変化し続ける動画配信の形日本のインターネット企業 変革の旗手たち

インターネットで動画配信の先駆けとなったリアルプレーヤー(RealPlayer)。すでに10年以上の歴史を持つ同プロダクトは、動画市場の活性化を目的とし、最新バージョンで幾つもの機能をサポートした。同社は今どこへ向かおうとしているのか?

» 2008年01月04日 00時00分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 昨今、インターネットを介して音声や動画などを再生するメディアプレーヤーは、従来のような製品プロダクトから、動画サービスの“プラットフォーム”の提供へと形態が変化している。ほかでもなく、音声や動画プレーヤー「RealPlayer」(以下、リアルプレーヤー)を世に知らしめたリアルネットワークスもまた、プラットフォームの提供へと取り組んでいる。そのような背景で最新版が狙ったのは、動画市場の活性化という新たなアプローチだ。

リアルネットワークス、ジャパン・コンシューマー代表の伊藤隆博氏 動画配信市場の活性化を目指し、RealPlayer11を発表しました

 同社、ジャパン・コンシューマー代表(取締役事業本部長)の伊藤隆博氏は、NHNJapanで「ハンゲーム」事業本部長を始め、コミュニティーサイト「クルル」や「アソブログ」、そしてUSENではインターネット事業部長の経験を持つ。同氏は、リアルネットワークスにおいて国内戦略のキーマンとなっている人物であり、今後の動向を知る上で欠かせない。インタビューでは、同社の戦略はもちろんのこと、インターネット動画配信の動向そのものについても聞いた。

ITmedia インターネットへのアクセスインフラの変化によって、メディアプレーヤーの在り方も大きく変わってきました。リアルプレーヤーブランドを確立したリアルネットワークスは、今どこへ向かおうとしているのでしょうか。

伊藤 リアルネットワークスは、ユーザーとメディアの間に立つようなプラットフォーム提供の取り組みを強化していこうと考えています。そして、インターネット上のエンターテイメント(音楽、動画)市場が本格化するのは、これからだと感じています。

 リアルプレーヤー10のリリースから2007年で約3年間。日本市場では比較的大きな展開がありませんでした。その間、弊社のグローバルな取り組みを見ると、モバイル向けの配信プラットフォーム事業(ASP)の確立や、米国では、MTVネットワークスとの音楽配信会社の設立、アジアでは、中国へのオンラインゲーム進出など、幾つもの変化を遂げています。

 そして、今後を担う大きなものとして「新リアルプレーヤー(Ver.11)を2007年11月15日に発表しました。リアルプレーヤーをインストールしておくだけで、動画共有サイトを訪れた場合、ワンクリックで動画をダウンロードできるようになることが最大の特徴ですが、その動画情報(+動画のURL)を友人に送る機能により、より多くのユーザーが元の動画サイトを再来訪することで動画市場の活性化を狙います。(DRM/著作権保護のチェック機能により、DRMが有効になっている動画のダウンロードはできません。)

 また、日本独自のものとして、新リアルプレーヤーと連動するブログ&SNSサイト「クリップログ(CliPlog)」を2007年12月にリリースしました。最大の特徴は、リアルプレーヤーでダウンロードされた動画を再生した後に、「ブログに書く」という機能が表示され、動画を見た感想(+動画のURL)をそのままブログサイト(クリップログ)に投稿できることです。つまり、これもユーザーとメディア側とつなぐプラットフォーム提供となります。

 まずは更なる市場の活性化が第一であり、リアルプレーヤーはその先にある動画プラットフォームのスタンダードを目指しているわけです。

ITmedia 最近では、配信サービスとハードウェアが密接な関係になっています。この傾向は、どのように見ていますか。

リアルネットワークス、ジャパン・コンシューマー代表の伊藤隆博氏 携帯電話による音楽を聴く需要は、PC以上の広がりを見せています

伊藤 リアルプレーヤーは、登場以来マルチプラットフォーム対応(Windows、MacOS、携帯電話)であることを掲げてきました。

 その延長線上として、携帯電話向けの新サービスを検討しています。現在、ケータイ着メロや音楽コンテンツ配信がその市場の核となっていますが、今後は、新リアルプレーヤーで開拓する動画市場の活性化も注目すべき存在になるでしょう。

 音楽を聴く、動画を見るというスタイルはインターネット回線のブロードバンド化により拡大し続けています。そして、最近の動向として顕著なのは、音楽については特に、PC上よりもモバイルで楽しむユーザー数がかなり上回っているということです。

 米リアルネットワークスは先ごろ、韓SK Telecom、米Verizon Wireless、インドのBharti Airtelなどを含む25カ国以上、50以上の無線キャリアに対し呼出音サービス、オンデマンド音楽配信やモバイル向けエンターテインメントサービスを行ってきた「ワイダーザン(WiderThan)」を買収しました。これは、リアルネットワークスが携帯向けのプラットフォーム配信ビジネスを強化することを目的としたもので、モバイル上の音楽、動画サービスを意識した現れです。

 そして新リアルプレーヤーでは、ダウンロードされた動画をDVDビデオとしてライティングしたり、動画再生が可能なiPodへ転送することも可能となります。

 インターネットを介したエンターテインメントの楽しみ方は、今後さらに多様化していくことでしょう。

ITmedia リアルネットワークスが求める人材像とは? そして、IT業界で働くことを志す若者に対してメッセージを聞かせてください。

伊藤 IT業界の企業は、比較的大企業であってもまだ10年程度の歴史しかありません。ほかの産業の大企業に比べれば、多くのIT企業ではさまざまなビジネス戦略、仕事の環境が発展途上だと言えるでしょう。それは、特定のサービスで名を知らしめたIT企業であっても同じであり、そのカテゴリーを超えたサービス展開については思い悩んでいることでしょう。

 このため、成功したIT企業に属していても、常にベンチャーの精神を忘れてはならないと思います。管理職だからといって、マネージメントだけをしていればよいといったものではありません。世界のIT市場の動きに常に敏感な感性を持ち続ける必要があります。それがIT業界で活躍し続けるための秘けつだと思います。そうすれば、おのずとからモチベーションやスキルアップへに結びつくはずです。

ITmedia 仕事が休みとなったオフはどのように過ごされていますか。

伊藤 愛犬としてイザベラ色のチワワを飼っています。やっとの思いでイザベラ色を探したのです。

 自宅では一部屋を犬専用のスペースになってしまったのですが、、この前はカーペットをひっかいてほぐしてしまいまして、丸ごと交換したなどという出来事がありました。そんなチワワの動画を投稿したり、他のチワワの動画を見たりしていることが癒しの一つとなっていますね。

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