第14回 Get Thing Doneまつもとゆきひろのハッカーズライフ(1/2 ページ)

ハッカーであれば、自分の情報管理を最適化するための工夫を怠ってはなりません。能力に不足があるのならツールで補うべきでしょう。かくいうわたしも、幾つかのツールを使って役に立たない記憶力を補っています。

» 2008年04月28日 00時00分 公開
[Yukihiro “Matz” Matsumoto,ITmedia]

老化現象

 時間とともに衰えていくのは世の常ですが、万年青年を目指すわたしも最近老化を感じるときがあります。最も端的なのは忘れっぽくなったことです。日常会話でも「アレ」とか「ソレ」とかを連発して、家族に笑われます。どうでもいいようなトリビアはいつまでも覚えているのに、日常生活にかかわる肝心なことを忘れてしまうのです。わたしの記憶はいったいどうなっているんでしょう。

 つい最近のことですが、海外出張の際、自宅を出てからパスポートを忘れているのに気がつき、慌てて取りに戻りました。さらに翌日、出張先のレストランでパスポートの入ったカバンを忘れるという失態を演じてしまいました。幸いすぐに気がついて、次の日には無事に回収できましたが、あまりの失敗にこれ以上ないほど落ち込みました。しかし、こんなうっかり者でも致命的な事態を回避できたのは、不幸中の幸いというか、悪運が強いというか。

 ハッカーたるもの、能力の不足はツールで補うべきでしょう。かくいうわたしも、幾つかのツールを使って役に立たない記憶力を補っています。

スケジュール

 まずはスケジュール管理。世のビジネスマンと比べるとアポイントメントの少なそうなわたしですが、それでもスケジュール管理は必要です。月に1度程度はどこかのイベントでプレゼンテーションを行っていますし、年に数回は海外出張もあります。また、仕事以外にも細々とした予定が入るものです。

 それらのスケジュール管理にはPDAを使っています。機種はもう骨董品レベルのVisor Edgeです。モノクロ低解像度で、最新機種に比べるとオモチャのようなものですが、意外と役に立って*くれています。

 一時は普段から持ち歩いているノートPCでスケジュール管理しようと思ったこともあったのですが、ノートPCではサスペンド状態から復帰するのにそれなりの時間(10秒程度)がかかります。通常の利用であればそれほど気にならない時間ですが、ちょっとスケジュールを確認するだけのときには耐えがたいほど長く感じます。フル充電のバッテリーでも3時間弱しか持たないので、残量をいつも気にしなければならない点も問題です。

 それに比べたら、PDAは起動が速いのでいざというときにすぐ見られますし、充電しなくても何日も持つのでバッテリー残量をほとんど気にする必要がありません。また、PDAではスケジュール管理しかしないので、CPUパワーも気にならないのです。ちなみにわたしは、日本語入力にPOBox*を、スケジュール一覧にDate@Glance*というソフトウェアを使っています。

ToDo管理

 PDAには、スケジュール管理以外にToDo管理やメモなどの機能がありますが、わたしはそれらをほとんど利用していません。ToDoなどを知りたいと思うときにはPCを起動していることが多く、わざわざPDAの打ちにくい入力方法*を使う必然性がないのです。

 ToDo管理をするソフトウェアはたくさんありますが、わたしは主にメールリーダーの機能を使っています。仕事の依頼の多くはメール経由でやってきますから、必要なメールに特定のラベルをつけておくことで、ToDoリストの代わりになります。自作のメールリーダー(morq)には、1キーでメールに「action」というラベルをつけたり、外したりする機能を用意しています。わたしの場合、スケジュールなどと独立したToDoはあまり存在しないので、この程度で十分のようです。PDAによるToDo管理は、入力が面倒なためにあまり更新しなくなり、更新しないのでチェックもせず、結局活用しなくなりました。また、Webアプリケーションを含む、そのほかのツールも長続きしませんでした。もっと忙しい人ならば、違った結論になるのかもしれません。

 また、現在のToDo管理方法に完全に満足しているわけでもないので、これからもToDo管理ツールについては考えていきたいと思っています。

このページで出てきた専門用語

意外と役に立って

すっかり気に入っているので、将来壊れてしまったときに備えてもう1台譲り受けて保管している。

POBox

予測とあいまい検索に基づく高速テキスト入力システム。

Date@Glance

Palm OS用の予定表補完ソフトウェア。

PDAの打ちにくい入力方法

予測変換入力法であるPOBoxを使えばずいぶんマシになるが、それでも長文の入力は現実的ではない。


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