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» 2007年03月19日 10時00分 公開

IDC Japanストレージアナリストに聞く:新たな管理手法でデジタルデータの爆発的増加に立ち向かえ

幾何級数的に増え続けるデータ ── 企業は今、業種や規模を問わず未曾有の課題に直面している。拡張性や柔軟性を手に入れるネットワークストレージの技術や製品は既にあるものの、コストやIT管理者のトレーニングが障壁となって立ちはだかる。専門のIT管理者を置けない中小企業にとってはなおさらだ。IDC Japanでストレージのアナリストを務める森山正秋グループディレクターに、企業、特に中小企業がデジタルデータのカオスを乗り越え、拡張性や柔軟性を手に入れることができる新たな選択肢について聞いた。

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浅井 デジタルデータの爆発的な増加とその管理の複雑化が企業にとって未曾有の課題となっています。先ずはストレージ市場全体の動向を教えてください。

森山 IDCでは、ストレージに関してはハードウェアだけではなく、ソフトウェアやサービスも含めて調査を実施しています。2006年の国内ストレージ投資は3.9%の成長となる見込みで、2007年も4%強の伸びを予測しています。

IDC Japan株式会社 リサーチ 第1ユニット(ストレージ/サーバー)グループディレクター 森山 正秋氏

 しかし、細かく見ていくと、このところハードウェアの売り上げについては横ばいか微減で推移しています。Gバイト単価が年率30〜40%も下落しているからです。一方、ディスクストレージの出荷容量は年率50%前後で増加し続けています。ハードウェアは「投資額が増えていないものの、容量は増加し続けている」と言えます。増え続けるデータをどう効率良く管理し、安全に保管していくか? これが企業の課題であり、これを解決するためにソフトウェアやサービスに対する投資が増加し、このため国内ストレージ投資が成長しています。

浅井 安全に保管したい、というニーズも顕在化してきていますか?

森山 これまで膨大なデータをより効率的に管理し、TCOを削減することがストレージ管理の課題だといわれてきましたが、実際にユーザー調査を行うとストレージ管理の課題としては、「データの保護」や「データセキュリティ強化」が上位に入ってきます。背景には内部統制強化の要請があり、それは国内企業のストレージ管理に対する意識や投資の変化にも表れています。これまでもストレージ管理で「安全」は重要視されてきたわけですが、この1〜2年で必須の取り組みとなってきています。

ストレージ管理の課題(出典:IDC Japan)

中小企業ではストレージ専門管理者の不足が課題

浅井 そうしたストレージに関する課題は、企業の規模によらない共通のものですか。

森山 規模の大小によらず、データ保護やデータセキュリティはストレージ管理の課題の上位に入っています。これらは企業規模によって要求されるレベルこそ違うものの共通の課題となっています。

浅井 大企業と中小企業で違いが見られる課題はありますか。

森山 最近の調査で、中小企業は「IT管理者のスキル不足」や「IT管理者自体の不足」がストレージ管理の課題の上位に入ってきています。これらは、大企業では中位以下となっているものです。一方、大企業においては、内部統制や法規制にどう対応すべきかがストレージ管理にとって重要な課題となってきています。

浅井 膨大なデータを効率良く管理し、安全に保管するストレージ =「保管庫」の考え方は、そもそも規模の小さな企業に浸透しているのでしょうか。

森山 企業の規模によってIT投資の割合を見たとき、従業員1000人以上の大企業がIT投資全体の50%を占めていますが、外付け型のディスクストレージに限ってみると、大企業の占める割合は70%に達します。つまり、中小企業にとっては、ストレージといってもサーバに内蔵されたDAS(Direct Attached Storage)の利用が圧倒的に多いということです。

 しかし、間違いなく中小企業でもデータは増えています。DASのままでは、サーバの台数が増えると、ストレージの容量だけでなく、管理すべきストレージの数も増えてしまいます。ただでさえ、中小企業はストレージ専門のIT管理者を置くこと自体が難しいのに、ストレージ管理の負担は増すばかりです。このため、データ保護やデータセキュリティといった対策を取る余裕もなくなってしまいます。

基本となるバックアップですら行われていない?!

ITmediaエンタープライズ編集長 浅井 英二氏

浅井 サーバごとにバックアップを取ることを考えただけでもたいへんですね。

森山 DAS環境では、サーバの台数が増えれば、サーバごとにバックアップを取ることが必要になります。基本となるバックアップさえ中小企業のIT管理者には大きな負担になります。そのため、バックアップが行われていないケースも出てきます。

 大企業であれば、ファイバーチャネルでSAN(Storage Area Network)を構築してバックアップ統合などを実現すれば、コストの障壁や管理者のトレーニングという課題はあるものの、バックアップの多くの問題は解決できます。しかし、中小企業でFC-SANを導入することは、コストや管理者のスキルといった点から障壁が高いと言えます。

 ストレージベンダーも中小企業市場の開拓に数年前から取り組んできましたが、単にミッドレンジ製品の廉価版を投入しただけといったケースも多かったのが事実です。コストの障壁は下げたのですが、IT管理者のスキル不足という課題は積み残したままです。このため、中小企業市場を開拓し、実績を上げることが難しい状態が続いていました。また、中小企業向けに投入されたミッドレンジ製品の廉価版は、ファイバーチャネルを利用したSAN製品が中心だっため、中小企業が導入するというよりは、実際には大企業が容量を増やす際に導入したケースも多かったと思います。

浅井 ファイバーチャネルを利用したSAN製品(FC-SAN)に対して、iSCSIを活用するSAN製品(iSCSI-SAN)も普及してきていると思います。その違いを説明してもらえますか。

森山 FC-SANは、大企業を中心にかなり普及していますが、ファイバーチャネル技術について習熟しなければなりません。これは、ストレージを専門とするIT管理者が少ない大企業でも難しいくらいですから、日常の管理業務で手一杯という中小企業には高い障壁となっています。

 これに対して、iSCSI-SANは、既存のLAN技術の延長線上にあり、習熟や管理作業の障壁が低くなります。もちろん構築済みのLANを利用することでコストも抑えることができます。中堅企業や大企業のリモートオフィスやブランチオフィスでも利用を検討すべき技術だと思います。

中小企業でもネットワークストレージの恩恵を

浅井 日本ヒューレット・パッカードも1月、iSCSIに対応したネットワークストレージ、「HP StorageWorks All-in-One Storage System」(StorageWorks AiO)を国内投入したばかりですね。

森山 DASからネットワークストレージに一歩踏み出すことによって、これまでDASでは難しかった拡張性や柔軟性という、新しい恩恵が中小企業でも享受できるようになるはずですし、StorageWorks AiOではNAS(Network Attached Storage)の機能も併せて提供します。アプリケーションやデータベースのブロックデータを共有できるだけでなく、ファイルサービスも1台で実現できるIPベースのネットワークストレージという新しいカテゴリーだと言うことができます。

HP StorageWorks All-in-One Storage System:SANストレージ(iSCSI)、ファイル共有(CIFS/NFS)、およびバックアップの機能を1台に凝縮。低価格でSAN環境が構築でき、運用管理の不安も低減されている。特に中小企業のユーザーにとって大きな恩恵をもらたす

浅井 同様の製品はこれまでにもあったと思いますが、それらとの違いは何でしょうか。

森山 StorageWorks AiOの最大の特徴は、管理を容易にしているところです。

 先ほども触れましたが、ストレージを専門とする管理者は、大企業ですら置くことは難しいものです。中小企業では、IT管理者といっても、ITシステムのすべてを面倒見なければなりません。そうしたIT管理者が、これまでストレージベンダーが提供してきたストレージ視点の管理ツールを使いこなすことは容易ではありません。StorageWorks AiOならば、ストレージ管理の専門知識が乏しいIT管理者でも、アプリケーション管理の視点に基づいた単一の管理コンソールから管理やデータ保護などが大きな負担なく行えます。データ保護機能をあらかじめ統合している点は評価に値しますし、このクラスの製品で無停止バックアップ機能を提供しているのは画期的とさえ言えます。

StorageWorks AiOが提供するアプリケーション管理の視点に基づいた単一の管理コンソール

 また、ネットワークストレージに移行する際に大きな障壁となるのが、データの移行です。StorageWorks AiOでは、Windows環境におけるベストプラクティスが盛り込まれたグラフィカルなデータ移行ツールがバンドルされており、、簡単なマウス操作で既存のDASからネットワークストレージへのデータ移行が行えます。

AiOでは、Microsoft Exchange Server 2003やMicrosoft SQL Server 2000/2005用のデータ移行ツールが提供されている。10回程度のマウスクリックで簡単に設定できる

新たな管理手法で

浅井 StorageWorks AiOのような製品の登場がきっかけとなって、今後ネットワークストレージが中小企業にも浸透していくでしょうか。

森山 ネットワークストレージを導入しましょう、と言っても中小企業ではなかなか受け入れられないでしょう。中小企業はストレージそのものが欲しいというよりは、データ保護、データセキュリティ、そしてデータ管理の効率化、という課題を解決するソリューションを求めているのです。中小企業といえども上場企業のグループ企業は、法規制などに対応して内部統制を強化していくことも必要になります。また、事業の継続性も求められています。データを失わない、すぐに復旧できる、ということがこれまで以上に必要になるのです。

 ストレージベンダーも、中小企業に対して単にストレージの容量や機能を売るのではなく、新しいデータ管理の手法を提案していくべきでしょう。

浅井 ストレージ市場の将来を占っていただけますか。

森山 ストレージ容量の伸びが今後も加速していくのは間違いありません。画像データのように、これまで企業が管理してきたビジネスデータとは違う種類のデータも増えてきます。企業のIT管理者は、さまざまなデータを管理し、保護していかなければなりません。爆発するデータに対して、より柔軟に対応できるアーキテクチャーを持ったストレージ基盤を構築することが、ストレージ管理の課題となります。容量を増やすたびにシステムを止めることも許されなくなるでしょう。

 これは、既に大容量のコンテントを扱っている一部のメディア企業や通信事業者に限った話ではありません。一般の企業も対応を迫られるようになるはずです。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年4月19日