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» 2007年05月09日 07時00分 公開

サービスと情報の深遠なる関係:第1回 情報化がもたらした「経済のサービス化」について考える

近年の産業構造の転換とは、かつてのような単純なものではなくなっている。第一次産業が第二次産業に、第二次産業が第三次産業に移り変わっていったのとは異なり、経済全体のサービス化が進んでいるのである。その背景にあるのはもちろん、情報化だ――。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

 このところ経済産業省を中心にサービス産業に関する議論が展開されている。長い低迷期を脱しつつある新世紀の日本経済において、これからの時代にふさわしい成長戦略を描く上での重要課題として、学者や産業界を巻き込んだ議論が進められている。 議論の焦点は、サービス産業(≒第三次産業)における生産性をいかに高めるか、というところに当てられている。産業構造の転換が進むとともに、わが国でもサービス産業の比重が高まる一方で、その分野における日本の競争力や生産性が先進各国との国際比較において劣っているという事実を問題視し、その改善を今後の成長を実現する上での急務として検討しているのである。

「サービス」の科学的な革新

 経済のサービス化というとき、まず引き合いに出される付加価値の産出額や就業者数といった基本的な統計データを見てみると、日本の産業構造に占める第三次産業の比率は既に3分の2を超えている。しかし、いま課題となっている産業構造の転換は、もはや農業や製造業からサービス産業へのシフトが進むという単純な内容でないことは、だれの目にも明らかだろう。

 そして、こうした流れに呼応するように、IBMをはじめとする一部のIT関連企業の研究部門や経営工学を中心とする学会などから、ITの活用を中心にサービス産業の革新を目指す「サービスサイエンス」あるいは「サービスイノベーション」と呼ばれる考え方が提唱されている。IBMの動きは、パルミサーノ会長が中心となって2004年に発表した、米国の中長期産業戦略を提言したレポート「イノベート・アメリカ」(別名「パルミサーノ・レポート」)での実績が背景にある。このレポートでは、製造業におけるサービス化の進展と競争力の関係を分析し、ITを活用したサービス化の有効性を明らかにするとともに、サービスを「サイエンス」としてとらえる学問領域として認識し、産学連携で専門家の養成を行うことなどが提唱されている。経産省を中心とした日本の取り組みにおいても、その内容は少なからず意識されているようだ。

経済のサービス化で見えるもの

 日本のサービス産業の生産性に関して必ず出てくる問題点として、小規模事業者が多いことに起因する非効率性という課題がある。特に就業構造においてその比率が大きい小売り、外食、運輸、宿泊といった業界がその代表とされ、チェーン化による調達やリソース配分の効率化の問題が指摘されている。同じことは、病院や行政などの公共部門にもいえるだろう。

 しかしながら、この点については現在もなお大きな課題であるとはいえ、過去5年ほどの間に起きてきた構造変化の一つとして大規模化やチェーン化が確実に進んでいることは間違いない。そしてそれが実現する過程において少しずつではあるが、ほかの産業に準じたIT活用が進展していることも事実だろう。

 一方、米国の例や経産省を中心とする最近の検討でも指摘されている通り、製造業においても多くの中核的業務がもはやサービス産業といっていい業態に変ぼうしている。その根底にあるのは業務の情報化であり、その変化をもたらしたものは「IT=情報技術」にほかならない。

 経済におけるサービス化の流れをITビジネスの新しい事業機会ととらえることは、非常に理にかなったことに思える。しかしこのテーマを少し深く考えてみると、問題の本質がサービス産業の供給サイドにおける手法だけではなく、人間の感性やコミュニケーションのあり方など現在の情報技術に関連するかなり本質的な部分に深く根差していることが見えてくる(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第十五回」より。ウェブ用に再編集した)。

なりかわ・やすのり

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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