PostgreSQLの反撃、採用拡大を目指しアピール

最近では、SonyやAppleなどの企業がPostgreSQLベースのソリューションを使用し始めている。これらによって知名度が上がっているが、さらに追い風となっている事情には何が。

» 2007年11月07日 19時15分 公開
[Brian Prince,eWEEK]
eWEEK

 オープンソースのデータベースサーバ「PostgreSQL」は、現在普及している「MySQL」の陰に隠れているものの、徐々に移行ユーザーを獲得しつつあると、支持者らが主張している。

 開発が始まった1980年代以来、当時は「Postgres」と呼ばれていたPostgreSQLは、長い時間をかけて技術的な進歩を遂げてきた。支持者らは、今日のPostgreSQLは十分な先進性を備えた、開発者の利用に耐えうるものであり、プロプライエタリ製品に取って代わる安価なオープンソース製品の代表格となったと述べている。

 10月に発表された、「Independent Oracle Users Group」の会員226名を対象にした最新調査結果によれば、オープンソースおよび「Express」版データベースを使用している回答者の74%がMySQLユーザーである一方、PostgreSQLを利用しているのは20%だという。2006年のIOUGによる調査では、PostgreSQLを使っている割合はわずか9%とされていた。

 メリーランド州コロンビアのOmniTI Computer Consultingでデータベースアーキテクトを務めているロバート・トリート氏は、「どのような市場であっても、すでにシェアを確立しているソリューションを追い落とすことは極めて難しい。IBM、Oracle、Microsoft、MySQLなどの商用ベンダーはいずれも多くのシェアを獲得しているが、今日のPostgreSQLはうまく軌道に乗っていると考えている」と話した。

 PostgreSQLで第一の貢献者と考えられているトリート氏は、同製品の成長を支えている要素として、柔軟性の高いライセンス体系と、コスト削減を意図した企業によるオープンソースソフトウェアへの移行志向を挙げている。また、SonyやAppleといった技術企業がPostgreSQLベースのソリューションを使用していることが知られるようになり、知名度が上がったのもプラスに働いたという。

 Forrester Researchのアナリストであるノエル・ユーハンナー氏は、商用のクローズドソースデータベースと比べ、オープンソースデータベースの採用率は全般的に上昇傾向にあるとした。新規ライセンス、ソフトウェアメンテナンスおよびサポート、コンサルティングサービスなどを含むオープンソースデータベース市場の規模総額は約6億5000万ドルに達すると、同氏は見積もっている。

 Forresterが最近実施した調査では、自社の環境に少なくとも1つはオープンソースデータベースがあると答えた企業が32%に上っており、2003年の約11%から大きく躍進したそうだ。

 「オープンソースデータベース導入事例の大半がMySQLに関係している状況は、今でも変わっていない。PostgreSQLの採用も増えてはいるが、最近になるまで、同ソフトウェアを商用としてサポートするベンダーが出てこなかったのは大きな痛手だ。PostgreSQLの導入は、常にコミュニティーが中心となって進めてきたのである。そうとはいえ、EnterpriseDBやSun MicrosystemsがPostgreSQLを後押しするようになり、ある程度の道はついた。もちろん、採用をさらに促進するためには、まだまだやるべきことは残っている」(ユーハンナー氏)

 自社の「Advanced Server」製品にPostgresを実装しているEnterpriseDBは、PostgreSQLの24時間技術サポートおよびサービスやトレーニングを専門家に提供しているプロバイダーとして、これまで市場を牽引してきた。

 PostgreSQLコミュニティのリーダーであり、EnterpriseDBの上級データベースアーキテクトでもあるブルース・モムジャン氏は、「PostgreSQLの先進的な技術特性とすぐれた拡張性を評価し、EnterpriseDBは同製品を選択した。使いやすさという点では、(PostgreSQLは)MySQLに引けを取らないと自信を持っている」と話している。

 「組織的な採用に関しては、PostgreSQLは商用データベースからの乗り換えユーザーを数多く獲得している。一方で、MySQLはほとんど新たなWebアプリケーションと言ってもよい存在になった。(PostgreSQL)のユーザー層は、例えばNational Weather Serviceのような膨大なデータを扱わなければならない企業や、利益幅の薄い企業が大半を占めている」(モムジャン氏)

 オープンソースデータベースの一般的な採用を促進するためのカギは、これまでと同じく、コストメリットやベンダーサポートの充実、さらにはツール、アプリケーション、サービスといったエコシステムの拡大であると、ユーハンナー氏は指摘した。また、移行の手間や、トレーニング、移行、インテグレーションにかかわる長期的なROI、管理問題などが、普及を阻む原因となっているという。これに加え、セキュリティやパフォーマンスといった懸案事項もまだ解決されていない。

 「オープンソースデータベースは無料だが、だからといってコストが一切かからないわけではない」(ユーハンナー氏)

 トリート氏は、現段階のPostgreSQLには、サードパーティアプリケーションや教育用文献および書籍の数が少ないなど、ほかの製品が備えているユビキタス性が欠けているが、転機は間もなく訪れるだろうと述べた。

 「PostgreSQLの利用者が増え、PostgreSQLを利用していることを公言するようになれば、本格的な雪だるま効果が現れると予想している」(トリート氏)

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