トップクラスが集結して日本ブランドの確立を目指す対「黒船ソフト」で日の丸ベンダーが企む逆襲計画の本気度

国産ソフトウェアの海外展開は、過去にも何度かあった。ただ、今進められている、ベンチャー企業などの連合体による挑戦は、従来とはいささか異なるスキームを持つ――。

» 2007年04月10日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

「協力者」を見つけ出せ

 「2006年11月初頭に中国支局を上海に開設し、すでに受注活動を開始している」と語るのは、ソフトブレーン代表取締役社長で、メイド・イン・ジャパン・ソフトウェアコンソーシアム(MIJS)の理事長を務める松田孝裕氏だ。北米と欧州での拠点開設も予定しており、将来的には東南アジア圏への進出も視野に入れている。

 海外での販売はコンソーシアムの会員企業が直接対応することもできるが、現地のディストリビューターを経由した方が商習慣上望ましい場合がある。そのため、中国や欧米の大手ソフトウェア会社と組むことも検討しているという。「まず、日本のソフトウェアの良さを理解してもらい、海外の企業へ積極的に販売してくれるディストリビューターやリセラーを見つけることが先決だ」(松田氏)

MIJSコンソーシアムのビジネススキームの概要

結集したのは各分野のリーディングカンパニー

 コンソーシアムの敷居はことのほか高い。入会金150万円、年会費120万円と高額な上、国産ソフトウェア製品を保有し、そのライセンスおよび関連製品の売り上げが全体の過半数を占めること、ある分野でトップシェアを占めることが条件だ。さらに、参加には理事の過半数の賛同が必要となる。

 「単なる仲良しクラブではないという意思の表明」という松田氏。このようなコンソーシアムの場合、トップクラスの地位にあるソフトウェアを集めることが重要と話す。そうでなければ、海外のナショナルブランドに対抗できるブランド構築は難しいからだ。

 「各分野を代表する企業が集結することで、日本のソフトウェアが優秀だということを海外に広くアピールする狙いがある。優れたソフトウェアであれば、競合同士が参加することもあり得る。コンソーシアムは各製品のシナジーを生む共通基盤であり、個別のソフトウェアが活用されるかどうかは、個々のベンダーの努力に委ねられている」(松田氏)

強い日本ブランド構築へ

 コンソーシアムでは、技術開発のための有志組織が活発に活動している。その目的は三段階に分かれる。ステップ1は、参加企業の製品間における個別製品の連携。これはすでに実現した。ステップ2は、コンソーシアム内において小規模のSOA基盤を整備し、共通インタフェース上での有機的な連携を図ること。今夏以降の実現を目指している。さらにステップ3では、SaaS提供を可能にする共同プラットフォームを構築し、共通ユーザー登録やシングルサインオン、共通課金処理などの機能を一元管理する。また、マスターの統合管理を実現し、SOA基盤をより強固にするために標準化していくという。

 ただ、業界コンソーシアムを選択したことから、課題も多い。会員企業がコンソーシアムに営業窓口的な役割の依存を強めかねないのである。参加企業間の利害関係にもバランスをとる必要がある。また、顧客に対していかに一枚岩であるかを見せることも重要だ。

 「営業的な販売協力や顧客情報のシェアなども大事ですが、海外のユーザー企業にとって何が重要かを第一義的に考える理念がある。問題に直面した場合は、その理念に立ち返えるようにしている」(松田氏)

 日本のソフトウェアが置かれた状況に、悔しい思いを抱く経営者たちが挑戦する海外進出。そこには、過去幾度となく挫折してきた同様の取り組みにはない、日本ブランド確立に向けた強固な意思がうかがえる(「月刊アイティセレクト」2月号のトレンドフォーカス「 『黒船ソフト』の占領下から脱皮を図る日の丸ベンダーが企む逆襲計画の本気度」を再編集した)。

※ 本文の内容は特に断りのない限り2007年1月現在のもの。

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