息を吹き返す福岡と屋久島 ホームページ刷新が呼び水に観光客を呼び戻せ(2/2 ページ)

» 2008年05月23日 08時38分 公開
[藤村能光,ITmedia]
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 鹿児島県の屋久島は年間30万人を集める世界遺産だ。観光客のさらなる呼び込みを課題に上げていたが、情報の発信源であるホームページのアクセス数は伸び悩んでいた。

 2007年10月に隣接する島にあった上屋久町と屋久町が合併して、屋久島町ができた。それに伴い、それぞれの町が開設していたホームページを統合する必要が出てきた。

 屋久島はIT基盤の整備を進めており、専用線の敷設に数億円を投資するなどてこ入れを図ってきた。だがADSLの普及率は全世帯の3割に満たない。観光産業に当てられる予算も限られており、「ホームページはできるだけ安く作りたかった」(屋久島町の日高典孝副町長)。

屋久島のIT化が100万円で

image 屋久島町のホームページには地元に密着したニュースやフォトアルバムなどを掲載している

 そのような中、屋久島町は3月に刷新したホームページを公開した。CMSの「NetCommons」を利用し、防災無線情報の配信や休日当番医、フェリーの運航情報などをリアルタイムで配信している。英語版Webサイトや携帯電話版のWebサイトも開設するなど、多岐にわたる情報配信を進めている。

 リニューアルの効果はすぐに現れた。刷新前は数年間で約11万のアクセス数だったが、刷新後2カ月強で約12万のアクセス数を稼いだ。手軽にコンテンツを増やせるため、更新数が上がったことが奏功した。「更新頻度の高いサイトにユーザーは集まる」(国立情報学研究所社会共有知センターの新井紀子氏)からだ。Googleで「屋久島町」と調べると、検索結果の最初に表示されるといった二次効果も生まれた。


image 屋久島町の日高典孝副町長

 ホームページの構築に用いたNetCommonsは、国立情報学研究所のオープンソースソフトウェア(OSS)だ。「ワープロとデジカメがあれば誰でもWebページを更新できる」(新井氏)といった手軽さが採用の決め手となった。

 OSSのためライセンス料が必要ないことも成功要因の1つだった。NetCommonsの導入コストは約100万円で、年間の維持費も同額程度。ほかのCMSツールで掛かる「数千万円規模」(日高氏)のコスト支出を回避できた。

 「PCではワープロ機能くらいしか使わなかったわたしでもホームページが作れた」と日高氏は笑う。これまでは専門の担当者のみがページの更新をしていたが、「近いうちに220名の職員の7割がページを更新できるようにする」。


 ホームページは地方公共団体の情報発信の土台であり、集客の生命線でもある。だが、人材難の中、限られた予算で観光産業を展開している地方公共団体にとって、どうすれば観光客を呼び込めるかについて、正解を導き出すのは難しい。

 紹介した2つの地方公共団体は、ホームページの刷新という方法で観光客を呼び込み、息を吹き返した。ユーザーが必要とする情報を提供し、誰もがページを構築できるような環境を整える――といったシンプルな取り組みを積み重ねることが、観光客の呼び戻しに寄与するといえそうだ。

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