このような細かい使い勝手の改良だけでなく、Winter '08では新たに2つのアプリケーションが追加される。その1つが「コンテンツ管理」である。これは、ビジネスの現場で扱われるデータのうち、85%以上を占めると言われる非構造化データをSalesforce.comで管理するためのアプリケーションだ。
「Salesforce content」を選択すると、Workspaces、Content Search、Subscriptions、Contributeという新たな4つのタグが表示される。非構造化データのコンテンツを登録して共有できるようにし、それを容易に探し出せるようタグ情報をコンテンツに付加する。そして、ユーザー同士のコミュニケーション機能として、コンテンツに対し評価を加えることができるのだ。これらの機能により、単に最近登録された順にコンテンツの検索結果を表示するだけでなく、ダウンロードされた回数などの指標に基づいて情報を探せるようになる。
また、1度登録されたコンテンツについては、アップデートされるたびにその情報がメールで届くような設定も行える。「これらの機能により、動的に非構造化データを管理できるようになり、従来データを探すのに費やしていた何十時間もの無駄は必要なくなる」とフー氏は言う。
追加されるもう1つのアプリケーションは、「イノベーションの管理」だ。これは、2006年からユーザーへのサービス機能として利用されているidea exchangeを、会社や組織で活用するというもの。「Salesforce ideas」は、自社の従業員、顧客、パートナーのアイデアをビジネスに生かす機能だ。idea exchangeと同じ技術を、セールスフォース・ドットコムのアプリケーションとして利用できる。アイデアを登録し、それに投票しコメントをすることができ、新たなアイデアについて会話しながら評価、共有して考えていくことができる。これにより、「仕事のやり方が大きく変わるだろう」とフー氏。
ここで、DellのCTOであるケビン・ケトラー氏が登場し、Dellが顧客と対話するために利用している「Dell Idea Storm」の紹介が行われた。ここでは、1日に300近い顧客との対話がすでに行われており、製品の戦略に大きな影響を与えているとのことだ。1つの例として、Linuxを搭載したデスクトップマシンの要望があり、Idea Stormの活用で短期間でこれを実現することになったという。以前であれば、こうした要望が顧客にあったとしても、その情報を受け取って社内で検討するという流れでは、現実化するまでに多くの時間を必要としたはずだとケトラー氏は指摘する。
また、このIdea Stormのもう1つの成果として、新たなタブレットPCの開発がまさに今、進行中だと紹介された。タブレットPCにどんな機能が求められているのか、技術ありきで機能が決まるのではなく、要望を機能として反映しているという。そのため、重量もきわめて軽いものとなり、指でもペンでも扱えるインタフェースとなった。さらに、営業担当者などが屋外で利用するために、外光でも見やすいディスプレイを搭載するという。Idea Stormでこのような機能の方向性を短期間で決めることができる結果、素早い製品開発が行えたとしている。
Salesforce ideasは、顧客の声はもちろん、自社の従業員の声を聞いたりビジネスで協業するパートナーの声を聞くというように、用途は広いものだとフー氏は説明する。今後のSalesforce.comの方向性として、プラットフォームのサービス化がより色濃くなっていくのは間違いないが、SaaSのアプリケーションを充実させて顧客の支持を得る努力も続けていくという。
同社が対象とする領域が広がっている中、「salesforceという社名を変更するのか」という質問がセッション後のQ&Aで飛び出したが、「名称を変える時期はいつかは来るかもしれないが、当分の間は名前を変えるつもりはない」とベニオフ氏は断言する。むしろ、CRMのSaaSベンダーとしてプラットフォームも提供していることが、ほかの競合との差別化要素の1つなのだという。
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