それは「ギリギリ」じゃなくて、著作権侵害しているでしょう。楽しければ違法でもいいかというと、ヤフーの場合はそうではない。楽しくないかもしれないけれど、合法的にやりましょう、という。
―― きれいなCGMは、ネット上に何か新しいものをもたらすのか。
あなたの言うような盛り上がり方が本当に必要かどうかは分からないが、合法的なCGMも、それなりにちゃんと使われていくようになると思う。
最近よく言われる集合知という考え方がある。一人一人の知識はある意味限定的だが、それが大勢になると大きな知識につながっていく。そこから新しい知恵が生まれる。そういうものは、将来的にはできていくと思う。
それが事業にとってどんなプラスになるかは後から考える話しだが、人が集まれば広告が売れるかもしれないということがあるかもしれないし、「Yahoo!知恵袋」のように、人に知識を分け与えることで収入を得る人が将来出てくるかもしれない。将来的にどうなるかはまだ分からないが。
ヤフーはリーディングカンパニーの1つとして、ネットそのものが健全に成長していくようにしたい。ネットはヤフーのビジネスドメインだから、間違ってもインターネットそのものが壊滅的に悪くなるということがないようにしていかないといけないと思う。
―― 「健全」とは何か。
いろんな面があるが、悪用されないように、とか。
―― 「壊滅的に悪くなる」としたらどういう状態か。
まぁ、どうでしょうねぇ……。まぁいろんなことがあると思う。
―― mixiやニコニコ動画などCGMをいかしたサービスは確かに急成長しているが、ヤフーの広告ビジネスも堅調だ。広告主は「急成長はなくても健全な場」を望んでいる、ということか。
ブランディング目的の広告主は、あんまり荒れている場には広告を出したくない。ヤフーがきれいな場を作ろうとしているのは、健全・安全の部分もあるし、メディアとしての品位がちゃんとしていないと、広告主からも嫌われてしまうという部分もある。
―― CGM的なものは自社展開せず、他社に任せるという選択肢もあったと思うが。
そうはいかない。集合知の可能性みたいなものは、将来的には絶対あると思う。それを「荒れさせないと作れない」ということはないと思う。
きれいにしちゃうと、賑わいはないんだと思うし「何となくつまんないね」と思われるかもしれないが、多分最後は、そっちの方がいいと思う。わーわー賑わっていても、そういうのは結局一過性になりがちだし、事業的にはうまくいかない。
―― SNS「Yahoo!Days」を軸にソーシャルメディア化を図っていくという構想だったが、Yahoo!Daysの利用は伸びていないように見える。
まず、Daysは2つに分けて考えてもらったほうがいい。人と人とをつなぐネットワークの部分と、その上に乗っかっている日記帳サービスみたいな部分。日記帳サービスは1つのアプリで、核になるものではない。核にする部分は、人と人とのつながり。
その部分は、ヤフーの全サービスがソーシャルメディア化していく中で、共通で使われるプラットフォームになる。グルメや自動車、地図、音楽などどのサービスを使っても共通に、友人のリストを使っていける。
だが、全サービスでそれが使えるようになるまでまだもう少し準備が必要で、今後1年、2年かかるだろう。
―― Daysが出たのはmixiの2年後。ヤフーはサービスのリリース速度が遅いのではないか。
もっと早いほうがいいとは思うが、ヤフーがやるからには、セキュリティー面で問題ないかなど、ある程度の要件を満たしている必要がある。早く出すのも重要だが、そこで問題が起こるといけない。多少時間がかかっても問題が起こらないような仕組みやシステムを作っていかないと。
ベンチャーと比べるとスピード面では不利だが、文句を言っていても仕方ないので、一生懸命やっていく。
―― Yahoo!とは別ブランドで、ラボのような、試験サービスを出せる場を作ってみてはどうか。
作ってもいいが、だからといってそこで作ったサービスのセキュリティーを甘くする勇気はない。
―― ネットの10年後、20年後を見据えたとき、ヤフーはどうありたいのか。
より多くの人がより便利に使っているといいと思う。ネット全体で言っても、もっと利用者が増えたほうがいいと思うし、ヤフーそのものとしてもうちょっと増えてもいいと思う。
―― それによって、社会的にどういった「いいこと」があるか。
社会にいいことがあるかは分からないけれど、生活が便利になったり豊かになったりすれば、それはそれでいいんじゃないかと思う。
―― ヤフーの収益源の中心になっているネット広告市場は、今後どうなる。ネット広告低迷で業績不振の企業もあるが。
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