地球を“蝕む”コンピュータ――グリーンITの必要性とは「環境にやさしく」できますか?(1/2 ページ)

企業に環境保護への取り組みが求められる現在、ITにとっても環境問題は他人事とは言えないものとなっている。本企画では「グリーンIT」をキーワードに、国内外の現状を俯瞰(ふかん)する。

» 2007年12月03日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「サーバ祭2007」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。


 地球的規模の温暖化への関心が高まるとともに、企業活動にも環境合理性に基づく意思決定が求められるようになった今、グリーンITというキーワードを耳にする機会が増えている。これは、エネルギー消費の削減や効率化を目指すものであると同時に、製品やサービスが排出するハードウェアの廃棄物や汚染物質、温室効果ガスなど、環境負荷を与えているモノを抑制する取り組みでもある。以下、国内外のグリーンITの現状を概観していく。

PC関連のCO2は航空機産業に匹敵する!

 インターネットの普及とサプライチェーンの効率化によって、少ない資源と環境負荷で高効率な生産活動が可能になった現代。ITの目覚しい進展は、ヒトやモノの移動の回避で温室効果ガスの排出削減に大きく貢献していると言われてきた。

 しかし、その一方で、大規模なデータセンターやネットワークインフラの建設ラッシュによる電力消費の増大、サーバやルータ、PCなどの情報通信機器の大量生産と、その後の大量廃棄における環境汚染物質の拡散などから、環境負荷が誘発されている事実も指摘されている。

 このように、ITの普及には光と影があり、ベンダーや利用者はこの双方を適正かつ客観的に評価した上で、導入の場面で適切な意思決定が必要とされている。グリーンITには、ITの効果的な利用を通じて環境保護を促進するとともに、製品やサービスのライフサイクル全般でIT利用による環境負荷の削減を目指す目的がある。2008年にはこれを重視する動きが本格化するという。また、各種のデータがそれを裏付ける結果となった。

 ガートナーによる、IT業界が環境に及ぼす影響を分析した調査によれば、サーバやPCの稼働によるCO2総排出量は、機器の冷却や通信ネットワークまで含めると、全世界の排出量の2%以上を占めるという。これは航空機産業の総排出量に匹敵するレベルとされる。

 また、データセンターからの二酸化炭素排出量は、世界のIT関連技術全体の排出量のおよそ4分の1に達しているらしい。今後、サーバやストレージの消費電力の測定、省電力に効果のある仮想化技術の導入、最適な容量計画立案と冷却効果の改善、IT機器資産の効率的配置と再利用などが行われるべきだという。特に、原子力発電所やダム建設が凍結され電力がひっ迫している米国では、データセンターにおける電力消費の増加が問題視され、そのグリーン化に向けた取り組みが本格化している。

 EPA(米国環境保護庁)による報告書によると、電力消費がこの5年間で倍増。現在の年間電力消費は610億キロワット時、45億ドルにも上り、発電所5基分の電力消費量に達しているという。2011年にはそれが1000億キロワット時になると試算されている。

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