ちょっぴりLinuxが語れるようになる基礎知識Linux通へのステップバイステップ(2/2 ページ)

» 2007年03月19日 08時00分 公開
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glibcとそのバージョン

 カーネルと同様にバージョン番号を目にするのがglibc(GNU C library)だ。

 glibcは各アプリケーションでよく使われる機能を持ったライブラリであり、ほとんどのLinuxアプリケーションはglibcに依存する。glibcの細かなバージョンによる目立った機能差はないので、一般ユーザーがバージョンによる内容の違いを逐一チェックする必要はないが、各種アプリケーションが依存するため、ソフトウェア管理において注意が必要な要素と覚えておこう。

 ソフトウェア管理において、

利用しているライブラリが変われば、アプリケーションをコンパイルし直す


というのは前提である。変更が小さく、アプリケーション側でその影響を受けない場合は、コンパイルし直さなくても良い。

 つまり、glibcが変われば、多くのアプリケーションはコンパイルし直すことになる。以前は仕様変更が大きく、互換性のなさがLinuxディストリビューションの欠点とまで言われていたが、現在は変更も落ち着き、バージョンの違いにシビアになる必要はなくなっている。また、このあたりの調整/検証は通常ディストリビューターが行ってくれるので、一般利用者がglibcのアップデートで特別な作業をすることはあまりない。商用アプリケーションなどでソースが公開されておらずバイナリを取得して利用している環境や、各自でソースからコンパイルしたアプリケーションを利用している環境で、glibcのバージョンアップがあった場合に注意しておこう。

X Window Systemの変更

 GUIの中核部分となるのはX Window Systemである。Linuxディストリビューションでは、旧来XFree86が使われていたが、機能実装にかかわる開発メンバーの対立やXFree86のライセンス変更の問題があったため、X.Org Foundationが設立されて現在はX.Orgのものが主流である。

 もともとX.Orgは、UNIXを管理するThe OpenGroup内の、X Window Systemの規格開発を行う団体で、以前から存在している。そのX.Orgと幾つかのベンダーによってX.Org Foundationが設立され、X Window Systemの開発メインストリームはX.Org Foundationに移行している。主要な協賛企業は、UNIXベンダーのHP、サン・マイクロシステムズ、IBMのほか、PC XサーバベンダーのWHQなどである。

 X.Org Foundationからの最初のリリースとして、2004年4月にライセンスの問題のないXFree86 4.4RC2およびX.Org X11R6.6をベースに、X Window System Version 11 Release 6.7(X11R6.7)がリリースされている。「X11R6」という表記は規格名でもあって混乱しやすいので、X.OrgのX11R6.xもしくは、単にXorg 6.xと呼ばれることが多い。2007年3月時点での最新版は、X11R7.2である。

デスクトップ環境

 多くのディストリビューションには、デスクトップ環境としてKDEもしくはGNOMEが搭載されている。デスクトップ環境とは、ウィンドウ操作などを実現するウィンドウマネージャやアプリケーションを共通の開発基盤で構成することによって、共通のインタフェースやドラッグ&ドロップなどの機能を提供するものである(図4)。ウィンドウマネジャーは任意のものを選べる。デスクトップ環境は必須ではないが、KDEもしくはGNOMEを導入しておくとGUI上での操作が楽になる。

図4 図4 デスクトップ環境

バージョン表記の注意

 各アプリケーションの開発は、さまざまな個人、コミュニティー、企業で進められているが、そこでのバージョン表記と、ディストリビューションに取り込まれたバイナリパッケージのバージョン表記とで意味が異なることがあるので注意してほしい。具体的には、図5のような関係になることが多い。セキュリティ対策やバグはマージしてメンテナンスバージョンをアップしていくが、機能追加はしない、一部だけ機能追加といった形である。例えば、Debian GNU/Linuxの安定版では、リリース時の各パッケージのメジャー/マイナーバージョンを基準とし、メンテナンスバージョンを上げていく。そのため、セキュリティ対策でオリジナルバージョンが上がっていてもメジャー/マイナーバージョンは変わらず、内容は実質的に同じでもバージョンが異なるということがある。ありがちなのが、セキュリティ勧告などで「対象がバージョンx.x以前」となっていた場合、バージョンナンバーだけを見て「セキュリティ対策がなされていないぞ」との誤解である。Debian GNU/LinuxやRed Hat/Fedora Coreはセキュリティ対策が迅速でアップデート情報もきちんと出しているので、内容も確認する習慣をつけておこう。

図5 図5 バージョン管理

本記事は、オープンソースマガジン2005年11月号「Linuxディストリビューションのいま」を再構成したものです。


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