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「mixiを追いかけても意味がない」――ヤフーSNS、会員向けに開放

» 2006年07月31日 16時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ヤフーが運営するSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が7月31日、「Yahoo!360°」から「Yahoo!Days」と名称を変えた。新たにYahoo!BB会員(508万人)とYahoo!プレミアム会員(635万人)が自由に登録できるようになり、既存ユーザーからの招待が必要だった従来よりもユーザーのすそ野が広がった。

 ただ、国内の総合型SNSは、登録者数500万人を突破したmixiの独占状態。後発のヤフーは、ナンバーワンポータルとしての総合力と、SNSで築く人間関係のつながりを組み合わせ、mixiとは異なるサービスの姿を模索する。

画像 名称はユーザーからの募集で決めた。約5万人から応募があったといい、「日々のリアルな情報を送受信する拠点にしたい」という思いから、「Days」を選んだという

 Yahoo!Daysは、日記やコミュニティーなどmixiと同等の機能のほか、友人関係をタグで整理し、タグごとに日記やプロフィールの公開範囲を決められる機能などを備えたSNS。mixiやGREEに遅れること約2年、今年2月に招待制でサービスを開始した(関連記事参照)

 ヤフーのみならず、ライブドア、楽天、エキサイトなどがこぞってSNSに参入している。ポータルが成熟し、成長戦略が見えづらくなる中、mixiの急激な成長が各社を刺激。SNSも構成要素として含まれるとされる「Web2.0」というキーワードの流行も、各社の焦りに拍車をかけているようだ(関連記事参照)。

 ポータルでは圧倒的な強さを持つヤフーだが、「SNSのようなCGM(Consumer Generated Media)の伸び率はすさまじく、決して無視できない」と同社ソーシャルネット事業部企画部の寺岡宏彰さんは語る。ただ「mixiやGREEは、SNSとしてすでに完成されている。今からを彼らを追いかける意味はない」とし、Daysはこの2サービスとは異なる方向を目指すという。

既存サービス間をつなぐインフラに

 同社は4月に「ソーシャルネット事業部」を新設し、各サービスにユーザー参加型の仕組みを取り入れる「ソーシャルメディア化」を急いでいる。事業部のミッションは「人と人とのつながりを最大化する」「個人が情報発信しやすくする環境を整える」――の2つ。Daysはこの中で、サービス同士をつなぐインフラとしての役割を担う。

 「livedoorフレパ」や「エキサイトネームカード」と同様、同社の各サービスと連携し、ユーザーの“顔”を見せるためのプロフィールとして活用していくほか、友人が更新した情報を一元的に見られる、“友人ポータル”としての役割も果たしていく。また、既存サービスに対して共通の“ソーシャルインフラ”となり、人間関係を活用した公開範囲の設定機能やレビュー機能などを提供していく。

 既存のどのサービスとどう連携するかは非公開だが、「複数のプロジェクトが走っている」という。システムを組み合わせれば、Yahoo!ブログやYahoo!フォトと連携させ、ブログや画像の公開範囲を制限したり、Yahoo!オークションと連動させ、友人限定のオークションを開いたり、Yahoo!ブックスのレビューをDaysからも読めるようにしたり――といったことが可能になりそうだ。

 連携強化に向け、サービスAPIの社内向け公開も進んでいるという。社外サービスとの連携も検討中。最終的には、ログインなしでアクセスできるオープンなSNSに変える考え。若年層の取り込みを狙い、携帯電話向けサービスも強化していく。

「ヘッド」でやること、まだある

 「ポータルとしてのYahoo!という色は崩れないだろう」――同社は、プロによる編集コンテンツで構成した、いわゆる「Web1.0型」ポータルを保持しながら、Web2.0的なソーシャルメディア化を進め、「車の両輪として両立させたい」という。

 膨大なトラフィックと大企業のブランディング広告を集めるポータルなどを「ヘッド」と呼び、ターゲットを限定した多様なコンテンツと、コンテンツに合った広告を集めるCGMなどのサイトを「ロングテール」と呼ぶことがある。Web2.0の議論ではロングテールに焦点が当たるが、「ヘッドでもまだやることがある」と寺岡さんは言う。

 「人が編集したコンテンツを見せる、という従来のポータルモデルは効率がよく、ヤフーは広告ビジネスでもページビューでもこれで成功してきた。このモデルは未来永劫なくならないだろう」

まずはユーザー間で安全・活発にコミュニケーションしてもらえる仕組みを作りたいと寺岡さん

 Web1.0かWeb2.0か、編集コンテンツかCGMか、ヘッドかロングテール――そういった2元論の“間”にも、さまざな可能性があるという。例えばオールアバウトは、特定分野に強いユーザーを編集者としてピックアップし、自由にコンテンツを作ってもらう、という仕組み。「ヘッドでもロングテールでもない『ミドル』だ」

 ヤフーはこの10年でヘッドを大きく育ててきた。この資産を生かしながら、ロングテールを混ぜ込み、ヘッドでとらえきれない1人1人の細かいニーズに応えるのがソーシャルネット事業部が目指す形だ。それは結果的に、ヘッドコンテンツへのアクセスアップにもつながる、という。

 「10年先を見すえた事業。まだお金にすることは考えていない」――同社はDaysを軸に、巨大ポータルとしての次の形を模索する。

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