敗者復活したチームを加えて行われた準決勝、そして決勝戦では、予選と比べると石垣も大きくなるなど、より高度なものとなったが、選手たちが心血を注いだプログラムの前にはさほど問題ではなかったようだ。なお、地元の津山高専は残念ながら予選敗退、敗者復活でも思うように実力を発揮できず準決勝に進めなかった。
決勝戦に進んだのは以下の6校。なんと、予選から勝ち上がってきたのは、沖縄高専と広島商船高専の2チームのみ。残りの4チームは1度は破れはしたものの、敗者復活戦から勝ち上がったチームである。
高専名 | チーム名 |
---|---|
宇部高専 | オレンジ |
高知高専 | がき☆すた |
沖縄高専 | テトラポッター ピノコ |
鳥羽商船高専 | TOKATORA!! |
広島商船高専 | 石垣名人 |
茨城高専 | イッツマイティ 一日一善一心 |
2002年に設立されたばかりの沖縄高専は2、3年生のみで編成されたチームだが、その“若さ”が優勝を勝ち取るのか、それとも某アニメのキャラよろしく団長腕章を腕に、「攻撃こそ最大の防御なり」と言わんばかりの攻めを見せる湯浅優香さん率いる茨城高専か、予選ではいまひとつ力を発揮できなかったものの、敗者復活戦、準決勝と驚異的なスコアでほかのチームを圧倒した宇部高専か、はたまた……。いずれも決勝戦まで上がってきただけに甲乙付けがたい実力を備えるチームによる最後の戦いが始まった。石垣の面積は予選のときと比べて1.5倍以上にまで拡大している。
7回行われた入札で、各チームとも順調に落札しているように見えたが、実際に組み上げていく段階ではわずかながら差がつき始めていた。はた目にも宇部高専は石垣の埋まり具合がほかのチームと比べても頭1つ抜きんでていたが、高知高専、広島商船高専、茨城高専は、石が設置されていない大きな空白があるものの、それ以外はかなり埋まっている。一方で、沖縄高専や鳥羽商船高専はところどころに空白が生じており、トータルでは結構な数になっていそうだった。
「ここまで」と司会者が終了を告げたとき、宇部高専は確実に勝利を予感していた。そして、少しの後に示された結果は、彼らの予感が正しかったことを証明してくれた。
壇上では茨城高専の湯浅さんが今にも泣き出しそうな様子でいたのが印象的だった。同チームは、残りポイントから考えても、あと1つくらいの石は落札可能であったはずが、なぜかそれをしなかった。勝負の世界で「たられば」の話は禁物ではあるが、そうしていれば優勝はかなわないとしても2位にはなっていたはずだ。記者の見る限り、入札可能な回数を見誤っていたように感じた。入札のオペレーションを担当していたのが湯浅さんだったため、彼女の様子は、もしかするとそれを悔いてのことだったのかもしれない。すべてのチームにドラマがあることを再確認した瞬間だった。
優勝した宇部高専の木村照隆さんは、「すべての対戦履歴は見られるようになっているので、それを取得して落札履歴を見ていると、序盤から大きな石と小さな石という両端から落札されていく傾向があるようだった」と話しながら、それを考慮しつつ、あらかじめ最適なパターンを計算。その配置とそのために必要な石を示した表を示しながら、「当然落札できない石も出てくるわけで、石垣上部のあたりは競技中に自分たちで最適な配置を考えました。それが“マニュアル最適化”。彼我の戦力差は人間も含めたシステムの違いといえるのかも」と振り返る。
ある大会関係者はこう話す「今、高専って実は熱いんですよ」――大会前なら聞き流していたであろうこの言葉も、大会を観戦してみると、うなずけるところがある。ひたむきに、そして楽しんで高いレベルのプログラミングに熱中する彼らに話を聞くと、「自分のやっていることなんてたいしたことありませんよ」と笑って返されることが多かったが、おそらくは自分たちがやっていることのすごさに気がついていないのかもしれない。世に出てはじめて、それがすごいことであることに気がつくのだろう。そんな技術や能力が高専には存在する、そう思わずにはいられない高専プロコン。今大会に参加した彼らや彼らの意志を受け継ぐ後輩の手によって、来年の高専プロコンはさらに白熱するのだろう。
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