災害対策は難易度「高」のプロジェクトITトレンド・フォーラム2007レポート(1/2 ページ)

DRはいざ取り組もうとなると、難易度の高いプロジェクトとなる。技術だけでなく、人やプロセスといった点がからむからだ。日本HPが開催した「ITトレンド・フォーラム 2007」で講演した日本HP ITコンサルティング本部の鬼山氏がその難しさとコツを話した。

» 2007年05月07日 12時29分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカード(HP)は4月24日、「ITトレンド・フォーラム 2007」を開催した。同社コンサルティング・インテグレーション統括本部ITコンサルティング第一本部の鬼山浩樹グループ長が講演を行い、DRプロジェクトの難しさとそのコツを話した。DRプロジェクトは通常のシステム開発とは異なる点が多く、組織をまたがった対応が必要になる。ただ、DRシステムを構築するためのテクノロジーは進化しており、コスト的にも導入しやすくなってきているという。

難易度の高いDRプロジェクト

 「災害対策(DR)はいざ取り組もうとなると、難易度の高いプロジェクトとなる」――HPでカルビーの災害対策システムなど数多くのDRプロジェクトを担当している鬼山氏はこのように語る。通常のシステム開発に比べれば、DRはプロジェクトに関係する人間が多くならざるを得ない。それだけに計画や体制作りの段階から通常のシステム開発とは異なる難しさがあるという。

鬼山浩樹氏 日本HPコンサルティング・インテグレーション統括本部ITコンサルティング第一本部グループ長の鬼山浩樹氏

 「システム担当者だけでなく、実業務を担当しているエンドユーザー、運用を担当するオペレータという存在が非常に重要なポジションを占めることになる」と鬼山氏。DRは事業継続性の観点からすると、そのごく一部でしかない。有事の際に災害対策システムに切り替えるには、業務担当や運用系が密接に連携する必要があるからだ。「システムの切り替えはエンジニアでもできるが、その後の業務の再開については主幹が替わる」というわけだ。

 「システムに都合よくすればエンドユーザーが制約を受ける。これを受け入れてもらうだけでも大変だ」。同氏によると、DRプロジェクトではこのようなケースがよく見られるという。

 しかもDRプロジェクトはどうしてもアバウトなところから開始せざるを得えない。システム構築要件やタスクの定義もしにくい。プロジェクトのリスク管理も重要になってくる。鬼山氏は評価フェーズを必ず設定し、評価フェーズが完了した時点でプロジェクト計画を再定義し直すことを推奨する。

 このような柔らかい段階からプロジェクトがスタートするため、仕様変更も多く発生する。「災害対策のためにエンドユーザーにも業務の動きを変えてもらわなければならないこともあり、これによって要件がいろいろと変わってくる」と鬼山氏。そのためには変更管理データベースを構築するなど変更履歴を参照できるようにしておき、どのような理由で変更されたかが分かるようにしておくとよいという。

運用計画

 緊急時の運用計画についても「システム開発と膨大な作業を要する」部分となるという。切り替え運用については、参加メンバーの選定、参加のタイミング、スケジュールの定義などシステム開発のプロジェクトとは同じようにはいかない。

 切り替え作業は直接RTO(目標復旧時間)に影響してくるため、手順書やマニュアルを切り替えタスクとひも付けておく必要がある。この点でもシステムの運用管理が一元化されていると、システムごとに異なる切り替え作業を行わずにすむので、全体最適を目指すことが必要だ。

 そのほか、システムの手順書だけでなく切り替え体制や人の動き、連絡体制など文書化できるものはすべて文書化するのが望ましいという。「必要となるホワイトボードの台数やテレビなど、そこまで書き出す」と鬼山氏。

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