第14回 Get Thing Doneまつもとゆきひろのハッカーズライフ(2/2 ページ)

» 2008年04月28日 00時00分 公開
[Yukihiro “Matz” Matsumoto,ITmedia]
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メモ

 ちょっとした思いつきをその場限りで書きとどめるるためとか、考えをまとめるために書くメモは、その辺の紙切れに書きつけます。何でもPCに頼ってしまうのは悪い癖です。図やグラフを含めて考えを記述する方法としては、PCよりも古典的な手法である紙とペンの方が勝っています。

 しかし、紙が万能というわけではなく、幾つかの欠点もあります。1つは検索できない点です。紙に書かれたデータは後で検索できません。片づけ上手でないわたしは、書いたメモをすぐにどこかになくしてしまうので、後で参照する必要のあるデータは検索できる形式でPCに格納しておきます。

 もう1つの欠点は、書いた字を読めないことがある点です。わたしの字はお世辞にもほめられたものではありません。文章を書くのにPCを日常的に使うようになってからは、ペンで字を書く機会がすっかり減ってしまい、ますます汚い字になってしまいました。単に汚いだけなら恥ずかしいだけで済むのですが、後で自分でも読めないとなると笑えません。そのような欠点を考えると、文字だけで表現できるメモはやっぱりPCに入力するのが良さそうです。

 メモ入力に使っているツールは、Emacsでの「一人お手軽Wikiもどき」であるhowmです。実はhowmにはスケジュール管理機能とかToDo管理機能も付いているのですが、わたしはそれらをあまり活用していません。もっぱら「思いついたことを適当に書きとどめる」という使い方をしています。ふと浮かんだアイデアは、そのままだとすぐに忘れてしまうので、とりあえずhowmにメモとして放り込み(PCを起動していないときは紙に書いて後で入力)、必要に応じて後で検索しています。

 今回、自分のhowmメモの中身を振り返ってみると、「原稿のネタ」、「Ruby 2.0新仕様のアイデア(ボツになるもの多し)」、「日記*の下書き」、「議事録」などが多いようです。

 Webを眺めていて、日記のネタとして後でコメントしようと思った場合には、いしなおさんのMM/Memoを活用させてもらっています。Firefoxのbookmarkletで簡単に登録できるので重宝しています。興味を持ったページはとりあえずMM/Memoに登録しておき、後でその中から選んで日記に書いています。何でもWebブラウザで行う最近の風潮は(例えAjaxを駆使していても)あまり賛成できませんが、いま見ているものに対する処理をWebブラウザ内で行うことについては非常に合理的だと思います。

協調作業

 わたし自身の情報管理は前記の方法でほぼ満足しているのですが、これだけではカバーできないこともあります。それは複数の人がかかわる協調作業についてです。

 わたしのかかわる協調作業で最も重要なのは、やはりRubyの開発でしょう。特に、バグフィックスや機能拡張などにおけるToDo管理は必須です。このために利用しているツールは2つあり、1つは「Rubyのバグ(勝手に)トラッカー」です。これは、メーリングリストに報告されたバグがどんどん登録され、ChangeLogに対応するメール番号を入れてコミットすると、自動的にfixedマークがつけられます。

 バグの管理はRubyのバグ(勝手に)トラッカーで良いとしても、リリーススケジュールの管理には不十分です。Rubyの開発者は30人近くいますから、彼らをまとめるには別のツールが必要となります。この目的にはbasecampを使っています。これはRuby on Railsの開発者David Heinemeier Hanssonが所属する37signalsが提供しているプロジェクト管理ツールです。というか、basecampの基本部分を抜き出したものがRailsなのです。1.8.4リリースのときからbasecampを使い始めましたが、非常に便利です。

いつでも最適化を

 情報管理は基本中の基本です。ハッカーであれば、自分の情報管理を最適化するための工夫を怠ってはなりません。日々精進です。ところでこの原稿を書いていて、やり忘れていたToDoを発見してしまいました。わたしにもまだまだ改善の余地はありそうです。

このページで出てきた専門用語

日記

「Matzにっき」


本記事は、オープンソースマガジン2006年5月号「まつもとゆきひろのハッカーズライフ」を再構成したものです。


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