自社開発のWeb2.0技術を社内で活用するIBM

ビッグブルーのスタッフは、多数の従来型Web技術や実験的なWeb技術をファイアウォールの内側で利用しているようだ。

» 2007年12月20日 23時04分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Webアプリケーションを次々と気の向くままに投入するGoogleは、IT分野で最先端を行く企業だと言われることが多い。

 しかしIBMでは、人々から見えないところで、ブログ、Wiki、マッシュアップ、仮想現実技術といったWeb2.0技術の導入を進めている。自社の従業員の生産性を高めるのが目的だという。ファイアウォールの内側では、ビッグブルーはかなり最先端を行っている企業のようだ。

 IBMのマーク・ヘネシーCIO(最高情報責任者)が率いる同社のITスタッフは12月18日、マディソン街にある同社のメインオフィスに招かれた少数の報道関係者とアナリストを前に、これらの技術の一部を披露した。

 そういった技術の1つがIBMの仮想現実ソフトウェア「Metaverse」である。まだ荒削りの状態ではあるが(その意味ではSecond Lifeとはだいぶ違う)、IBMでコラボレーション開発を担当するイノベーションマネジャーのマイク・アッカーバウアー氏によると、約2200人のIBMスタッフがMetaverseを使って同僚と共同作業する方法を検証しているという。

 「IBMのスタッフは、Webサービスを通じて社内の仮想カンファレンスアプリケーションを利用することによって3Dのオンライン会議を開いている。このアプローチは、全世界に分散している当社の従業員にとっては恩恵となるものだ」とアッカーバウアー氏は話す。

 同氏が見せてくれた「会議室」にはオフィス家具らしきものはあまりなかったが、使用可能な状態のようで、普通の会議室を模して壁にはスクリーンが掛かっていた。

 アッカーバウアー氏によると、同氏のチームは来年、IBMの従業員が作成したマッシュアップを組み込む方法を研究する予定だ。これらは仮想会議室のスクリーンに組み込まれる可能性が高いという。

 イベント後のデモでアッカーバウアー氏は、「平面的な2次元のプレゼンテーションを超えるものを開発するつもりだ。現時点でのビジネス価値は、Metaverse内でプレゼンテーションを行い、そこでわたしのチーム全員に会えるという点にある」と米eWEEKに語った。

 2008年に検討されるシナリオの1つに、従業員と上司の1対1のミーティングがある。これはトレーニングを目的としたもので、業績を評価するための機能ではない。アッカーバウアー氏によると、IBMのMetaverseはSecond Lifeとは異なり、アバターのボディーランゲージを表現するようにプログラムされていないため、後者のような目的のミーティングには向いていないという。

 さらに同氏のチームでは、VoIP(Voice over IP)機能をMetaverseに追加することも検討する予定だ。これについては、IBMのLotus Sametimeとの連携を通じて実現する可能性があるという。

 これらの計画では、IBMのマッシュアップメーカー「QEDWiki」を用いて異種アプリケーションを融合することにより、より大きなビジネス価値が生まれるとしている。IBMはファイアウォールの内側で、同社の「SAE」(Situation Applications Environment)を基盤として多数の創造的なマッシュアップを運用しており、各部署およびワークグループがそれらを利用しているという。

 IBMのディスティングイッシュドエンジニアでアプリケーションアーキテクトのルーバ・チェルバコフ氏によると、これらのマッシュアップの1つが「Team Analytics」アプリケーションだという。

 このマッシュアップに含まれるサービスとしては、IBMの社員名簿「Blue Pages」から従業員のプロフィールを取得する機能、従業員がいる場所の時間帯と地図を示したグラフ、従業員同士の関係(同僚、上司など)を示したグラフなどがある。

 チェルバコフ氏によると、これはIBM社員が1年間で作成した150以上のマッシュアップの1つに過ぎないという。同氏は、IBMの「Blog Central」、「Wiki Central」、「IBM Jams」(オンラインのスレッド会議/レーティングシステム)、「ThinkPlace」(オンラインのアイデア共有マーケットプレイス)なども統括している。ThinkPlaceは14万5000人以上のスタッフが利用しているという。

 Metaverseやこれらのマッシュアップは1つの疑問を呼び起こす――「IBMは大学から入った若いプログラマーの機嫌を取るために、これらのアプリケーションを開発しているのではないか、つまり優秀な人材がGoogleやFacebookなどの“カッコいい”企業に集中するのを防ぐのが狙いではないのか」ということだ。

 チェルバコフ氏はこの見方を肯定しはしなかったが、こういった最近流行の新技術は「自己責任で自分の仕事環境を自動化するのに慣れている」従業員に向いていると語った。

 IBMの従業員がこういったアプリケーションから高度な価値を引き出しているのは明らかだが、多数のリモートオフィスを抱えているハイテク企業はIBMだけではない。

 こいった技術の一部を外販しようとしないのはなぜかという疑問に対して、IBMのヘネシーCIOは、IBMではその可能性を排除していないとしながらも、製品化の可能性が高いのはどの技術なのかは明らかにしなかかった。いずれにせよ、「Lotus Connections」の仲間が増える可能性はあるようだ。

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