オープンソースソフトウェアは、Webサービスを実装する人々の間でもかなり普及している。「企業におけるオープンソースソフトウェアの役割の拡大」(Open Source Software's Expanding Role in the Enterprise)という米Forrester Researchのリポートでは、調査に参加したITマネジャーの57%がサービス指向アーキテクチャ(SOA:Service Oriented Architecture)への移行を進める上でオープンソースは“重要”または“とても重要”だと答えている。また、オープンソースソフトウェアを使う理由の上位を占めたのは、オープン規格に対応している、使用上の制限がない、ベンダーロックインを回避できるといった項目だった。
オープンソースのWebサービス用ソフトウェアの中で、Apache Axis2は非常によく知られた柔軟性の高いWebサービスエンジンの1つだ。SOAPメッセージの複雑な処理に対処できるプログラミングインタフェースを備え、JavaおよびC++実装の双方で利用できる。
Axis2の素晴らしさの1つは、Webサービス開発者がモジュール内に新しい機能を追加できる点にある。Axis2は、アドオンモジュールとしてWS-Addressingを実装している。また、デフォルトでSOAPメッセージを監視するモジュールが含まれている。開発者は独自のモジュールを開発できるほか、Sandesha、Rampart、Kandulaなど、公開されているAxis2モジュールを利用することもできる。SandeshaはWS-ReliableMessagingをサポートし、RampartではWS-Securityの追加が行え、KandulaはWS-Coordination、WS-AtomicTransaction、WS-BusinessActivityを実装している。
Axis2以外にも、オープンソースのWebサービス用ソフトウェアはたくさんある。Apache MuseはWS-Notification、WS-ResourceFramework、WS-DistributedManagementを実装している。WS-BPEL向けエンジンとしてはApache ODEがある。また、Muleは使いやすくて強力なエンタープライズサービスバスだ。これらのプロジェクトは、Webサービステクノロジーを中心にして構築されたオープンソースの健全なエコシステムの例である。
Webサービスを手っ取り早く開始する方法の1つは、実際に使ってみることだ。ここで紹介したオープンソースソフトウェアを使えば、大きな事前投資なしにWebサービステクノロジーを試すことができる。開発者は、サンプルのWebサービスをスクラッチから構築してもよいし、リモート対応の既存ソフトウェアをWebサービスでラッピングして用意することも可能だ。こうしたアプローチは、大きなリスクを生むことなく、Webサービスの価値を短期間で実証してくれる。
結果的に、Webサービスは多くのメリットを組織にもたらす可能性がある。Webサービスを利用すれば、レガシーアプリケーションのロジックをネットワーク上に公開でき、Webサービスがなければ分断されていたアプリケーション間でのデータ共有が可能になる。また、組織全体で共通して必要な機能やデータを共有することで、リソースも再利用できる。それぞれの組織がこうしたメリットを享受するには、どうすれば持てるインフラストラクチャの範囲内でWebサービスを最適な形で利用できるかを明確にする必要があるだろう。
Shawn Hermansはグローバルな技術コンサルティング会社、米Booz Allen HamiltonでITのエキスパートとして活躍。Webサービス、サービス指向アーキテクチャ、ネットワーク移行、情報セキュリティ、データ戦略に関する専門知識を提供。
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