「やる気」を組織論から考える努力をサバイバル方程式(1/2 ページ)

IT導入においても、担当部門および関連部門の「やる気」が必要だ。しかし、成功も失敗もすべてやるきの大小、有無でかたづけていては、マネジメント力はついてこない。

» 2008年05月21日 14時33分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

「非主流部門」が見せた意地

 企業人として、あるいは中間管理職として心がけなければならない重要なことの1つは、「不断の勉強をしなければならない」ということである。

 経験から来る誤解に満ちた考え方の例を紹介したい。

 中堅電機メーカーA社の例である。A社のB工場は多品種中量産の電機製品を生産していたが、情報システム部がベンダーと協力して構築した生産管理システムに失敗した。

 できあがったシステムはほとんど使われることはなく、従来の手書き管理表が現場を闊歩した。基本的に、顧客・営業からの短納期や頻繁な納期変更の要求に生産計画の変更がほとんど追いつくことができなかった。そのため、出力されるデータは使い物にならず、手書きの管理表に頼らざるを得なかった。その主な原因は、生産に使われる部材が当初の要求納期どおり、あるいは納入遅延した後の修正納期どおりに入庫しなかったこと、不良部材の再生手続きや部材の棚卸が的確に行われなかったことなどである。担当者が、毎日出力される管理表やオンライン画面を振り向きもせずに、手書き表を手にして現場を駆け歩いても、それを問題視する者は事業所内に皆無だった。

 一方、同じA社のC工場は小物部品の量産仕込み生産が主流であり、かねてからシステムも量産生産主導で構築されてきた。実はC工場の中に多品種少量生産のD部があったが、主流でないため、コンピュータシステムから長年置き去りにされていた。あるとき、D部に新進気鋭のE課長が配置された。E課長は量産製品が主流とは言え、D部の少量生産部門が情報システム部門から放置されていたことに矛盾を感じ、ではD部の独力で生産管理システムを導入してみせると、立ち上がった。

 設備投資の申請をする一方で、工程管理員や倉庫員など数人をラインから抜いて、社外研修会に派遣したり情報システム部門に依頼したりして、システム教育を短期間で徹底して受けさせた。設備投資が認可されるや、自分たちの力でシステムを構築した。道のりは厳しかった。周囲の目も、素人集団に何ができるかと冷ややかだった。しかし、ずっと草刈場扱いになっていたことに対して見返したい気持ちが強く、D部の力は結集され、見事システムは完成した。完成したシステムを何としても軌道に乗せたいというD部の思いには、迫力があった。

 専門家が関わりながらシステム導入に失敗したB工場の例と、人材が明らかに劣るのに成功させたC工場D部の例は、A社内で格好の話題となった。関係者の「やる気」が、成否を分けるという評価だった。ともすれば、一般的に「やる気」が経営の成否を決めると見られやすい。しかし、「やる気」だけで経営の成否は決まるのだろうか。

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