情報発信のノウハウが不足している地方公共団体が観光客を呼び込むのは難しい。福岡市と屋久島町は、ホームページを刷新するというシンプルな方法で、観光客の呼び戻しに成功した。
2010年に海外からの来訪者1000万人を目指すなど、国内外からの集客を増やし、地域の活性化につなげるべく「観光立国」を宣言している日本。四季折々を反映する豊かな自然と文化を持つ地方公共団体も多く、Webサイトやポータルサイトを通じて地域の情報を発信している。だが、観光客にその情報が伝わっているかというと疑問が残る。
過疎化や高齢化が進む地方では、ITの専門的な知識に長けた人材の確保が難しい。また、予算をIT分野に回せないといった現状もある。情報発信力という点において、地方は中央に大きく水を開けられている。
そういった中、ホームページの改善を柱に、観光客を呼び戻した事例がある。外部の企業やグループ、市民との連携を強化した福岡市と、誰もが簡単にWebページを更新できるCMS(コンテンツ管理システム)を採用した屋久島町だ。
福岡市は、市民や地元のグループ、企業などと密な連携を図ることで、観光客の呼び込みを進めている。5月に刷新した公式観光サイト「よかなび」が好調だ。
よかなびは、地元のニュースや観光スポットなどに加え、ぐるなびと提携してラーメン店や居酒屋といった飲食店の情報をそろえている。コンテンツの数は約2000となり、情報量はリニューアル前の4倍となった。
刷新から1週間で「アクセス数は一気に増えた」と福岡市経済振興局集客交流部、誘致宣伝課観光情報デザイン係の的野浩一氏は話す。コンテンツの拡充に伴い、サイト内を巡回するユーザーが急増した。2007年における公式サイトのトップページへのアクセス数は20万弱にとどまっていたが、今後は「数年以内に月間100万のページビュー獲得が目標」と強気だ。
「インターネットはおまけのようなものだった」――的野氏は、福岡市の公式サイトが開設した2001年を振り返る。当時、行政の情報発信の主流は、タッチパネル式の情報キオスク端末だったという。
そういった背景は福岡市のホームページの強化を遅れさせた。観光客を公式サイトに呼び込む方法が分からなかった。
「福岡市のサイトはこちら側が出したい情報を出しているだけで、ユーザーが読みたいと思う情報が無かった」――観光案内板やパンフレット、別の地方のサイトとの検討を重ねる中で、課題は浮かび上がってきた。
調査を進める中で、観光客の多くがインターネットを介して買い物や飲食店の情報を得ていることが分かってきた。これらの情報を集めるには「職員が飲食店を回り、掲載するコンテンツを探す」(的野氏)といった自転車操業のやり方では力不足だった。ホームページを通じた外部との連携に勝機を見いだした。
リニューアルに伴い、口コミ情報や地域の見どころを投稿したり、福岡の質問をしたりできる市民参加型のコーナーや、専門家が歴史やグルメなどの情報を案内するといったコンテンツを強化した。YouTubeを利用した動画情報も提供するなど、サイトのユーザーが必要とするコンテンツ集めに工夫を凝らしている。
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