「学校の持つ可能性を最大限に引き出すサポートに注力する」――マイクロソフト代表執行役&COOの樋口泰行氏はこのように述べ、「『ひと』を育て、生かす次世代の教育機関のありかた」について語った。
「わたしが今年3月にマイクロソフトに入社した背景には、『Plan-J』という取り組みへの共鳴があった」――6月8日に開催された教育関係者向けのイベント「New Education Expo 2007」において、マイクロソフト代表執行役&COOの樋口泰行氏はこのように述べ、「『ひと』を育て、生かす次世代の教育機関のありかた」について語った。
Plan-Jは、2年前の2005年7月、マイクロソフトの代表執行役社長に就任したダレン・ヒューストン氏が、今後3年間の企業活動の基盤となる経営方針として掲げたもので、「日本における投資の拡大」「企業およびコンシューマにおける技術革新の促進」「政府機関、教育機関、および産業界とのより深く明確なパートナーシップ」という3つの柱で構成されている。
樋口氏は、このPlan-Jについて説明した後、Plan-Jの一環として2005年11月に発表されたアカデミックの分野における取り組みの柱として掲げられた「産学連携による先端技術の研究の強化」「ソフトウェアを通して学生の可能性を拡大」「教育におけるIT活用の推進」について解説、国内人口減少による学校運営の難しさなどにも触れた。この講演が行われた同日、マイクロソフトは教育関連向けトータルICTソリューション「エデュステーション」を発表しており(関連記事参照)、教育に対する具体的な施策を明らかにした。樋口氏はエデュステーションを展開する背景について説明し、「学校の魅力を向上させるため、『デジタルワークスタイルの向上』『学校の持つ可能性を最大限に引き出す』という2つの柱を立て、日本に根ざした形で真剣に取り組みんでいく」と講演をまとめた。
上述した「教育におけるIT活用の推進」について、その具体的な施策も一部示された。公共インダストリー統括本部プログラム&マーケティング部部長の緒方麻弓子氏は、高等教育機関向け施策として、各大学の情報関連責任者が情報交換する「大学CIOフォーラム」、東京大学の全学的教育情報化プロジェクトである「TREEプロジェクト」の一環として「マイクロソフト先進教育環境寄付研究部門(MEET)」を設置したことを紹介した。
同じく初等中等教育機関向けとして、教職員の教育研修などIT環境整備を行う「小中高学校向けICT推進プログラム」を実行すること、PCを有効利用するために2007年末まで「学校向けWindows98/Windows MEインフォメーションデスク」を設置することも明かした。
そして、これらの施策も含めて、メディア教育開発センターなどと協力して次世代の教育環境整備のための実証実験や開発を行う「NEXTプロジェクト」を推進するという。
今やMicrosoftの不倶戴天の相手とも言えるGoogleも、教育機関向けのプログラムを提供している。この4月には、日本大学との間でSaaS形式のアプリケーションスイート「Google Apps Education Edition」の提供に関して契約を締結した。
包括的なソリューションを提供するマイクロソフトも負けてはいない。マイクロソフト公共インダストリー統括本部文教営業本部の反町浩一郎本部長は、「教育機関の皆様へマイクロソフトからの新しいご提案」と題し、エデュステーションの「Learning Gateway」「セキュアデスクトップパッケージ/セキュアシステムパッケージ」「Windows Live@edu」「業務アプリケーション基盤パッケージ」について、PCによるデモンストレーションやビデオ映像を交えながら解説した。
特に、独自ドメイン設置とアカウント発行によって各種サービスを提供する「Windows Live@edu」については、米William Carey大学のケースをビデオ映像で紹介した後、日本体育大学、日本体育大学女子短期大学部、杏林大学が採用を決定したことを報告した。また、Windows Live@eduの一例として行った「大学コミュニティー連携SNS」のデモンストレーションでは、3D空間に配置されたアバターによってコミュニケーションする様子などが示された。
MicrosoftかGoogleか。両社のサービスは包括的かアウトソースかということに極言できるのかもしれない。今後の学校の在り方について、教育機関は両社について今以上に大きな関心を示すことになるだろう。
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