「HP StorageWorks AiO」が中小企業にもたらすネットワークストレージの力DASよ、さらば(1/2 ページ)

中小企業がSANを導入するのはなかなか難しい。日本HPは1月18日に発表したiSCSI対応オールインワンストレージ「StorageWorks AiO」で、この状況を変えようとしている。

» 2007年01月31日 18時00分 公開
[ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は1月18日、中小企業向けのオールインワン統合ストレージシステム「HP StorageWorks All-in-One Storage System」(StorageWorks AiO)を発表した。専任のストレージ管理者を置けない中小企業でもネットワークストレージのメリットを受けられるようにするのが狙いだ。

StorageWorks AiOの特徴

 製品名に掲げられた「All-in-One」という言葉からも分かるとおり、AiOではエントリー向けのネットワークストレージにさまざまな機能を搭載し、管理インタフェースを統合したのが最大の特徴。ハードウェアの点から見ると、AiOはデュアルコアXeon搭載のタワー型PCサーバ(ProLiant ML350G5)にSATAまたはSASドライブを6基内蔵した「サーバ+DAS」という構成で、ここにネットワークストレージとしてほかのサーバから利用するためのインタフェースやストレージソフトウェア(Microsoft Windows Storage Server 2003 R2など)を組み合わせ、統合的な管理インタフェースを備えた。

HP StorageWorks AiO HP StorageWorks All-in-One Storage System

 「DAS環境から脱却し、ネットワークストレージのメリットを享受する」ことを狙う製品コンセプトにもかかわらず、実体としてはDAS搭載サーバそのものというのは興味深いところだが、この構成によって、高機能なソフトウェアをストレスなく実行する演算性能と、豊富なPCサーバの出荷量を背景にした安価な価格設定が両立し、ユーザーメリットにつながっている。もちろん、ユーザーから見た場合の使い勝手は専用ストレージシステムそのもので、PCサーバをベースに構成されていることを意識する必要はまったくない。

 ストレージシステムとして見た場合でも、SANストレージ(iSCSI)、ファイル共有(CIFS/NFS)、バックアップ機能が組み込まれており、複数の役割を1台でまかなうことができる。低価格でSAN環境を構築し、その後の運用管理の不安も低減されている点は、特に中小企業のユーザーにとって大きなメリットとなりそうだ。

 製品として、SATAディスクを採用した1.5TバイトのモデルとSASディスクを採用した876Gバイトの2モデルをラインアップ。それぞれ81万9000円、102万9000円なっている。

 容量と価格が逆転して見えるが、これはディスクインタフェースの差による。通常の利用ではSASモデルが推奨され、SATAモデルはデータの蓄積が中心の負荷の低い環境向けとしている。ディスクはいずれもホットプラグに対応しており、ハードウェアRAIDコントローラ、スナップショット機能などを備え、基本的な信頼性に関しても問題はない。

NASほどには簡単に導入できないSAN

 サーバごとにそれぞれDAS型ストレージを搭載することは、利用効率が低下してコストアップにつながるうえ、運用管理もそれぞれのサーバで実行しなければならない。そのため、管理者の運用負担が増大するという問題が指摘され続けてきた。そこで、ネットワークストレージへの移行を検討することになるが、同じネットワークストレージでもNASとSANでは移行にかかる負担が大きく異なる。

 NASの場合は、ファイルシステムの一部がネットワークの先にあるだけという形になる。最近のOSはネットワークファイルシステムを標準実装しており、利用にあたっての追加負担もごくわずかで済む。ストレージの空き容量が多いサーバをファイルサーバとして運用すれば、事実上ほぼゼロコストから使い始め、規模の拡大に応じて段階的にグレードアップし、専用NASに置き換えていくというプランも描きやすい。

 しかしNASは、ファイル単位のアクセスであるため、データベースアプリケーションのファイルを置くような用途には向かない。パフォーマンスにも支障が出ることもあるし、ファイルシステムをネットワークに公開するため、セキュリティ面での問題もある。

 一方、SANの場合は、ストレージ領域を外部ストレージに統合することが可能だ。SANはブロック単位のアクセスかつサーバごとに占有の領域を割り当てる。そのため、前出のNASの問題点をきれいに解消できる。

 しかしながら、大規模環境で利用されるファイバチャネルSANは、サーバにHBAを装備し、さらにSANスイッチを導入してネットワークを構築するため、初期導入コストは高くなる傾向にある。「どうせSANを導入するなら、可能な限り多くのサーバをSANに移行しないと投資効果が下がる」と考えてしまい、結果としてシステムを全面的に刷新するという大規模なプランに膨れ上がってしまうことも珍しくない。特に、中小企業では予算の制約が厳しいため、どうしても「検討はしたものの結局は見送り」という話になってしまう。SANの効果はともかく、現実的には「小さく始めて大きく育てる」という段階的な導入手法をとりにくいシステムなのである。

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