中国でERPアプリケーション導入を成功させる方法Oracle OpenWorld Asia Pacific 2007 Report(1/2 ページ)

SVA-NECでは、工場設立と同時にERPの稼働を開始した。パッケージによる導入が功を奏し、早期の活用が実現したという。

» 2007年08月04日 08時07分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

 Shanghai SVA NEC Liquid Crystal Display(SVA-NEC)は、中国大陸で初めて第5世代の液晶パネルのガラス基板製造ラインを稼動させた企業だ。名前からも分かるように、中国のSVAグループと日本のNECの合弁による、TV・PCモニター向けの液晶パネル製造会社である。この液晶パネルの製造事業は、上海市の重点プロジェクトとして2003年に発足したもの。現在は、ガラス基板を工場で製造し、そのほかの主要部品を外部から調達して液晶パネル装置に組み上げ、液晶モニターを販売しているDellやHPなど世界中のたくさんのメーカーに供給している。

液晶パネル SVA-NECが生産している液晶パネル装置

 このSVA-NECでは、2004年10月からの工場の主生産開始と同時に、Oracle E-Business Suiteのサプライチェーンおよび生産管理アプリケーションが稼動開始している。

 「SVA-NECでは、上海でナンバーワンのITシステムを目指そうという気持ちでやっている」

 NECから出向しSVA-NECで情報システム部門の責任者を務めている吉澤俊幸氏は、自ら手がけた生産管理のシステムに対する意気込みをこのように語る。実際にラインを自動化してスムーズに製造を行うためには、きちんとした生産管理のITシステムが不可欠だった。吉澤氏によって出来上がったシステムは、2006年2月には上海市情報化優秀プロジェクトとして表彰を受けるほどの仕上りになった。

日本流のやり方を捨てERPパッケージをそのまま活用

 吉澤氏は、サプライチェーンシステムの導入経験はなかったが、半導体製造のMES(Manufacturing Execution System)の中国合弁企業での導入経験があった。そのため、中国でゼロから生産管理システムを作り上げて行くこと自体には、特に不安はなかったという。

 「優秀なユーザーやIT担当者がいることが前提の日本流は、中国では成功しません。中国では、できる人がいないというところから始める必要があります」(吉澤氏)

 中国でERPを導入するには、まずはチームビルディングが大切だと吉澤氏は言う。ERPのような管理系のシステムの場合は、日本から優秀な技術者を連れてくるよりも、現地の状況を把握しており、かつ同様の経験を持つ人材を集めることが重要だという。実際、SVA-NECのプロジェクトでは、台湾Oracleのコンサルタントをアサインしてプロジェクトが進められたという。

 また、日本的なきめ細かい構築はできないため、パッケージという実績のある形で持ってきて、それをなるべくそのまま使う方針が良いと吉澤氏は言う。今回のケースでは、システムの構築と会社事業のスタートが同じということもあり、現地で採用されている社員の多くは業務が先にありきではなく、むしろERPパッケージを用いて業務を勉強するといった状態だった。

 「まったくの素人でも使えるようにするところに気を使いました。そのためユーザー教育を重視し、システムに慣れてもらうために6カ月間の教育期間を設けました」(吉澤氏)

 今回のERP導入では、まさにラインが稼動し工場として生産が行われていることがその効果だと吉澤氏は言う。ERPシステムが構築できたからこそ、工場の会計、調達、販売という業務がきちんと稼働できているのだ。稼動から2年後の2006年には、液晶ディスプレイの値崩れから赤字も経験した。その際には、ERPに蓄積されたデータを活用して不良在庫を1/3に圧縮することもできたという。とにかくERPをカスタマイズすることなく、まずはスケジュールに間に合うように導入し、利用していく中で経験値を増して使いこなしていくというのが、中国でERP導入を成功させる1つの方法と言えるだろう。

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