未来を見据えるBEAシステムズ(1/2 ページ)

BEAでCTOを務めるロブ・レビー氏は、「革新にフォーカスすることがますます重要になる」と話す。

» 2007年09月15日 07時00分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 ロブ・レビー氏は、BEA Systemsの取締役副社長と最高技術責任者(CTO)を兼任し、同社の技術戦略およびビジネス戦略を連動させる取り組みを率いている。eWEEKのシニアエディターであるダリル・K・タフト氏が、サンフランシスコに新設されたBEAの社屋に同氏を訪ね、同社の今後のテクノロジーについて話を聞いた。

――来年から再来年にかけて、BEAはCTOのオフィスに関してどのような計画を立てているのですか。

レビー氏 CTOオフィスでは、これからの傾向を予測し、そうした予測をBEAが実行すべき戦略に変えていく仕事をするのが、基本中の基本です。水晶玉を持った占い師、それがわたしたちなのです。もっとも、そうした占いは、複数の技術戦略として具現化されるわけですが。

 CTOオフィスが扱っている分野の1つに、国際的なアーキテクチャの問題があります。わたしの配下には、「コーポレートアーキテクチャグループ」と呼ばれる組織があり、BEAのチーフアーキテクトのポール・パトリックがこれを統括しています。パトリックは、BEAが直面している技術実装問題全般に目を光らせる、現場監督というわけです。

 「microService Architecture(mSA)」(『BEA SOA 360』プラットフォームのアーキテクチャ)も、この分野に入ります。ここではしばしば、BPEL(Business Process Execution Language)や、各製品ラインにBPELを実装する方法などのような、技術的な問題が取り組みの対象となります。製品ラインの一部はBEAが独自に開発しましたが、買収によって獲得したものもあるため、だれがいつ何に取り組んでいるのかを把握し、ばらばらな製品に一体感を与える方法を考えていくことが必要なのです。

 さらに、新興技術および標準に特化したグループもあり、同グループのスタッフは、EclipseやOASIS、OMG(Object Management Group)などの執行部にも加わっています。彼らのいちばんの仕事は、影響力を行使することです。標準化団体の動向を見守り、顧客にとって重要と思われるものを特定し、リーダーシップを発揮すべきか、単に流れに乗れば良いのかを見極めなければなりません。普及活動に協力したほうが良い標準もあれば、準拠すれば良いだけの標準もあるのです。こうして、積極的に関与していくことを決めたとしますよね。するとその次は、製品の技術を変更できるよう、当該の標準をなるべく早くエンジニアリングチームへ戻します。エンジニアリングチームは、製品に物理的な変更を施す関係上、常に12〜18か月ほど先に動き始めなければならないので、この一連の過程は注意深く進めなければなりません。

 CTOオフィスは、ほかにも会社を代表する「伝道者」の役を担っています。アナリストやマスコミ、顧客と対話をするのです。対外的な活動をする機会が非常に多く、長ければ勤務時間の60〜65%を、顧客や社外の人々と話をすることで費やしています。各種の調査を担当するのも、CTOオフィスのスタッフです。当時は消費者用のお遊び技術ととらえられていたWeb 2.0の実態を調べ、Web 2.0が企業にどのような影響を与えるのか、またそこからメリットを得るには何をしたらよいのか、2年前にリサーチを行ったのも彼らでした。彼らは、単に流行している製品だけではなく、潮流に乗ったテクノロジーに関する専門知識を生かして、その分野における大黒柱的存在になっていくでしょう。

 新たな技術を選び出し、研究施設での本格的な実験を行って結果を出すといった仕事をしているのは、技術革新および育成チームです。ある分野の1つの機能に目をつけ、ほかの製品の機能と融合できるかどうかを探り、最終的に新しい製品を開発しています。新製品は、こうやって生まれているのです。

 最後に、わたしが今日まさにしていた仕事を紹介しましょう。CTOオフィスには、ベンチャーキャピタル(VC)企業パートナーと同じような任務があります。彼らが彼らの資金を技術に投資しているように、われわれもわれわれの資金を技術に投資しているのです。わたしは、かなりの時間をまとめて取り、VCコミュニティーとの対話に充て、彼らが今現在取り組んでいるものや、重要視しているものについての情報を集めています。買収候補としたり、提携を結んだりするときに備えて、企業のポートフォリオの研究も怠らないようにしています。

――今はどのような取り組みに力を入れているのですか。

レビー氏 イノベーションに重点を置くことが、これからさらに大切になると思っています。

 CTOオフィスの次の焦点もやはりイノベーションに関係していますが、単に技術革新を実現するだけでなく、イノベーションを生むプロセスを確立したいと考えているのです。

 例えば今は、社内におけるアイディア育成プログラムを正式に立ち上げようとしています。エンジニアを日常的な業務から6〜12か月間ほど解放し、何らかの製品の試作品やコンセプト実証物の開発に取り組んでもらうのです。技術革新が(製品開発チームの)内部で生まれにくいのは、エンジニアの大半が明日にでも仕上げなければならないコードを抱えており、エンジニア部門の上司も「本当は昨日これが欲しかったんだ」などと口にするからです。これでは、将来の製品に応用できる、画期的な発明やコードを開発する余裕はありません。

 今日の市場では、大規模な整理統合が進んでいますね。トレンドを予測するなら、流れが穏やかなときの方が簡単です。ですが、市場が統合されつつある場合は、それまでは別個だった2つのものが1つになるのですから、右に行くか左に行くか、いずれにしろ大きな分かれ目がやってくると考えます。

 OracleがアプリケーションベンダーのPeopleSoftを買収するなら、ほかのアプリケーションベンダーにも食指を動かすのはごく当然の流れです。アプリケーションを手に入れることが、Oracleの目的なのですから。CTOオフィスとしても予測が難しくなるのは、企業がその時に取り組んでいる事業とは直接関係のない企業に手を伸ばし、買収を試みるときです。

 わたしが今、強い興味を持って追いかけているのは、Salesforce.comが次に打つ一手です。Salesforceのみならず、新しい分野に参入しようとする風潮が、中堅企業の間にあるように思えます。SalesforceやGoogleをはじめとする若い企業が、そうした方向を目指しています。彼らの製品はミドルウェアプラットフォームとは言えませんが、プラットフォームの一種だというのは確かです。Salesforceは、独自のアプリケーションプラットフォームをリリースしました。Googleも、「widget」というミニアプリケーションに対応するプラットフォームを開発しており、エンタープライズ向けのアプリケーションも製作しています。Yahooには「Pipes」がありますね。これから2〜3年間は、アプリケーションの配信や開発に関するトレンドがおもしろい動きをしそうです。

 今後登場するであろうあらゆるモデルに対応可能なソフトウェアおよびサービスが、大量に求められるようになるでしょう。何が主流になるかについては、各人がそれぞれ少しずつ違った見解を持っているはずです。

 コンポジットアプリケーションの構築という新たなパラダイムを実現するとともに、おおまかに「Webアプリケーション」と呼ばれているものを使用している、何十万人もの顧客をサポートし続ける方法を、われわれは検討していく必要があります。Webアプリケーションが今やレガシーアプリケーションとして扱われている点は、非常に興味深いですね。B2BやB2CといったWebアプリケーションの第一波は、CIOに言わせるとすでにレガシーアプリケーションなのです。メインフレームアプリケーションだけがレガシーの時代ではなくなりました。しかし、今度はこれらのレガシーアプリケーションを、コンポジットアプリケーションと連係させなくてはなりません。そんなわけで、新パラダイムの実現と既存アプリケーションのサポートの両方に取り組む必要があるのです。

――それを達成するための手段については、何か考えがありますか。

レビー氏 ええ、いくつか。前に会話をしたとき、(ITという方程式における)人間の存在に対するわたしの考えを話しましたよね? 以前は効率性の問題と同義だったこのテーマは、今後ますます重要になるでしょう。エクストリームプログラミングやデータセンター管理などのITでは、いかにしてプロセスを効率化するかという点に主眼が置かれていました。現在、効率化はある程度実現できています。IT業界がこれから足を踏み入れようとしているのは、人間の行動パターンを型にはめるのを止め、自由に動けるようにするにはどうしたらよいのかという、人間の問題を考える段階です。そうした問題を考えるのを厭い、システムの外側へ押しやるのではなく、意識的に考えをめぐらし、システムの内側へ取り込んでいくのです。

 例えば、重要だと思われる変更をアプリケーションに施したとしても、それはアプリケーション開発そのものではありません。それは、コンポジットアプリケーション構築という枠組みの中でアプリケーションを開発し、コラボレーションを実現するプロセスの一端に過ぎないのです。では、コラボレーションはどうやって実現するのでしょう。

 われわれはつい先頃、IT組織の統制や管理の下に限るが、自由に「何かをやってみたい」と望む社員の基本的な行動パターンを把握できる、企業向けのソーシャルコンピューティングツールを発表しました。これでIT部門は、いつものようにインスタントメッセージで「そんなことは無理だ」とユーザーの要望を却下する代わりに、「ITを安全にコントロールするための一定のガバナンス、一定のセキュリティ対策、一定のポリシーの下でなら、ポータルに新要素を追加してみてもよい。ITの管理に穴を開けない条件で、Web 2.0を試してみることを許可する」と言えるようになるのです。

 BEAの「Pages」「Ensemble」「Pathways」はそれぞれ、ポータル内でのマッシュアップ開発、widgetの作成、タグ付けおよびwiki、RSS、ブログの利用という3つの分野をカバーする製品です。最後にこれらをひとまとめにすれば、1つのマッシュアップが出来上がる仕組みです。

 こうしたコンセプトは、2年前から頭にありました。

 さまざまな要素からコンポジットアプリケーションを作れるようになったなら、その次に取りかかるべき大物は、ビジネスインテリジェンス(BI)と仮想化だと考えています。われわれは約1年前に、コンポジットアプリケーションの次に来る波は、ソーシャルコンピューティングと、その中身を示すメタデータになるだろうと予想していました。

 BEAは昨年、サービス資産の現状に関するメタデータを扱う製品を買収で手に入れ、「AquaLogic Enterprise Repository(ALER)」と改名しています。ALERはわれわれにとってきわめて重要な製品でして、これからリリースする製品は、どれもALERと連動するものになるでしょう。人々はガバナンスを求め、以前は扱えなかったものを扱う必要に迫られると、われわれは主張してきました。それが可能になった今、次は複雑なイベントを処理する機能がほしいと、人々は訴えるようになりました。それを手に入れたら、今後はメモリ上キャッシングやリアルタイムバッファ分析、リアルタイムBI、リアルタイム仮想化などが必要になるのでしょう。

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