中堅中小企業の経営基盤改革術

中堅中小企業は何を基準にERPを選ぶのか2000年問題で歪んだ導入事情(2/2 ページ)

» 2008年06月02日 00時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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ERPリプレース 2005年〜

 このように現状の業務分析をしないまま大量のアドオン開発を実施したことによって、中堅中小企業には運用保守の面で大きな負担が掛かることになった。現場の十分な同意を得ていなかったこともあり、利用部門の満足度も低い状態であった。実際、ERPパッケージをリプレースする際の理由としては「保守料金などの運用経費」「バージョンアップ費用」「利用部門の不満」が上位3位を占めている。

 こうした状況を踏まえ、2005年ごろからERPパッケージのリプレース案件が発生している。リプレースを行う中堅中小企業の一部は前回の反省を踏まえ、自社の「業務分析」「担当者の確保」「自社の状況を踏まえたパッケージとベンダーの選定」といった内発的な取り組みを見せ始めている。今後は経営者によるトップダウンのアプローチを浸透させやすいという中堅中小のメリットを生かし、内発的な取り組みを進める中堅中小企業も少しずつ増えていくと予想される。

内部統制対応 2007年〜

 昨年ごろから見られるのが中堅中小企業における内部統制への取り組みである。中堅中小企業の約半数が「単体として存在していた財務会計システムを日本版SOX法に則した形にしていくためには既存システムのメンテナンスレベルでは難しく、システムの大幅な見直しが必要」という認識であるというデータもある。そうしたことを実現するための手段として、あらためて中堅中小企業におけるERP導入が脚光を浴びているというのが昨今の状況である。

 これら3つの潮流は現在も継続して起きており、そのタイミングは中堅中小企業規模に応じて少しずつ異なっている。ここで中堅中小企業規模を「中小クラス」(年商5〜50億円)、「中堅Lクラス」(年商50〜100億円)、「中堅Mクラス」(年商100〜300億円)、「中堅Hクラス」(年商300〜500億円)と分け、1〜3の発生時期をマップすると下図のようになる。

 このように中堅中小企業のERP導入においては「レガシーリプレース」「ERPリプレース」「内部統制」といった外的要因が企業規模に応じた時間差を伴って作用しており、中堅中小企業側はそれに反応する形で信頼のある販社・システムインテグレーターのアプローチを受け入れているというのが実像である。

 次回は第4回以降のケーススタディに備えて、ERPの構成要素や一般的な導入の流れについて整理をする。

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