「シネコン」生き残りには何が決め手になるのか?――ASP型GISで商圏分析アイティセレクト特選事例:株式会社東急レクリエーション(1/2 ページ)

シネマコンプレックス(複合映画施設)は郊外を中心に年々数を増やしている。同じエリアで別々の経営母体のシネコンが複数建設されることも珍しくなくなった。すでに集客力のあるシネコンがあるからといって、設置をためらっていては、商圏を拡大することはできない。「勝負できるロケーション」を見極めるためには、地理情報と顧客データを組み合わせて分析し、できるだけ素早い意志決定を下すことが勝負の分かれ目になる。

» 2007年03月26日 09時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

効果測定

エリア分析資料の作成のスピードが約5倍に


導入前の課題

会員情報を手作業で分析したため時間がかかっていた。持ち込み物件の商圏分析に使う人口分布などのデータを現地で集めてくる必要があった。


導入後の効果

営業企画などに使う会員情報の分析が迅速かつ緻密に行えるようになった。現地に出向かなくても、持ち込み物件の事前調査ができるようになった。


カード会員のデータをもとに企画提案

 東急レクリエーションは、映画興行を中心とした映画事業、ボウリング場やフィットネスクラブなどを運営するスポーツ・レジャー事業、不動産のサブリースなどを行う不動産賃貸事業の三つを柱に事業展開している。

 現在、なかでも力を入れているのが、「109シネマズ」というブランドで全国に14店舗を展開中のシネマコンプレックス(複合映画施設)の運営だ。いまや映画館も付加価値による差別化が必要な時代。「109シネマズ」も、ポイントカードシステムや先端のデジタルシネマ、インターネットでのチケット予約などを行い、他のシネコンとの差別化を図っている。

 こうした差別化戦略の策定や新規出店のリサーチに活用するため、同社は2005年8月にGISツールを導入。意思決定のスピードが大きく向上した。

 顧客の囲い込みのために同社が「シネマポイントカード」の発行を始めたのは6年前のこと。当時は映画鑑賞を6回すると1回割引される紙のスタンプカードだった。ただ、会員登録で集めた顧客情報は紙で管理していたため、とくに集計してマーケティングや営業企画などに活用してはいなかった。

 転機が訪れたのは、01年にNTTドコモとiアプリを使って行ったエリアマーケティングの共同実験だった。実験では1000人のモニター会員を募集して、会員にタイムサービスやプレゼント情報、映画終了の告知、さらに近接のテナントと提携した割引サービスといった情報を提供。2カ月間の期間限定の実験だったが、DMより集客効果があることが判明した。

 IT推進室シネマポイントカード担当課長の塚越康至氏は、次のように話す。

 「映画館は装置産業ですが、これからは、そこに付加価値をつけていかないと勝負できません。そこで当社では6年前から『シネマポイントカード』の仕組みを作って、さまざまな特典を付加。06年6月にはクレジット機能をつけたカードも作りました」

(株)東急レクリエーション IT推進室 シネマポイントカード担当課長 塚越康至氏

 この実験の結果を受けて、同社はポイントカード会員へのエリアマーケティング強化を決定。01年、従来の紙のポイントカードを磁気カードに変えて、会員情報を集計・分析して活用し始めた。

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