SaaSの潮流と普及のための条件【前編】ERPで変える情報化弱体企業の未来(2/3 ページ)

» 2008年02月06日 07時00分 公開
[赤城知子(IDC Japan),ITmedia]

SoD市場状況

 2007年以降、国内SoD市場は大企業や官公庁における大型案件などで急速に拡大しつつある。また、SoDは発展を続けており、オフィス環境以外でもネットワークに接続可能であれば、携帯電話、モバイルPCなどからサービスを利用することが可能となっている。さまざまなユーザー環境でオフィスと同じアプリケーションが利用できることは、顧客業務の効率化をもたらし、SoD利用に対する動機となるであろう。また、KDDIやソフトバンクBBといった通信事業者がSoD事業の推進を図っているが、企業内のエンドユーザーを獲得する上で、オフィス/モバイル環境にシームレスに対応するSoDサービスが有望であると見たからである。携帯電話などのモバイル環境の需要増加だけではなく、セキュリティなどの付加価値サービスの拡大にも期待をよせている。さらには、自らがSoDを提供するのではなく、ネットワーク/セキュリティ/課金サービスなど、SoDインフラストラクチャをSoDベンダー/パートナーへ提供することによって、新たな市場の開拓を図っている。

 SoDでは、Web2.0的なロングテールを目指すことが市場の拡大に求められる。ロングテールの大きな要素である中小企業は、情報システムに関わる専従部門や十分な要員を持つことが難しく、企業のIT化が進んでいない。SoDでは、IT化に関わる初期導入費用、運用/維持の負担を著しく軽減させることから、中小企業に合致したサービスであるといえる。また、大企業のエンドユーザーといった個の視点において、多様な機能/ユーザビリティ、アプリケーションとコンテンツの連携をもたらすSoDは注目に値するであろう。

 一方、ロングテール市場では顧客数は膨大になるものの、小さな顧客単位、多様な要望、厳しい単価要求といった課題がある。従って、ロングテールの開拓を目指すSoDでは、営業/マーケティングの工夫が必要である。中でも、パートナー戦略、Webコミュニティーの設立が大切である。また、多様な要望、単価の引き下げについては、インフラストラクチャの効率化を徹底するとともに、ユーザー参加型のサービス開発が重要になるであろう。

 古くからASPサービスとして提供されてきた業種/業務特化型サービスは、派手さはないものの国内市場に着実に浸透している。IDCの定義では、給与計算やEラーニングなどはビジネスプロセスアウトソーシング(BPO:Business Process Outsourcing)として扱っているが、顧客は業務視点によってBPO、SoDなど自社に適したサービスを選択し、利用していくであろう。また、BPOベンダーがサービスを提供する上で、SoDを利用するといったビジネス形態も見られるようになるとIDCでは考えている。

 顧客視点でのサービスの価値、技術の発展を考慮すると、オープンソースソフトウェアを活用したサービス、オフラインソフトウェアとの連携、ネットワーク/セキュリティの強化などに、SoDベンダーは取り組む必要がある。

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