コラム
» 2007年06月01日 07時00分 公開

中国でオンラインゲームがはやる理由――中国ITビジネスの行方 (1/2)

現在では国内の常識が通用しない中国におけるソフトウェア事情。ショップ事情から見える今後のITビジネスの行方は? 事例から見る、現代版の傾向と対策を紹介しよう。

[豊田直幸,ITmedia]

北京Now!

 北京市の北東部に位置する中関村。

 清華大学、北京大学などの中国の名だたる大学が連なる学生街であるが、最近は数多くのIT系ベンチャー企業がその産声を上げる街となっている。最近はIT関連のショップをテナントとしたITビル(電脳城)が急増し、あたかも日本の秋葉原のようになりつつあるのだ。

 そうした電脳城の中のソフトウェアを販売しているショップに足を踏み入れ、試しに商品棚から幾つかパッケージを手元に取ってみると、どれも正規版にも関わらず価格は10元〜30元(150円〜450円程度)と非常に安い。ソフトウェアに関しては、日本と中国でだいぶ物価水準が異なることが分かる。

 一方、北京の西側には、馬連道と呼ばれる地区がある。

 ここはお茶の問屋街であり、茶葉を販売する問屋が何十軒と集中しているところだ。問屋街だけあって茶葉の値段も北京の中心部より数段安い。

典型的な中国のパソコンショップ。小売店の集合体という感じである(注:記事内容と写真は直接の関連性がありません)

 この地区を散策してみるとおもしろいことに気づく。問屋の種類はお茶に限らないのだ。例えば音楽CDや映画、ドラマのDVDだけを販売しているビルなどもある。ビル内にはCD、DVDが所狭しと並べており、店員によると正規版とのことだが、これも中関村のソフトウェア同様に非常に安い。音楽・映像コンテンツに関しても、日本と中国では相場はだいぶ異なっている。

「少ないことは何もないよりはよいこと」の実態

 ここまでソフトウェアと音楽コンテンツを実例として、主に小売店での状況を説明した。注目すべきは、これらのコンテンツはいずれもコピーが非常に容易になっているという点だ。

 「著作権法」、「著作権法実施条例」、「ソフトウェア保護条例」などの法律がひと通り揃っている中国ではあるが、その運用状況には問題が多い。ほとんど著作権が守られていないのが実態だ。このような実情を踏まえつつ、ソフトウェアビジネス、コンテンツビジネスを考えた場合、国内とは異なるビジネスモデルの考案が必須となるだろう。現状、そのビジネスモデルの最たるものは、「少ないことは何もないよりはいいことだ!」という標語を忠実に守ること、だと思われる。

 ポイントは、PCソフトウェアの価格付けは非常にシビアなことだ。

 ここでPCゲームを例に挙げてみよう。欧米で開発されたゲームの中国語版なども多数販売されているが、前述のようにいずれも欧米や日本の数分の一だ。海賊版よりは高価だが、明らかに安いと感じる。もし、現状の市場で欧米や日本と同じ価格付けをしたら、そのソフトウェアはまったく売れないだろう。そして、みな海賊版に流れてしまうに違いない。ただし、価格を海賊版より廉価に設定しておけば、金銭的に余裕がある人ならば正規版を買ってくれるかもしれない。

 ここで重要なのは、価格を欧米や日本と同じにすると(誰も買わなくなってしまうので)収益が何もなくなってしまうが、海賊版より少しだけ高めに設定しておけば、収益は少しではあるが計上される。つまりここでは「少ないことは何もないよりはよいことだ!」という標語がそのまま適用されているのだ。

 音楽CDやテレビドラマのDVDも状況はまったく同じである。最近では、中国当局の取締りが非常に厳しくなり、海賊版のCDやDVDを見かけることがなくなった。しかしそれに反比例するように、繁華街の道端などで海賊版のCDやDVDを販売する露天が増えているのも事実だ。

 道端の露天でCDやDVDを買うと、だいたい3元から5元である。そう考えると、正規版の10元〜30元という価格は非常に微妙な値段付けであることが分かる。

ソフトウェアを社外に出してはならない

 中関村の電脳城を歩いても、ハードウェアを販売しているショップを多く見かける。

 一方で、ソフトウェアを扱うショップは少ないのだ。また本数自体も、日本のショップに比べるとかなり少ない。これと対称的なのが、オンラインゲーム向けの課金プリペイドカードである。日本では想像できない程度のオンラインゲーム向けの課金プリペイドカードが売られている。日本と比較してオンラインゲームの普及度が相当高いのである。世界的に見てオンラインゲームの人気が非常に高い、というのも原因の1つだと思う。

 しかし、中国のソフトウェアハウスが、いかに強力なプロテクトを講じてもすぐにコピーされてしまうスタンドアロンのゲームよりも、「理論的にコピーされない」オンラインゲームを開発の中心に据えている、というのが最大の理由だと思う。

 ただし「理論的にコピーされない」オンラインゲームではあるが、実際にはコピーされることもあり得る。例えば、オンラインゲーム会社に勤務する社員が会社でゲームをコピーし、そのコピーされたオンラインゲームを使って自分の会社を立ち上げる場合などがそれに相当する。

 日本からオンラインゲームを中国の会社に供与することは少ないだろうが、同じく「理論的にはコピーされにくい」携帯電話向けのゲームを中国の会社に供与することはあり得ると思うので、その場合には要注意、といえる。やはり、「ソフトウェアを社外に出してはならない」という原則に従うべきだろう。

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