、異なるシステムも乱立している。顧客らは、もはやポイントソリューションでは対処できない、と感じている」と話す。
管理の簡素化とIT資源の最適化に向けた統合の取り組みは、ストレージだけでとどまらない。サーバ、アプリケーション、そしてデータセンターのレベルへと次第に拡大していく取り組みだ。
「HPは包括的なシステムを提供でき、さらに統合された環境からインフラストラクチャー全体を管理できる唯一のベンダー。StorageWorks事業部門が目指すのは、アダプティブインフラストラクチャーの一翼を担うストレージソリューションだ」(シュルツ氏)
シュルツ氏は、アダプティブインフラストラクチャーを実現するためのイネーブラーとして、「ITシステムとサービス」「電源とクーリング」「マネジメント」「セキュリティ」「仮想化」、そして「自動化」を挙げる。
すでにITシステムとサービスは、今回StorageWorks EVAにおいてファイルサービスが提供されるようになったことからも分かるとおり、プラットフォームの標準化はかなり進んでいる。また、マネジメントでは統一された環境から管理できるHP Storage Essentialsが拡充されている。バックアップも暗号化されセキュリティも高まった。仮想化の機能はEVAをはじめ、同社のストレージ製品が長年提供してきている。
StorageWorks事業部門としては、6つのうちのこれら4つの領域にフォーカスし、自動化されたデータセンターへの道のりを着実に歩んでいる。
実のところ、2002年から同事業を率いてきたシュルツ氏は、エンタープライズストレージ&サーバ部門に近く新設されるソフトウェア事業を率いるGMへの就任が決まっている。
「アダプティブインフラストラクチャーを実現する6つの柱のうち、マネジメント、仮想化、そして自動化という3つを推進していくのがわたしの新しい役割。今後はソフトウェアが重要になる」とシュルツ氏。
彼は、「これはモックアップ」と断りながらも、競合他社の製品も含め、ストレージの管理を自動化してくれる「StorageWorks Utility Manager」のユーザーインタフェースを披露した。
HPが描くストレージの将来像は、IT管理者がアプリケーションを選び、それが必要とする容量やパフォーマンス、可用性のレベル、許容できるリカバリーまで時間などを設定していくだけで、ビジネスのニーズに応えるストレージ「サービス」を即座に提供できるユーティリティー化だ。
日本でもこの1月に発表された中小企業向けの「HP StorageWorks AiO」では、既にその一部が実現されているのは興味深い。
「今は経験豊かな技術者が複雑なプロセスで実現しているが、われわれが目指すのは仮想化され、自動化されたデータセンターだ。カオスを乗り越え、変化をチャンスに変えるイノベーションへの情熱を理解してほしい」(シュルツ氏)
Hewlett-Packardは2月5日、ホーチミンシティーで開催された「HP Asia Pacific StorageWorks.07」カンファレンスで、HP StorageWorks Enterprise Virtual Array(EVA)の統合と仮想化の機能を強化し、ストレージ管理を簡素化する一連の製品を発表した。
「HP StorageWorks EVA File Services」は、NASアプライアンスやファイルサーバの機能をStorageWorks EVAが提供できるようにするもの。アプリケーションのブロックデータとファイルデータを同じStorageWorks EVAに統合できるため、管理が簡素化でき、また投資や管理のためのスキルをそのまま生かすことができるという。
「HP ProLiant DL585 G2 Storage Server」は、SANディスクアレイを利用して大規模なファイルサーバソリューションを提供するラックマウント型ストレージサーバ。MicrosoftのWindows Unified Data Storage Server 2003を活用し、マルチプロトコルのファイル/プリントサービスとiSCSIの接続性をSAN環境で実現するNASゲートウェイ製品だ。アプリケーションのためのストレージとファイル/プリントサービスを1つの環境に統合するもので、やはりIT資源の効率化や柔軟さを実現してくれる。
HPは他社に先駆けて昨年秋、ブレード型のストレージ「HP StorageWorks SB40c」を市場に投入したが、今度はHP BladeSystemに組み込むことができる4Gbpsのファイバーチャネルスイッチ「Cisco MDS 9124e Fabric Switch for HP c-Class BladeSystem」を発表した。統合されたデザインによって、ラックスペースを有効に活用でき、電源やクーリングはエンクロージャーのものを共用できるという。
ストレージ環境が統合化されると、バックアップ作業も集中化されるようになるが、今度はその安全性を高めることが求められるようになる。HPはこの日、「HP Data Protector Software 6.0」に256ビットのAdvanced Encryption Standard(AES)暗号化機能を追加した。
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年3月26日