それではテスト結果を見ていこう。まず、図2は各測定対象電源に20ミリ秒の瞬停を含む入力を加えた場合の5ボルト出力およびPWR_OK出力*を測定した結果である。このグラフから見られるとおり、eNSP3-450PやePCSA-500Pの出力はまったく変化していないのに対し、ノーブランド電源については負荷206.3ワットの場合で停電開始から12ミリ秒、負荷300ワットの場合では4ミリ秒を超えた辺りから出力電圧が低下し始め、同時にPWR_OK出力も0ボルト、つまり電源異常状態となっている。さらに、負荷206.3ワットの場合では電源供給再開後2ミリ秒程度で出力電圧は回復し始め、4ミリ秒後には電源異常状態も回復しているが、負荷300ワットの場合では電源供給再開後も出力電圧は回復しなかった。これは、電源供給再開後に出力電圧を回復させようと制御回路が大きな電流を急激に流そうとするも、電流を供給しきれなかったために停止状態になったものと考えれられる。
図3は各測定対象電源に20ミリ秒間、70ボルトの電圧ディップを含む入力を加えた場合の5ボルト出力およびPWR_OK出力を測定した結果である。先の瞬停の結果と同様、eNSP3-450PやePCSA-500Pの出力は変化しなかったのに対して、ノーブランド電源については負荷206.3ワットの場合ディップ開始14ミリ秒、負荷300ワットの場合では10ミリ秒を超えた辺りで出力電圧の低下が発生していた。
さらに、図4のようにノーブランド電源、負荷300ワットの場合では7ミリ秒という比較的短い期間の電圧降下でも出力電圧に影響が発生している。このことから、この電源を定格負荷で動作させた場合、非常に小さいノイズでも出力に影響が発生する可能性があるといえる。
これらのような瞬停や電圧ディップに対する挙動の違いは、搭載されているコンデンサの容量の違いがそのまま反映されていると思ってよいだろう。
前述のとおり、スイッチング電源では電源に入力された交流電流をコンデンサやダイオードを使用して直流電流に変換している。ここでは通常大容量の電解コンデンサが使用されるが、電解コンデンサは容量が大きくなるにつれてサイズ・コストともに大きくなるため、安価な電源によっては必要最小限の容量のコンデンサしか搭載していないものも存在するようだ。しかし、このコンデンサは電流を蓄えて安定化するバッファの働きをしているため、その容量が小さい場合バッファリングされていた電流を使い果たしてしまう可能性がある。そうなると出力側への電流供給が低下し、最終的に出力電圧の低下が発生するのである。
Power OK出力。ATX規格で規定されている出力端子で、電源の動作が正常な場合5ボルトを、異常な場合に0ボルトを出力する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.