サーバといえば、インテルベースのWindowsサーバが情報システムの主役。だが、2007年10月に登場したLeopard Serverには、IAサーバとは別の指向性が見えてくる。
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サーバといえば、ほとんどの人がインテルベースのIA(Intel Architecture)サーバとWindowsを思い浮かべるだろう。Windowsサーバの歴史は、1994年にリリースされたWindows NTに始まる。まさに、PCサーバの黎明(れいめい)期の幕開けである。初期バージョンのWindows NT 3.1は、当時サーバの世界で大きな力を持っていた旧DEC(Digital Equipment Corporation)のエンジニアを引き抜き、特別開発チームを編成して作り上げたという話は有名だ。
だが、サーバの歴史を語る上で見過ごせないのが、Mac OS X Serverという存在だ。大学などの教育機関やデザイン、設計、広告、出版などのクリエイティブ系オフィスを中心に着実にシェアを伸ばすこのサーバは、実はIAサーバにはないいくつかの魅力的な機能を備えている。2007年10月26日に発売された「Mac OS X Server v10.5」(以下、Leopard Server)は、この魅力にさらに磨きがかかっている。
このサーバの歴史をひもとくと、世界最初のWebサーバとして使われたワークステーション「NeXTcube」にそのルーツを見ることができる。今回は、そんな“もう1つ”のサーバの歴史を振り返ってみることにしたい。
Webサーバの父として知られるティム・バーナーズ・リー氏は、1990年、スイス・ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)で世界で最初のWebサーバとWebブラウザを構築した。「WorldWideWeb」という名前は氏が考案したもので、後にWorld Wide Web Consortium(W3C)を設立。WWWの仕様や標準技術の策定・開発に尽力した。
バーナーズ・リー氏が使用したコンピュータは、NeXT Computerの「NeXTcube」というマシンだった。NeXT Comupterは、当時アップル(Apple)のCEOだったジョン・スカリー氏によってアップルを追放されたスティーブ・ジョブズ氏(アップルコンピュータ創業者、現アップルCEO)が設立した会社で、NeXTcubeは最初のワークステーションだった。まだ、PCサーバが存在しない時代、NeXTcubeは先進的なUNIXマシンとして、少なからずヘビーユーザーを生んだ。これを開発用&WWWサーバに選んだバーナーズ・リーもその1人だった。
このマシンこそ、現在のMac OS X Serverの原点とも言える存在だ。搭載されているOS「NEXTSTEP」はMachというマイクロコアカーネルが採用され、OSやアプリケーションは独自のObjective-C言語で書かれていた。ユーザーインタフェースはMacintoshに通じる洗練されたマルチウィンドウGUIを持ち、Dockというランチャーエイリアスの仕組みも備えていた。これらは、現在のMac OS Xに受け継がれたものばかりである。NexTcubeはキヤノン販売を通じて日本でも販売された。
だが、NeXT Computerは決して商業的に成功しなかった。製品が非常に高価だったことが最大の原因だ。NeXTcubeのマグネシウム合金を使ったぜいたくな筐体のデザインは、非常にユニークで高級感あふれるものだったが、そんなジョブズ氏の物づくりのこだわりが災難を招いたともいわれている。だが、そのNeXTのコンセプトがやがて、Mac OS Xという形で花開くチャンスがやってくるのだ。
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